アイドル戦国時代
あたしたちはアイドル活動をはじめた。
ファンはアイドルを神と呼んで神聖視する。
信仰心を増すためにはアイドルになるのが1番手っ取り早い。
エクソシスト協会には宣伝部があり芸能人になりたいエクソシストは協会が全面的にバックアップしてくれる。
レッスンもマネージャーも運転手も高級車もぜんぶ用意してくれた。
あたしたちは3人組アイドルグループナイトメアとしてデビューする。
アイドルは山のようにいる時代でみんな切磋琢磨してしのぎを削ってファンの奪い合いになっている。
差別化をはかるために神人合体して音楽番組に出まくった。
天然の猫耳美少女を嫌いな人間はいない。
妖精美少女や犬耳美少年もみんな大好きだし。
「夜霧にゃん!よろしくにゃん♩」
「朝陽だよ♩よろしくね♩」
「びぐるだぜ!よろしくぅ!」
ダンスと歌を披露して話題なって大盛り上がりだ。
エアギターやエアピアノも披露する。
あたしはダンスと歌は前世でも習っていたし得意だった。
天界に暮らす猫族は猫が進化して生物だから猫が得意なことは猫族も得意だ。
普通の猫もいるけど、あれは職人が霊力で作ったおもちゃだから進化しない。
朝陽は妖精と合体してるから舞と歌は簡単にこなす。
びぐるもわんちゃんと合体してるからはしゃぐのが得意で吠えなれてるおかげでノドも強い。そんなにうまくない踊りと歌でもみんなに注目されて可愛がられた。
テレビで話題を集めるとあたしたちはみんなの心をわしづかみにしてあっという間にアイドル戦国時代の覇者となった。
ドームでコンサートも開いて世界中に配信する。
世界中があたしたちのトリコとなった。
それぞれ写真集も出して、あたしは猫耳三銃士・猫耳魔法少女・猫耳チャイナドレスなど猫愛好家にはたまらないファッションを披露する。
写真集は3人ともバカ売れした。
あたしにとってアイドルは天職だ。
ねこなで声でみんなと接して歌う時は発情期の猫のように鳴けばいいだけ。
ちょろい。コンサート終わりに楽屋で休んでいると朝陽が指を鳴らす。
「クールな夜霧ちゃんの甘えんぼうな姿キュンです♩」
びぐるは首を傾げて見せる。
「じつはあれが素なんじゃねーの?」
あたしはアイドルスマイルを消した。
「ちがう。いやいや演じてるの。信仰心を集めるためよ」
「ノリノリじゃん」
「そう見えるならあたしの演技力はアカデミー賞ものね」
「ぶりっこ好きだからずっとそっちでいて♩」
「心に負担かかるからいや。けっこう恥ずいのよ」
「アイドル活動中、いつも顔が赤いのは羞恥心か。それも好評だぜ」
3人で談笑していると楽屋のドアがノックされる。
マネージャーかしら。返事をするとガチャリとドアが開く。
「こんばんは。ナイトメアのみなさん」
3人の美少女が入ってくる。
「はじめまして。オーシャンズです。ライブ観てました」
同じエクソシスト協会に所属するアイドルグループだ。
それぞれクラゲの守護霊、熱帯魚の守護霊、サメの守護霊がついている。
名前はクララ、マリン、シャーク。
マリンはギターケース、シャークはベースケースを背負っていた。
コンサート鑑賞前に路上ライブでもしてたのかしら。
サメはメガロドン。熱帯魚はエンゼルフィッシュね。
猫の習性でどうしても魚に目が行く。
この子たちも神人合体してアイドル活動している。
すごい人気だったけど、いまではあたしたちが上だ。
シャークは胸の前でこぶしをにぎる。
「すげえ感動したっち。ねことちょうちょのタンゴが特に印象に残ってるっち」
「ありがとう♩あれかなり練習したんだよねぇ♩」
「大先輩にお褒めいただき光栄にゃん♩」
得意な猫ポーズでお礼する。ファンサだ。
マリンはほほに手をそえる。
「うちは犬さんのラブソングにうっとりですわぁ」
「ありがとな。オレもきみに溺れたいぜ」
「いや~ん。うれしいどす!」
クララは体をくねらせもじもじしながら言う。
「3人にお願いがあるんです」
「握手かな?それともサイン?
