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魔王軍侵攻・海

あたしはモーリスといっしょに葛西海浜公園に到着した。

時間になると巨大な門が海面に出現する。

不気味な音とがして門が開き始めた。

魚人や貝人のモンスターたちが武装して泳ぎながら出てくる。

予想通り魚類・甲殻類・貝類系のモンスターね。

あたしは魔剣を天に掲げた。

「魔竜のすみかッ!」

魔剣は紅に輝き世界は塗り変わり魔界が出現する。

モンスターたちは動揺した様子を見せた。

「おいおいおい魔界に戻っちまったぞ?」

「しかも砂漠じゃねーか」

「こんなところ1秒だっていたくねーぜ」

砂漠にしたのは魚介類系のモンスターが力を発揮できないようにするため。

地の利を得たあたしは全員出てくるまで岩陰に隠れて待つ。

こいつらが何か怪しいと思っても絶対引き返さないのは撤退したら即処刑されるから。

北の魔王軍は脱走兵を処刑して見せしめにする。

こいつは臆病者だ!って紙も貼る。遺族への補償もなし。

下がることを禁止するからわかりやすい罠にかかるのよ。

やがて門前に全軍が整列する。

ガヤガヤしているところにあたしは姿を現した。

広範囲魔法で瞬殺することもできるし、魔剣の力でモンスターを作り出してモンスターハウスみたいにして遊んでもいいけど民の信仰により大幅にレベルアップした力を試したい。あたしは砂漠を駆けて軍勢に乗り込んだ。

「だれか来るぜッ!」

「血祭りにあげちまえッ!」

威勢がいいわね。

でも血祭りになるのはあなたたちよ!

