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たぬき和尚

わしの名は狸寝入じゃ。

今年で50になる。

髪はもともと薄いのでいさぎよく丸めておる。

ぽっこりお腹の短足じゃ。

僧侶の資格も何も持ってないし厳しい修行も積んでおらんが新興宗教ぽんぽこ教の教祖として君臨しておる。

信者数は今年で20億人を超えた。

あと数年もすれば信者数は世界一に認定されるじゃろう。

ぽんぽこ教を作ってわずか10年で世界一に手がかかるとはやはりわしは天才じゃ。

ぽんぽこを唱えれば誰でも極楽浄土に行ける。

たぬきは神の使いじゃからたぬきの置き物を仏像として毎日拝みましょうっていう教えじゃ。かわいいたぬきのイラストで女子供にもウケがええ。

出家してくる信者も多いので5年前に東北地方にあるたぬき山を買い巨大な寺を建設した。

国有地じゃが名の知れた政治家や高級官僚にも信者がおるから安値で買えた。

もはやぽんぽこ教は国教じゃ。

今日は世界的に人気なトップアイドルグループナイトメアが入信を求めてやって来る。最近は芸能人や著名人の入信も多い。ウハウハ大繁盛じゃ。

普段はわしみずから入信希望者に会うことはないが、今日は特別にあってやろう。

本堂にはアイドルスタイルの3人が正座して待っておった。

「遠路はるばるようきてくださった。夜霧殿に朝陽殿にびぐる殿。お三方の活躍は拙僧も拝見しておりますぞ」

ひと懐っこい笑顔を作って見せる。

わしは人たらしと呼ばれておる。

半径1メートル以内に入った人間はみなわしを好きになる。

「こんにちは和尚様♩」

「こんちはだぜ和尚さん!」

「こんにちは和尚」

3人ともオーラが洗練されておってまことにすばらしい。

これほどまでに魂のレベルが高い人類がおるとはのぉ。

美少女2人は洗脳してわしの愛人に。

美少年は男どもの愛玩道具にしてやろう

ぽんぽこ教では恋愛禁止で女を抱けぬから衆道が大流行しておる。

衆道とは男同士がちちくり合うことじゃ。

美少年が犠牲になることが多い。

悶々としておる男どもの性欲を発散させてやらねばの。

子供が産まれないと信者が減る?

わしが特別に認めてやった信者だけが夫婦となれる。

女はブス以外ぜんいんわしのお手つき済みじゃがな。

信者なんぞにはわしの使い込んで飽きたお古でじゅうぶんじゃ。

気が向いたら好きな時に抱かせて貰えばええ。

若い清潔感のある僧侶がお茶と茶菓子を運んでくる。

「ささ。お茶と茶菓子をどうぞ」

「いただきまーす♩」

「いただくぜ」

「いただくわ」

お菓子ぐらいなんぼでも食わせてやるわい。

この3人には入信後、出家もしてもらう。

うちでは出家する信者に全財産を寄進させておる。家も土地もぜんぶじゃ。

世界的にトップアイドルである3人の財産はすごいじゃろう。

それがすべてわしのもんじゃ。

広告塔にもなってもらう。

絶大な宣伝効果を生むじゃろう。

なにより楽しみなのは美少女2人のはずむような肉体じゃ。

ロリコン教のわしは股間のうずきがたまらぬ。

わしは笑顔ほくほくじゃ。

茶菓子を食べながら朝陽は夜霧に問いかける。

「ねえ、夜霧ちゃん。このひとほんとに悪人なの?」

わしはギョッとする。

いまなんと?