「私たちと一戦まみえて欲しいんです。海開き!」
クララの耳につけていた貝殻のピースが輝く。
「!?」
楽屋風景が塗り変わり海底にひきずりこまれる。
息苦しい。
海の中では呼吸できない。
霊化して肉体を捨てた。
「なんのつもり?」
「めざわりなライバルは消したいっち。エクソシスト協会からもナイトメアは過去にルール違反してるから消せるなら消してもいいって言われてるっちよ」
「なるほどね。上等じゃない」
あたしは霊力を消費して刀を作る。
朝陽は剣、びぐるは槍を作り出した。
クララは仲間に伝える。
「夜霧さんは私が相手します」
「わんちゃんはあたいがやるっち」
「ほなちょうちょはんはうちが相手しましょう」
シャークはギターケースを開けてレイオマノ(木剣にサメに刃を埋め込んだ剣)を取り出す。
マリンはベースケースを開けてトライデントを取り出した。
自分たちのライブでもないのに楽器を持ってるから変だと思ったのよね。
海神剣・海神槍ね。
魔剣と同じで異世界を作る力を秘めている。
クララのつけてるピアスの海神貝も同じだ。
あたしたちがレジェンド武器を持ってないところを狙ったわね。
自分たちに有利な状況を作り上げるために。
相手が作り出した異世界をうち消すには同じ力を秘めた装備がいる。
今のあたしたちは異世界に閉じ込められたカゴの中の鳥だ。
戦闘が開始された。
霊体なので海の中でも動ける。
「サンダーアロー!」
クララはカミナリの矢を複数放ってきた。
電撃をまとった矢だから斬ったら感電する。
大きく避けてかわした。
「サンダーレイン!」
カミナリが連続で降ってくる。
これもよけるしかない。
どーん!どーん!とおへそを隠して耳を塞ぎたくなるような轟音が海底に響き渡る。
「サンダードラゴン!」
「んな!?」
いかずちの龍が牙を剥いて襲ってきた。
これは追尾してくるから逃げられない。
あたしはゴムの盾を創り出して雷龍の突進を防いだ。
全部じゃないけど電流を防げてる。
しびれながら刀を消してゴムグローブを創り出した。
雷龍の顔面をおもいっきしぶん殴る。
「ゴロロロンッ!」
痛がっているので連続で殴りつける。
雷龍は逃げ出してどこかに行ってしまった。
雷の体だからダメージなんてはじめて受けたんでしょう。
たいした痛みではなかったはずよ。弱虫ね。
あたしは盾を消してクララに向かう。
飛んでくる雷の矢は拳で次々に粉砕した。
「放電ッ!」
クララは全身から電気を放ってバリアを張るとあたしに向かってくる。
あたしは急ブレーキをかけてくるりと回った。
また逃げなきゃいけない。
あれで抱きつかれたら電気椅子と同じだわ。
放電が終わるまで待てばいいだけだけど、その前に追いつかれそう。
あたしはゴムグローブを消してゴム弾入りの銃を両手に創り出した。
振り返って乱れ撃つ。
「いだだだだッ!」
クララは身を守った。
効いてる。
このまま押し切ってやる。
気分を高めるために手をクロスさせて撃ちまくった。
「神人合体ッ!」
クララとクラゲが光る。
クララはクラゲとひとつになった。
髪の毛がクラゲの足っぽい。
服も白と水色のワンピースになっている。
「もう許しません」
電撃をまとったクララが猛スピードで襲ってくる。
いまのクララは魚属性だから海底ステージでステータスが大幅に上がっている。
「クラゲのくせに泳ぎが達者じゃない」
あたしは構わず銃を撃ち続ける。
銃弾は電撃に焼かれて溶けた。
電圧が強すぎて絶縁体であるゴムが耐えられない。
