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蒼月のレゾナンス ~最弱の調律士は運命を選び直す~  作者: なるかめ
第4章 運命を選ぶ者

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第25話 再開

蒼真は凛と月乃と再び向き合う。

だが、失われた信頼は簡単には戻らない。

それでも——三人は、もう一度選び直そうとする。

風が、少しだけやわらいでいた。


静寂地帯の外縁。

あの場所から、少しだけ離れた場所。


三人は、まだ同じ場所にいる。


だが——


距離は、残っている。


誰も、すぐには話さなかった。


凛が先に口を開く。


「……で?」


短い言葉。


だが、逃がさない。


「どうすんの」


蒼真は答えない。


すぐに言葉を出せば、軽くなる。


それは違うと分かっている。


月乃が言う。


「結論は出ているはずです」


「先ほど、あなたは“選ぶ”と言った」


逃げ場を塞ぐ言い方。


だが、責めてはいない。


確認しているだけだ。


蒼真は、ゆっくり息を吐く。


「……ああ」


短い肯定。


それだけでは足りないと分かっている。


沈黙。


風が通り抜ける。


凛が、少しだけ視線を逸らす。


「……正直に言うけど」


蒼真を見る。


「まだ、怖い」


その言葉は、はっきりしていた。


誤魔化さない。


「分かってるつもりでも」


「理屈で理解してても」


一瞬、言葉が止まる。


「止められたときの感じ、まだ残ってる」


静寂。


蒼真は、目を逸らさない。


それが何を意味するか、もう分かっている。


奪ったわけじゃない。


でも——


選ばせていない。


凛は続ける。


「信じたいとは思ってる」


「でも、完全には無理」


それが現実だった。


月乃が補足する。


「合理的な判断です」


「一度失われた信頼は、即時には回復しない」


冷静な言葉。


だが、そこに否定はない。


蒼真は、頷く。


「……当然だ」


そして、続ける。


「謝らない」


凛の眉が動く。


月乃も、わずかに反応する。


蒼真は言う。


「間違ってなかったと思ってるからじゃない」


一拍。


「謝って済むことじゃないからだ」


沈黙。


逃げていない。


凛が、ゆっくり息を吐く。


「……そういうとこよね」


少しだけ、苦笑する。


「嫌いじゃないけど」


月乃が言う。


「では、どうしますか」


蒼真は、二人を見る。


ここが分岐点だと分かっている。


命令でもない。


説得でもない。


「確認する」


凛が眉をひそめる。


「何を」


蒼真は、はっきり言う。


「俺を選ぶかどうか」


風が止まったように感じた。


凛の目が揺れる。


月乃も、言葉を失う。


蒼真は続ける。


「俺は、もう勝手に決めない」


「必要でも、正しくても」


「お前らが選ばないなら、やらない」


それは——


制限だった。


自分自身への。


凛が、ゆっくり言う。


「それ、本気?」


「ああ」


即答だった。


月乃が確認する。


「結果として、間に合わなくなる可能性があります」


「あるな」


「それでも?」


蒼真は頷く。


「それでも」


沈黙。


長い。


だが、逃げていない。


凛が、視線を落とす。


考えている。


怖い。


それでも——逃げない。


やがて、小さく言う。


「……怖い」


もう一度。


今度は、はっきりと。


「また、同じことになるかもしれない」


蒼真は答えない。


否定しない。


保証もしない。


ただ——待つ。


凛は顔を上げる。


「でも」


一歩、踏み出す。


「それでも、選ぶ」


蒼真を見る。


逃げずに。


「私は、あんたを選ぶ」


その言葉は、軽くない。


選択だ。


月乃が、静かに言う。


「私も同様です」


一拍。


「合理性は低いですが」


わずかに、息を吐く。


「それでも、選択します」


三人の距離が、少しだけ縮まる。


完全ではない。


元通りでもない。


だが——


切れてはいない。


蒼真は、小さく頷く。


「……ありがとう」


それ以上は言わない。


言葉を重ねれば、軽くなる。


凛が言う。


「勘違いしないで」


「戻ったわけじゃないから」


「これからだから」


月乃も続ける。


「同意は、継続的なものです」


「一度の選択で固定されるものではない」


蒼真は、頷く。


「分かってる」


風が吹く。


静寂ではない。


音がある。


揺れている。


不安定だ。


それでも——


続いている。


蒼真は言う。


「もう一回、始めよう」


誰に向けた言葉でもない。


だが、三人に届いている。


凛が、わずかに笑う。


「最初から?」


「いや」


蒼真は首を振る。


「ここからだ」


月乃が頷く。


「それが適切です」


三人は、同じ方向を見る。


世界は、まだ終わっていない。


なら——


ここから、選べばいい。

読んでいただきありがとうございます。

三人の関係は、ここから再び動き始めます。

次回「選ぶということ」、蒼真の答えが示されます。

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