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魔王軍侵攻・空

たぬき和尚にお灸をすえた次の日、たぬき山には世界中から取材陣が殺到していた。

たぬき和尚が長年に渡り詐欺行為と直視できないような大悪事を働いていたことが世間に明るみとなり大騒ぎだ。

1日中ぽんぽこ教のニュースだ。

わたしたちは学生寮の夜霧ちゃんの部屋でテレビをながめていた。

「たぬき和尚は太ってて不健康でたくさんの愛人といちゃついてたのに信者たちはよく平気だったな」

びぐるくんは首をひねる。

「みんなたぬきに化かされていたのよ。催眠魔法を広範囲で24時間かけ続けていたのね」

「そんなことできるの?霊力がもたないよ?」

「和尚には道路で轢かれたたぬきの怨霊も大量に取り憑いてたわ。そいつらと仲良くなって魔力を提供してもらってたんでしょう。怨霊は歪んだ欲望や詐欺で騙されて苦しむ人間が大好物だから」

「むかし田舎の国道に4匹のたぬきがひかれてるの見たことあるんだよね。たぶん大型トラック。家族や友達を助けようとしたのかな。あれすっごいトラウマ」

「ご冥福を祈るぜ。南無」

「たぬきに罪はない。悪いのは人間。たぬきを責めないように宣伝しなきゃ」

夜霧ちゃんは肩をすくめる。

数日後、ぽんぽこ教はにゃんにゃん教に改名してエクソシスト協会の傘下に入った。

エクソシスト協会が被害にあった信者たちの精神的なケアや経済的な補償を約束したのでみんな安心している。

たぬき和尚日ついては「みんなでかわいがってる」と言う報告だった。

そのまんまの意味じゃなさそう。

信者から大きな恨みを買ってたからどんな目に遭わされてるのか想像すると怖い。

だけど地獄や来世で罰を受けるより現世で罰を受けて少しでも罪を軽くしておいたほうが楽なんじゃないかなぁ。因果応報の真理は揺るぎないって夜霧ちゃんが言ってた。みんなも善きことを成し悪しきことを避けて生きよう♩