「大悪党よ。信者からお布施を巻き上げて宮殿のような寺院を建て大奥を作りたくさんの愛人を囲い毎晩ごちそうを食べてる。そのくせ信者には厳しい修行を課す。恋愛禁止、お酒・肉食禁止、滝行や千日回峰行せんにちかいほうぎょう、即身仏まで要求する」

夜霧は軽蔑の視線を向けてくる。

ネコにらまれたネズミの気分じゃ。

「守護霊が菩薩だぜ?」

「後光がさしてるよ?」

「目を凝らしてよく見なさい」

ショックで言葉を失っておるわしの背後を朝陽とびぐるは凝視する。

「オーラが澱んでる?」

「よくみりゃうっすら黒いな」

「腕のいい詐欺師はオーラまで偽る。だまされないようにしなさい」

夜霧は立ち上がった。

「あなたの悪事はぜんぶ筒抜けよ。エクソシスト協会はぽんぽこ教にスパイを送り込んでいたの。たぬきの守護霊を菩薩に化けさせてみんなをだましていたわね。成敗します!」

「ふん!だまされるほうが悪いんじゃい!」

こんな日がいつか来るとは思っておったわい。

ポンタは変化をといてたぬきに戻る。

葉っぱを頭に乗せて赤い服を羽織った太っちょたぬきじゃ。

わしにそっくりで何でもいうことを聞くういやつよ。

朝陽とびぐるも立ち上がった。

「取らぬ狸の皮算用してたんでしょ?残念だったね!」

「化けだぬきは泥舟に乗せて沈めてやんぜ!」

みんなレジェンド武器を持っておる。

魔剣・地獄刀・妖精剣。

どれも図鑑でしか見たことないわ。

年端もいかぬ子供が所持できるようなもんじゃないじゃろ。

「ポンタ!神人合体じゃ!」

わしとポンタの体が光り始める。

わしはポンタとひとつになった。

「ゆくぞ!悪ガキども!」

剣を構える3人に襲いかかる見せかけて近くの柱に飛びつく。

ピンチに陥った時のために柱が登りやすいように杭を打っておいた。

たぬきはすばしっこいし木のぼりができる。

柱を駆け上がり天井からぶら下がるヒモにとびついた。

「トラップよ!この場から離れて!」

夜霧の号令で3人とも飛び退く。

天井が開き大量の狸の置物が降ってくる。

わしは印を結んでドロンと置き物に化けた。

夜霧たちは置き物の山を見て立ち尽くす。

「木を隠すなら森。詐欺師らしいわね」

「ひとつずつわるか?」

「そうしましょう」

「もったいないなぁ」

3人が剣を振り上げるとふすまがあいてわしを慕う大勢の信者たちが乱入してきた。

「和尚様ッ!お助けしますッ!」

信者たちは置き物を抱えて外へ走り出す。

「あ!こら待てよ!」

「・・・あきれた狂信者たちね」

「全員は追えないよ!」

夜霧たちはあたふたしておる。

無事、外に出たわしは高級車に乗り込んで猛スピードで下山させた。

エクソシスト協会の手のものが山を取り囲んでるかとおもうたが、だれもおらん。

油断しまくりじゃ。

待ち伏せされておったら山に逃げ込んで下山せねばならんかったが、だれもおらんなら話は早い。

最寄りの空港まで急いだ。

プライベートジェットで高跳びじゃ。

海外にも信者は大勢おるし隠し口座に預金もたんまりある。

欲望の日々は永遠に続く。

空港に到着する。

高級車を降りてプライベートジェットに乗り込もうとドアを開けると先客がいた。

夜霧たちじゃ。

わしは驚愕した。

なぜここがわかったおる?