いっせいに突いてくる槍を跳躍してかわした。

剣を薙いでモンスターたちの首を跳ねる。

悲鳴が連続で上がった。

開戦の狼煙だ。

着地と同時に魔銃をぶっ放す。

全方位から向かってくる槍は止まってみえた。

ぜんぶ避けながらモンスターを斬り裂き撃ち抜き駆けめぐる。

動体視力もスピードも攻撃の威力も全ステータスがとんでもなく向上してる。

魔剣を振れば風圧で後ろのモンスターたちもスパスパ斬れるし魔銃を撃てば後ろのモンスターたちもまとめて貫通する。

弾丸は霊力を込めたものなので尽きることはないのでご安心を。

乱戦の最中、多少攻撃を受けるけど耐久力あがってるのかノーダメージだ。

運も上がってるから相手の攻撃がミスになる。

あたしはサクサクとモンスターを撫できりにしていく。

あたしに恐れをなして逃げた敵兵もいるけど、うしろから味方に矢で撃たれていた。

督戦隊とくせんたいだ。

敵前逃亡する仲間を撃つための部隊ね。

逃げた敵は放っておくつもりだったのに残酷な司令官のせいで全滅ね。

しばらく剣と銃で戦い続けてたけど飽きてきたから魔法を使う。

魔銃を納め手にひらを軍勢にかざす。

「ダークファイヤーッ!」

あたしを取り囲んでいたモンスターたちに黒い炎が襲いかかる。

砂漠に響く無数の断末魔の声をさらに増やすために天に手をかざす。

「ダークサンダーッ!」

暗雲が発生して黒い雷がモンスターたちの頭上に降り注ぐ。

悲鳴が合唱のように重なった。

まだまだ色味が足りない。

闇柱ダークピラーッ!」

砂漠から巨大な黒い柱が飛び出してくる。

飲み込まれたものは声を上げる間もなく消え失せ助かった者は手足や半身を失い泣き叫んだ。砂漠に阿鼻叫喚の渦が広がる。

屈強で残忍な北の魔王軍が無様な醜態をさらす姿はモーリスがしっかりカメラにおさえてる。彼らの犠牲になった無辜のむこのたみにもしっかり映像を届けよう。

感動大巨編であり抱腹絶倒のアクションコメディだろう。

攻撃魔法を連続して繰り返しているとやがて砂漠からすべての音が消えた。

焼き焦げた屍の中に1匹だけ立っているものがいる。

イカの顔をしてマントを羽織った魔人だ。

北の魔王軍様ね。

最後尾に隠れて穴を掘って隠れてたんでしょう。

体が砂まみれだ。

みっともない大将だこと。

あなたのせいで魔王軍は全滅よ。

さんざん乱暴な振る舞いをしてきた自業自得ね。

あたしはイカ魔王に近づく。

イカ魔王は顔をゆでダコのように真っ赤にした。

「東の魔王を倒したのは貴様じゃな」

「あたしのこと知ってるの?」

「正義の味方気取りの嫌な女だと評判だ」

「悪党がそういうってことは善良な市民からは英雄って呼ばれてそうね」

図星だったのかイカ魔王は頭から湯気を出す。

「許さぬ!手足をひきちぎって地下牢に閉じ込め回復魔法をかけながら24時間拷問を行い死を乞うほどの苦痛を与えてやろう!」

「その姿を撮影して性格が歪んだお友だちと笑って鑑賞するってわけね。悪党が考えつくことってワンパターンよね。他人の苦しむ姿を見てなにが楽しいのか1ミリも理解できない。あなた1秒でも早く死んだほうがいいわ。この世界のために。みんなそれを望んでる」

「なまいきな小娘が!ぜったいに許さぬ!」

イカ魔王はあたしにスミを吐きかけてくる。

不意打ちだ。モロに喰らってしまう。

「目隠し鬼じゃ!」

目にスミが入った。

視界が奪われてどこから攻撃が来るかわからない恐怖に襲われる。

あたしは腰の魔銃に手をかけた。

魔銃を引き抜き振り返らないまま首のうしろに回して撃つ。

「なぜわかった・・・」

くぐもった声がしてどさりと音がする。

ハンカチで目をぬぐって振り返るとイカ魔王は眉間を銃弾に撃ち抜かれて砂漠に倒れていた。

ひさしぶりに心眼を使ったわ。

イカ魔王のうす汚れた魂が背後に見えたので撃っただけ。

心眼なんて使わなさすぎて使えることを忘れていた。

生きるか死ぬかの瀬戸際で思い出せたのは幸運だ。

あたしって魂を鑑賞する余裕もないほど忙しない人生を送っていたのね。

すべてが終わればまた魂美術館に行ってみましょう。

水魔法を使えないので水浴びはもとの世界に戻ってからだ。

イカ魔王のトドメを刺すために背中から心臓を突く。

手ごたえあり。

剣を引き抜く。

魔王の体が消えるのを待っているとイカ魔王の体は急激に膨れあがり鎧を弾き飛ばして巨大化した。

おかしい。生命力が強すぎる。

ハッとする。イカの心臓は3つだ!

ぐさぐさ刺すべきだった。

怠慢だ。

弱かった頃は強敵には念入りにトドメを刺していた。

圧倒的な力を手にしたことで心に油断が生まれた。

巨大な触手が襲ってきたのであたしは退避する。

巨大化した魔王はクラーケンになった。

船を丸ごと海に引きずり込むほどの力を持つという怪物だ。

「海の藻屑にしてやろう!」

クラーケンは大量の水を吐き出して砂漠を海に変えようとしている。

地の利を失っては不利ね。

海ではクラーケンは無類の強さを発揮する。

砂漠が海になる前に倒す。

あたしはクラーケンに手をかざす。

「ダークドラゴンロアーッ!」

最上級の闇属性炎魔法だ。

闇竜の吐く炎と同等の威力を誇る。

「ぐももももーん!」

熱さに悶え苦しんでいる。

闇刃ダークブレイドッ!」

焼きイカになったところを黒い斬撃を飛ばして斬り裂く。

連発してみじん切りにしてやった。

クラーケンは巨大な魔石を残して姿を消す。

コウモリネコたちにごほうびとしてあげましょう。

一度つくった異世界は閉じても魔剣に記録されるから回収は後日だ。

最初にダークドラゴンファイヤー使ってたら魔王軍は瞬殺だったけど、民の信仰によりパワーアップした霊力を試せてよかった。

魔王は武神クラス。

現時点でそれを赤子扱いできるなら3人で天界制圧も楽勝だ。

なぜならこれから魔王軍侵攻を喰い止めた様子をテレビやSNSで流すことでさらにあたしたちへの信仰は高まるのだから。

もとの世界に戻ったあたしは海に入ってスミを落とした。

海水はベトつく。

朝陽に頼んで水魔法でシャワーを浴びましょう。

そのあと体と服をまるごと光魔法でかわしてもらえばいい。

あたしはモーリスとじゃれつきながら2人の到着を待った。

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