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蒼月のレゾナンス ~最弱の調律士は運命を選び直す~  作者: なるかめ
第4章 運命を選ぶ者

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第26話 選ぶということ

再び向き合った三人。

信頼はまだ不完全なまま、それでも蒼真は自分の選択を言葉にしようとする。

 朝の光が、瓦礫の隙間から差し込んでいた。


 夜は越えた。

 だが――何かが解決したわけじゃない。


 三人は、同じ場所にいる。


 それだけだった。



 凛が大きく伸びをし、肩を回す。


「……で?」と火乃宮凛は言った。


いつもの調子。

だが、どこか探るような視線だった。


「次、どうするの」



 蒼真はすぐには答えなかった。


 考えているわけじゃない。

 言葉を選んでいる。


 その間を埋めるように、水瀬月乃が一歩前に出る。


 「あなたは『選ぶ』と言いました」と月乃は静かに言った。

 「その定義を、明確にしてください」


 逃がさない声音。

 だが、押しつけではない。


 蒼真は小さく笑った。

「相変わらずだな」


「必要なことです」と月乃は即答する。


 蒼真は、ゆっくりと空を見上げた。

 青い。


 静寂地帯とは違う。

 音がある。

 風がある。

 人の気配がある。


 世界は、動いている。


「……運命ってさ」と蒼真は呟いた。


 凛が眉をひそめる。

 「急に何よ」


「あるんだろうなって思う」

 蒼真は続ける。

「生まれとか、力とか、状況とか」

「選べないものは、確かにある」


 月乃が小さく頷く。

「否定できません」


 凛も、何も言わずに聞いている。


 蒼真は、ゆっくりと言葉を落とした。

「でも」


 一拍。


「それに従うかどうかは、別だ」


 空気が、わずかに張り詰める。


 月乃の視線が鋭くなる。

 凛の表情も、引き締まる。


 蒼真は二人を見た。


 逃げない。


「俺は、運命を壊したいんじゃない」

「従うかどうかを、自分で決めたいだけだ」


 沈黙。


 風が通り抜ける。


 凛が小さく息を吐いた。

「……あんたらしいわね」


「そうか?」


「めんどくさいって意味で」

 そう言って、凛はわずかに笑った。

 だが、視線は逸らさない。


 月乃が言う。

「概念としては理解できます」

「ですが・・・実証が必要です」


 蒼真は頷く。

「だと思った」


 凛が腕を組む。

「で、どうやるの?」


 蒼真は、少しだけ考えてから言った。

「小さいのでいい」


「小さい?」と月乃が反応する。


「ああ」

 蒼真は手を差し出した。

「選べるかどうか、試す」

「共鳴で」


 空気が止まる。


 凛の目が揺れた。

「……今?」


「今だ」


「ここで?」


「ああ」


 月乃が即座に言う。

「リスクがあります」

「現状、安定していません」

「制御保証もありません」


 蒼真は頷く。

「分かってる」

 そして――はっきりと言った。

「選ばないなら、やらない」


 その一言で、場の意味が変わる。


 凛が息を飲む。

「……本当に?」


「ああ」(蒼真)


「必要でも?」(凛)


「やらない」(蒼真)


「間に合わなくても?」(凛)


「やらない」(蒼真)



 沈黙。


 長い。


 だが――逃げていない。



 凛は目を閉じた。

 あの感覚が蘇る。


 止められた瞬間。

 奪われた意思。


 怖い。

 確かに、怖い。


 それでも・・・

「……選ばせるって言ったわよね」と凛は静かに言った。


「ああ」と蒼真は答える。


 凛は目を開く。

「じゃあ――選ぶ」


 一歩、前に出る。

「やる」


 その声は、震えていなかった。


 月乃も続く。

「私も同様です」

「検証として価値があります」


 一拍。


「……そして、選択します」



 蒼真は頷いた。

「分かった」


 三人が向き合う。


 距離は近い。

 だが・・・ 完全ではない。

 

 それでいい。


 蒼真は、ゆっくり手を伸ばす。

「確認する」


 凛が頷く。

「うん」


 月乃も言う。

「同意します」


 一瞬の静寂。


 そして・・・

 わずかに、感覚が重なる。


 強くない。

 完全でもない。


 だが・・・

 押し付けられていない。

 止められていない。

 選んでいる。


 凛が、息を吐いた。

「……違う」


 蒼真も感じていた。

 あの時とは、明確に違う。


 月乃が端末を確認しながら言う。

「干渉が最小限に抑えられています」

「拒否の余地が残っています」


 蒼真は、小さく笑った。

「それでいい」



 凛も頷く。

「完璧じゃないけど」


「ああ」(蒼真)


「でも、壊れてない」(凛)



 その時だった。

 遠くで、鈍い音が響いた。


 三人の視線がそちらへ向く。


 瓦礫の向こう。

 小規模な共鳴の乱れ。


 まだ小さい。

 だが、放置すれば広がる。


 凛が言う。

「……どうする?」


 試されている。

 

 今、この瞬間。


 蒼真は即答しない。

 凛を見る。

 月乃を見る。


「選べ」と言う代わりに、視線で問う。


 凛は、一瞬だけ迷った。

 だが――頷く。

「やる」


 月乃も短く言う。

「同意します」



 蒼真は頷いた。

「分かった」


 三人の意識が、再び重なる。


 今度は、さっきより少しだけ深い。


 暴走の芽に触れる。

 押さえつけない。

 均す。

 揃える。

 拒否の余地を残したまま。


 数秒。

 

 波は静かに収まった。


 完全ではない。

 だが――壊れていない。


 凛が息を吐く。

「……いけるじゃん」


 月乃が言う。

「成功率はまだ低いですが」

「再現性はあります」


 蒼真は、小さく笑った。

「十分だ」


 三人の間に、静かな感覚が残る。

 弱い。

 だが・・・確かだ。


 蒼真は前を向く。


 運命は、ある。

 否定しない。

 

 だが・・・

 それに従うかどうかは、自分で決める。


 その選択は、もう始まっている。


 そしてそれは・・・

 一度きりでは終わらない。

読んでいただきありがとうございます。

今回は「選ぶ」ということを、言葉と関係の中で描きました。

次回「強制共鳴発動」、選択が現実にぶつかります。

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