霊体化して飛んできたのはわかるが、行く先がわかるのはげせぬ。

港にクルーザーもあるし、ほかの空港にもプライベートジェットは所持しておる。

「オレの鼻からは逃れられねぇよ」

びぐるは鼻を鳴らす。

そうか。こやつは犬じゃ。

わしの匂いを追跡しこの空港に向かっているのを確認して先回りした。

「山に戻りましょう。たぬき和尚」

わしは魔剣を首元に突きつけられる。

ほかの2人とちがってこやつはほんとに斬りそうじゃ。

ゴミクズを見るような目をしておる。

慈悲のかけらもない。

わしはロープできつく縛らられてたぬき山に連行された。

印を結べねば変化の術は使えぬ。

たぬきは臆病じゃしさして強くもない。

捕獲されてしまえば無力じゃ。とほほ。

山に連れ戻されたわしは神社への催眠を解かされた。

催眠の解けた信者たちに激しい糾弾を受ける。

当然の報いじゃない。

このままじゃと袋叩きにされてむごたらしく殺されてしまう。

わしは一世一代の芝居を打つ。

大泣きして謝罪じゃ。

両親が幼い頃に心中した不幸な生い立ちを語る。

心中は詐欺師にだまされた莫大な借金が原因じゃ。

わしを1人置いてった理由はわからぬ。

両親は親戚と疎遠じゃったからわしは孤児院に預けられた。

世間は天涯孤独の身となったわしに冷たく孤児院でも学校でも工場でもひどいいじめを受けた。

わしの両親をだました詐欺師たちは捕まりもせず今もいい暮らしをしておる。

それでわしも詐欺師になった。

何をしても天罰を受けぬのであれば人をだましてもええんじゃ。

幸せへの飢えから人をだまして金をかき集めた。

けどいくら遊蕩に溺れてもわしの心は癒えることはなかった。

夜霧は信者たちに問う。

「いまの話を聞いて許そうと思う人は手をあげて」

波を打ったように静かになる。

ダメか。そりゃそうじゃ。

わしにだまされて一家離散したり命を絶った信者もおる。

美人母娘の親子丼もした。

美少女の姉妹丼もした。

逆らう信者はリンチして放り出した。

厳しい修行で死んだものや性欲を我慢するものをバカにしてごちそうと酒と美女たちとの営みを楽しんだ。

好き放題に悪を貫いた。

朝陽は本堂に転がっておったこづつみを打ってみんなの注目を集める。

「とりまぽんぽこ教の全財産はエクソシスト協会が預かるよ♩だまされた人たちへの補償もちゃんとするのでご安心ください♩」

信者たちの顔が多少明るさを取り戻す。

「これからは猫を信仰することね。猫は裏切らない」

「たぬき和尚はこのまま置いてくから好きにしな。結末はエクソシスト協会にちゃんと報告してくれよな」

3人は本堂を出ていく。夜霧は立ち止まり振り返る。

「あなたのご両親をだました詐欺師たちは全員地獄に堕ちる予定よ。閻魔大王様に聞いたわ。帳尻合わせは絶対に起きるの。神を信じられなかった己の心の弱さを恥じなさい」

ふすまはピシャリと閉じられた。

そうじゃったか。

わしは生まれてはじめて反省した。

わしも死んだら地獄行きじゃな。

落ち込んでおるとわしの側近じゃった信者がこわい顔で近づいてくる。

こやつはもとヤクザで人を何人も殺めておる。

ヤクザ時代、出入りで負った顔のキズは生々しく痛々しい。

あらごとになれておるからボディガードとしても重宝しておった。

「妙な真似をしたらたぬき鍋にして食ってやるからな」

あまりの迫力に無言でコクコクうなずく。

「たぬき耳の美少女に変身しろ。巫女姿だ」

わしは命令通りたぬき耳の美少女になる。

「てめえはこれから一生その姿で過ごせ。このなかにゃ何年も性欲を我慢して自慰すらしてなかった信者がたくさんいる。これからてめえを性欲のはけぐちにする。嫌なら変身を解け。たっぷり拷問して殺す」

わしはぶるぶる震えた。

拷問の痛みを想像して小便を漏らす。

変身をとけば拷問されて殺されてしまうので解くことは絶対にできん。

こやつはヤクザ時代もぽんぽこ教に入信してからも汚れ仕事をいっぺんに担っておった。

わしを批判するジャーナリストや有名人を拷問した上でみな消してもらった。

拷問のエキスパートじゃ。

「逃げても拷問して殺す。てめえがそうしていたようにな」

わしは赤外線を山に張り巡らせて出家信者を絶対に逃さぬようにしていた。

脱走者は山狩りしてでも殺しておる。

こやつの守護霊はハイエナで神人合体まで到達しておるし、ハイエナも犬と同じでとんでもなく鼻がいい。

どうあがいても魂の匂いまでは消せぬ。

霊化の術でも逃げても地獄まで追ってくるということじゃ。

わしはあきらめて信者たちの慰み者として一生を過ごした。

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