絶縁破壊だ。
「昇天です」
クララはあたしに抱きついた。
死の抱擁だ。
「ぐががががががッ!」
あたしは電気に焼かれる。
数十秒後、もうじゅうぶんだと思ったのか解放された。
あたしは脱力して海底に沈む。
「さて、ほかの子の助っ人に行きますか」
クララは去って行く。
あたしは霊力で釣竿を作り身を起こした。
さっきまでは死んだふり作戦だ。
竿を大きく振ってクララの服に釣り糸を引っかけて服をはぎとる。
クララは水着になった。
「エッチ!おしおきします!」
クララは怒って向かってくる。
あたしは電気銃を創って撃つ。
電極はクララにぶちあたった。
「ぐえええッ!」
クララは電撃にしびれて骨まで見える。
プスプスと頭から煙を出すクララにすかさずスタンガンを突きつけた。
「電気クラゲは実際には体から電気を出さない。 刺されると電気が走るような激しい痛みを感じるから電気クラゲと呼ばれる。あなたが放電してもしびれないのは絶縁体の服を着てたから。そうでしょ?」
「うう。正解です」
「あたしも絶縁体の服に着替えてたの。見た目同じだから気づかなかったようね」
おかげでずいぶん電撃を軽減できた。
「いまからたっぷり拷問してあげる」
「タンマです!降参です!」
クララは海中に正座して両手をあげる。
「絶縁体の服、ゴムの盾、ゴムグローブ、釣竿、電気銃、スタンガン。よく完璧にイメージできましたね。もしかして奇襲に備えてました?」
「当然でしょ。あたしたちはどんな能力者がいつ襲ってきてもいいように24時間イメトレしてるわ」
大げさに言っておく。
「さすがです。おみそれしました」
クララはうなだれる。
朝陽とびぐるが戻ってきた。
「ジョーズに勝ったぜ!」
「人魚姫は泡になったよ♩」
「よくやったわね。ハンデがあってもぜったい勝つと思ってたわ」
あたしは2人に拍手を送る。
ボコボコにされたシャークとマリンも続いてやってくる。
「ジョーズはホオジロザメっち」
「まあいーじゃんそういうの」
「泡になってないどすえ」
「テヘペロ♩」
戦闘が終結して海底から楽屋へと戻る。
ナイトメアはオーシャンズに完勝した。
「反省して心を入れ替えたっち!歌と踊りを磨いて正攻法でナイトメアに勝つっち!」
「最初からそうすべきよ」
「うちら嫉妬の炎で自分を見失ってたんやなぁ」
「怒れるものは熱した炭を握るが如しだよ。燃えるのは自分自身なの」
「ほんとにその通りです。短絡的でした」
「魔に刺されたな。心に巣くった悪魔退治もエクソシストの仕事だし気にすんな」
「新人のあなたがたのほうが海千山千のベテランみたいですね。本日はどうもありがとうございました」
3人はこうべを深く垂れて立ちさった。
あたしたちはエクソシスト協会に向かう。
理事長に「粛清命令をいますぐ解かないと殺す」って命令したら真っ青になってあちこち電話かけていた。
ネロたちに助けを求めてもあたしたちより弱いから意味ない。
武闘祭で優勝してアイドル活動でも成功したあたしたちには世界中にファンがいる。
信者の数が増えて信仰心が爆発的に高まれば霊格も上がる。
あたしたちは武闘祭の時よりはるかにレベルアップしていた。
いまさらネロたちなんて相手にならないわ。
オーシャンズに苦戦したのは不利な環境で戦わされたからよ。
今のエクソシスト協会にはあたしたちを罰する力はなかった。
計画は詰めの段階だ。
あたしは信者の信仰心を限界まで高めるために世界の危機を救うことにする。




