たずねびと
あたしは黒井夜霧7才。
貧乏な家に生まれた。
父は病弱であたしが生まれてすぐ病死する。オンボロ。
いまは魚を加工する工場で働く母と2人暮らしてる。
あたしは家から外へは出してもらえない。
危険だからだ。
小さい子供は事故や事件によく巻き込まれる。
もう少し大きくなれば1人で外に出て良いってさ。
母はあたしを猫可愛がりしてくる。
家にいる間はずっとぎゅーっとしてくるからわずらわしい。
あたしをネコと勘違いしてるんだ。
ネコと言えばあたしには黒い子猫の守護霊がついている。
生まれつき霊感が強いあたしは霊が見えた。
花束と飲み物が置かれた事故現場には児童たちが座ってる姿が見える。
地縛霊だ。悪意がなさそうなのでいつも手を振ってあげた。
無邪気な笑顔で振り返してくるのがかわいい。
通学路で通る川の真ん中にある岩に白い人が座ってるのも見える。
川から伸びる無数の白い手も見える。
よく溺れて亡くなる人がいる川だからね。
さびしいから仲間を増やしたいんだろう。
くわばらくわばら。悪霊には近づかないようにしてる。
学校に行く時いがいはせまいアパートの一室に閉じ込められて絵本読んだり守護霊にナイトと戯れて過ごした。
ある日の学校の帰り道、上等な着物の猫耳美少女と出会った。
としはあたしと同じくらいか。
「やっと見つけた。あたしの本体」
「あなただれ?」
「猫姫よ」
「コスプレイヤー?」
「ちがう!あたしはあなた自身。あたしと魂を融合すれば前世の記憶が戻るわ」
「あやしい・・・」
「あやしくない!」
猫姫は強引にあたしに抱きついてきた。
「うっ!ああっ!」
猫姫とひとつになり前世の記憶が魂に流し込まれる。
ぜんぶ思い出した。
戦争で死ぬかもしれないから分霊を作っておいたんだった。
あたしが死んだら転生したあたしを見つけだして融合するように指示してる。
あの時、自室でかわした分霊とのやりとりが蘇る。
ソファーに腰かけた分霊は困った顔を浮かべた。
「どうやってあなたを見つけるの?ムリゲーじゃない?」
「凡神が100000年かかるところを天才のあたしが1週間でマスターした心眼を使うのよ」
あたしの魂は純白で目立つ。みればすぐわかるはずだ。
「あーあれね。忘れてた。それでも砂漠で砂金を探すようなもんだよ」
「猫神の力を使って世界中の猫を捜索に利用しなさい」
動物がいい人間か悪い人間か見分けるのは魂を見ているからだ。
動物は学ばなくても心眼を生まれ持つ。
猫好きの純白の魂を持つ女の子を探すように世界中の猫に命令すればいい。
「にゃるほどね。やってみる。ところであたしはどこに住めばいいの?住むところないと分霊は消えちゃうんだけど?」
「どこでもいいから神社に居候して」
「肩身狭いなぁ」
「お返しに何かお手伝いすればいいでしょ。さあはやく逃げて」
「あい」
分霊は動きやすい格好に着替えて帽子をかぶるとしっぽを丸めて逃げていった。
地上に逃げた分霊は正体を隠して猫神社という猫を祀る神社に軒先を借りて暮らす。
猫姫が奮戦の末、戦死したという情報は下界まで届いた。
猫姫を慕う神たちはみんな手を合わせて祈ったそうだ。
猫族は土地を追われ散り散りになって他国に落ち延びた。
猫族の土地はネズミ族・龍族・虎族でわけあい領土を増やす。
分霊は言いつけ通り世界中に猫に命令してあたしを捜索させて7年かけてようやく発見に至ったらしい。
「あいつらぜったい許さない。ぜんいん粛清してやる!」
復讐の炎がメラメラと燃え上がる。
天界のルールがおかしいから猫族が冷遇されるんだ。
あたしが天界の頂点に立ってルールを変えてやる。