たぬき和尚を見事退治したナイトメアの好感度は爆上がりだ。

夜霧ちゃんがエクソシスト協会の理事に「世間から注目を集めるようないい仕事はナイトメアに依頼しなさい」と言っていたらしい。

ぽんぽこ教への内定捜査は数年前から開始しており本当ならネロさんたちにたぬき和尚の駆逐を依頼する予定だったみたい。

手柄を横取りしちゃった。

ナイトメアへの信仰心はうなぎのぼりに高まり、いまやわたしたちは神扱いされてる。有名観光地に銅像も建設されて猫・犬・蝶を神にした神社もできた。

わたしは霊力がとんでもなくパワーアップしているのをひしひしと感じていた。

たぬき和尚退治から1ヶ月後、いつものように夜霧ちゃんの部屋にたむろしていると

窓をノックする音がした。開けるとコウモリネコが入ってくる。

魔界では魔王軍の伝達役として活躍していていまは夜霧ちゃんの使い魔だ。

コウモリネコは丸めた地図を夜霧ちゃんに渡して何か話してるけどネコ語はわからない。

「ありがとう。モーリス」

夜霧ちゃんはリュックから特大の魔石を取り出してプレゼントした。

頭もなでる。

「にゃん♩」

コウモリネコは魔石にかじりついた。

魔族には食べるとすごい栄養になるらしい。

振り向いた夜霧ちゃんは満面の笑みを広げて言った。

「明日、魔王軍が侵攻してくるわ」

「なんですと!?」

「まじか!?どこのバカ魔王だよ?」

「北の大地を支配する魔王ね」

わたしたちが手を組んだのは南の大地を支配する魔王で一緒に東の大地を支配する魔王を倒した。

「巨大なゲートを開いて大軍勢を率いて来るわ。明日は大仕事ね。作戦会議よ」

夜霧ちゃんは舌なめずりする。

戦争がはじまるのに楽しそうだ。

夜霧ちゃんはテーブルに地図を広げる。

ゲートの位置は赤ペンで丸されていた。

明日の早朝6時に陸・海・空から魔王軍は侵攻して来る。

それぞれ5万ぐらいの兵力だ。

「あたしは海ゲートで待ち伏せるわ。朝陽は空。びぐるは陸でお願い」

「ラジャー♩」

「おやすいごようで!」

「信仰心によって高まった霊力を試しましょう」

「楽しみで眠れねーぜ!」

「ワクテカ♩」

まだ早いけど明日に備えて部屋に戻って寝ることにする。

興奮して寝付けないから夜霧ちゃんに渡された睡眠導入剤に頼った。

すやすや眠りにつける。

5時半だ。目覚ましの音で目が覚める。

顔を洗って夜霧ちゃんの部屋に向かう。

びぐるくんはもう来てた。

「おはよーございマウス♩」

両手で頭にネズミの耳を作る。

「おはようなぎだぜ!」

びぐるくんはうなぎをつかむ真似をする。

「おはようさぎ・・・」

夜霧ちゃんは頭上に両手でうさぎ耳を作った。

朝が弱いから眠たそう。

テンションをあげる魔法のあいさつだ。

色ちがいのコウモリネコ3匹も到着してる。

この子たちは動画撮影係。

高性能カメラを持たせてる。

北の魔王には魔王軍の英姿を撮影すると伝えてるらしい。

ほんとはあたしたちの勇姿だね♩

朝食は抜く。パッとすませて早めにランチを食べる。

わたしたちは神人合体と霊体化してそれぞれのゲートに向かった。

空ゲート出現ポイントはスカイタワー上空だから迷うことはない。

6時になるのを待つ。

5分後。

まがまがしい巨大な門がスカイタワー上空に出現する。

来たか!

不気味な音を立てて門が開く。

武装した翼を生やしたモンスターたちが現れる。

みんなガーゴイルみたいな姿だ。

わたしは妖精剣を天に掲げて叫ぶ。

花夢フラワードリームッ!」

妖精剣が桜色に輝き花の世界になった。

門をくぐったモンスターたちはきょとんとしてる。

「人間界ってのはこんなにきれいなのか?」

「今日からぜんぶオレたちのもんだ」

「人間がいねぇ。昆虫ばっかだ」

続々とモンスターたちが出てくる。

統制がとれているらしく兵士たちは勝手な行動をしない。

全員が出てくるまで門前で待機している。

全員でそろったところでわたしは木陰から飛び出した。

「でけえチョウが飛んできたぞ!」

モンスターたちが身構える。

あたしは剣を差し向けた。

夢幻泡影むげんほうようッ!」

催眠魔法を全体にかける。

いまのわたしの霊力なら効果範囲を広げて5万の軍勢をカバーできる。

景色を崩壊した夜の都会にして仲間の姿が怯えてる人間に見えるようにした。

「おおっ!人間どもめ!こんなところにいやがったか!」

モンスターたちは喜色を浮かべて仲間に襲いかかる。

逃げ惑う女性や子供も容赦なく武器で斬り裂く。

月夜の晩に悲鳴と哄笑が交錯した。

完全な同士討ちだ。

霊力に差があり過ぎて催眠を跳ね返せないんだね。

人間狩りで大はしゃぎする魔王軍はたちまち全滅した。

と、思ったら1人生き残っている。

上等な鎧を着ているから将軍かな。

バトルロワイヤルに勝ち残って生き残ったんだ。

人間を皆殺しにして喜んでいる将軍に真実を見せてあげる。

わたしは指をパチンと鳴らして催眠を解いた。

花畑に仲間の死体が大量に転がっている。

「ばかな!これは夢だ!」

混乱と絶望を終わらせてあげる。

わたしは将軍に向かって飛んでいく。

わたしを発見した将軍の顔が怒気を帯びる。

「貴様がやったのか!部下の仇ッ!」

剣を振り上げるが遅すぎてあくびが出ちゃう。

桜花爛漫おうからんまんッ!」

一瞬のうちに1万回以上の斬撃を浴びせかける。

将軍は細切れになって花畑に墜落して行った。

桜の花が舞い散る幻覚が見えるのは妖精剣が命散りゆく者に見せる最後の慈悲だ。

妖精が魔王軍侵攻を食い止める勇敢な物語はこれでおしまい。

「めでたしめでたし♩」

妖精剣につぶやく。

わたしが創った妖精界は閉じて現実が戻ってくる。

門は閉ざされた。

いちおうゲートを破壊しておこう。

門に手をかざす。

「キャンプファイヤーッ!」

門は大きく燃え上がった。

これでよし!

一仕事終えたらお腹がぐう~と鳴る。

朝食を抜いたのでお腹ぺこぺこ。

海辺の美味しいお店でランチを食べる約束だ。

戦闘の様子をしっかり撮影してくれていたコウモリネコちゃんのコルルくんといっしょに夜霧ちゃんのもとに急いで向かった。

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