表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼月のレゾナンス ~最弱の調律士は運命を選び直す~  作者: なるかめ
第4章 運命を選ぶ者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/29

第27話 強制共鳴発動

蒼真の思想が言葉になった直後、世界は動き出す。

天城は“世界のため”に強制共鳴を発動する。

そのとき、三人は何を選ぶのか。

恐怖が消える均一な世界の中で、三人は「選ぶこと」を守れるのかが問われる。

最初に変わったのは、音だった。


風のざわめきが、急に“整う”。

ばらつきが消え、均一に流れ始める。


月乃が顔を上げる。


「……来ます」


一拍。


「広域共鳴フィールド。強制です」


凛が舌打ちする。


「本気でやるのね」


空に、見えない“圧”が走る。

遠方の都市側から、一直線に広がってくる気配。


蒼真は短く言う。


「天城だ」


否定はない。


月乃が続ける。


「効率は最適化されます。事故・衝突は減少」

「意思決定は均質化され、誤差は排除される」


凛が、ゆっくり言う。


「……つまり」


「怖くなくなるってこと?」


沈黙。


誰も否定しない。


蒼真は、目を閉じる。


分かっている。

これは間違いじゃない。守るための選択だ。


だが——


凛が、口を開く。


「正直に言う」


蒼真を見る。


「私は、あんたが怖かった」


風が止まる。


「力じゃない。あの感じ」

「自分で決めてないのに、終わってる感じ」


蒼真は目を逸らさない。


凛は続ける。


「だからさ」


少しだけ笑う。


「強制共鳴って、楽だと思う」


胸の奥が、わずかに揺れる。


「怖くなくなるなら、それでいいって——思いそうになる」


月乃が言う。


「合理的です。恐怖の排除は安定に寄与します」


凛は頷く。


「でしょ」


一拍。


そして——


「でも」


空気が変わる。


凛の目が、まっすぐになる。


「それ、私じゃない」


蒼真が息を止める。


「怖いままがいいとは言わない」

「でも、怖くなくなるために、選べなくなるのは嫌」


一歩、踏み出す。


「私は——」


「私は、自分で決めたい」


蒼真の中で、別の声が重なる。


やさしい声。


『選んで、そうま』


蒼真は、ゆっくり手を伸ばす。


「……確認する」


凛が頷く。


「うん」


月乃も言う。


「同意します」


蒼真は、二人を見て——言う。


「選んでくれ」


命令ではない。願いでもない。

“確認”。


凛が答える。


「選ぶ」


月乃も続く。


「同意します」


その瞬間。


三人の間に、わずかな光が生まれる。


強くない。

むしろ、消えそうなほど弱い。


糸のような細い光が、蒼真と凛と月乃の間をゆっくりと結ぶ。


一気には繋がらない。


触れようとして、わずかに止まる。

確かめるように。


拒めば、すぐにほどける。


それでも——


もう一度、伸びる。


押し付けられていない。

引き寄せられてもいない。


ただ、自分の意思で“触れている”。


凛が息を飲む。


「……これ」


月乃が言う。


「強制ではありません」

「接続が、段階的に成立しています」


光は、揺れている。


完全じゃない。


だが——


切れていない。


そのとき。


外から、別の感覚が流れ込む。


一気に。迷いなく。


太い線が、無理やり重なろうとする。


揺れがない。ためらいもない。


完成された接続。


凛の表情が歪む。


「……違う」


月乃が即座に言う。


「干渉です。同意を経ていない接続」


強制共鳴の波が、三人を包む。


均一な圧。

心拍さえ、揃えようとする力。


蒼真は一歩前に出る。


止めるためじゃない。押し返すためでもない。


ただ——


三人の間にある細い光を、消さないために。


「……守る」


凛と月乃を見る。


「選択を」


波は強い。


三人の光は弱い。


だが——


揺れている。


その揺れが、消えない。


凛が、小さく笑う。


「……残ってる」


月乃が言う。


「同意が維持されています。完全上書きは発生していません」


蒼真は息を吐く。


勝ったわけじゃない。


だが——崩れていない。


それで、十分だった。


遠くで光が強くなる。


天城の選択は止まらない。


世界は、動き出している。


その中で。


三人は、立っている。


怖いまま。

それでも——自分で選んで。

読んでいただきありがとうございます。

「恐怖が消えること」と「選べること」、どちらを取るのかが今回のテーマでした。

次回「世界の停止」、平和の形が現実として現れます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