それには力がいる。
伝説の神々をはるかに超える圧倒的な力が。
ちょうど母から外出許可をもらったあたしは地道な悪霊退治を開始した。
野望への第一歩だ。
エクソシスト学園への入学も考えたけど、ルールに縛られるのが嫌だからやめた。
学生寮も食堂も無料で必要なものはぜんぶそろえてくれてお小遣いももらえる好待遇なんだけどね。自由行動できるほいがいい。
仲間を集めるにしてもエクソシスト学園の生徒は優等生のいい子ちゃんばかりであたしの野望に付き合ってくれるとは思えない。
あたしのいうことに盲目的に従ってくれる仲間がいい。
あたしがぎょせる仲間じゃないとダメだ。
裏切りは許さない。
言いなりになる手駒が必要だ。
あたしは地道な悪霊退治で霊力を伸ばし、日々、体を鍛えてネットや本で学んだ武道の訓練も行った。
朝陽とびぐるを仲間にして育ててエクソシスト学園に途中入学し、武闘祭りで優勝する。祝勝会のタコパであたしが前世の話をすると、2人ともあたしの復讐に協力してくれると申し出てくれた。ねずみ族に対しても天界の階級社会に対しても2人は怒りをあらわにしてた。2人ともいじめられっ子出身だから理不尽な出来事や決まりは看過できない様子だ。
たこ焼きをつまみながらびぐるが聞いてくる。
「天界における階級を細かく教えてくれよ」
「特級は造化の三神・オリュンポス十二神。1級がイザナギ家・七福神・七大天使。ほかに武甕槌・八意思金神など功績ある有名な神々も1級よ。2級は十二支。3級はその他もろもろね」
「ゼウスやラファエルって世界観違うくない?」
「もともと独立した世界だったのに合併したのよ」
「なんで地位を固定してんだ?選挙とか人気投票とか干支の入れ替え戦とかすりゃいいんでね?」
「天界は長老支配なの。老人は変化を嫌がるものよ。階級の高い神には広くて肥沃な大地が与えられるし、多額のお金ももらえる。高位の神族としての品位保持の資に充てるためにね。だから十二支の一族は優雅に遊んで暮らしてるわ。既得権なのよ」
「人間界と同じじゃん」
「神はみずからの姿に似せて人を作った。同じような世界になるのは当然よ」
「地位が高いからって傲慢な振る舞いは許せねぇな。おまけに永遠に地位が固定されてるっていうのもなんかよくねぇよな」
「すごく差別的な社会だね。超格差もある。改革が必要だよ」
「そのとおり。あたしは天界に革命を起こすの」
「どうやるの?」
「力づくよ」
「神々と戦争すんの?」
「そうよ」
「ラグナロクじゃん!」
「オレたち3人だけで?戦力少なすぎねぇ?」
「あたしの計算では3人で勝てるわ。軍神や大天使なんて数えるほどしかいないんだから。いまのあたしたちなら雑兵なんて小指で倒せる。束になってかかってきても平気よ」
「大天使ミカエルと戦うんでしょ?やばすぎ」
「軍神マルスや武神毘沙門天もいるぜ。勝ち筋がまったく見えねぇ」
「あたしたちはもっともっと強くなれる。強くなれば不安なんて吹き飛ぶわ」
「まだ限界突破する方法あんの?」
「みずからに対するみんなの信仰心を増やすことで霊格をさらにアップすることができるわ」
「信仰心?」
「人気者になってその人のことを想像するだけで気持ち良くなれる存在になればいいの」
「なるへそ」
「武闘祭を観ていた人々の多くはあたしたちのファンになった。あたしたちの霊力はそうとう高まってるわよ。これからもっともっと信者を増やす」
「どうやって信者増やすのさ?」」
「アイドルよ」
「へ?」
「3人でアイドルになるの」
「えーーーーっ!?」
月夜の晩に朝陽とびぐるの絶叫が響き渡った。




