GPS
アランがリビングでスマホの動画を見ていると、やって来たミランがテレビをつけてニュースを見始めた。
「大帝地所のマネーロンダリング疑惑、ニュースになってるよ」
「へ?」
ミランに話しかけられたアランは、動画から目を上げて間抜けな声を出した。
「隊長から聞いたでしょ?大帝地所と新政府が進めてる、ドームカントリー構想のこと」
「あー。そうだったな」
(そういや、班長達が難しい話してたな)
「大帝地所は、ナモスタンの企業と裏で繋がってたんだって。そんな会社が新政府絡みの事業をやっていいのかって追及されて、今国会は大荒れだよ。近いうちに、総選挙があるかもね」
テレビを見ながら、ミランが冷静に推測した。
◆
選挙カーに乗って、笑顔で手を振る青木。
ミランとともにぼんやりと歩いていたアランは、思いがけない青木の姿を見て、驚き固まった。
「え!あ、あれ、隊長?」
「隊長、衆議院選挙に立候補したみたいね」
「そうなの!?総理大臣になるってこと!?」
「···後で、選挙制度教えてあげる」
アランの言葉に、ミランが冷静に答えた。
「今度の選挙に、玄真のお父さんも立候補したんだって。二人とも、当選するといいよね」
「そうなの!?あの二人なら、当選確実だろ!」
アランは、楽観的な意見を口にした。
◆
教室の中でアランがぼんやりしていると、静かに教室に入ってきた氷子。アランを無視するかのように、目を合わせないまま席に着いた。
とぼけたフリをして窓の外を見ていたアランが、恐る恐る氷子の席をちら見した。
(あれから、何も言ってこないな···。逮捕されるかもってのは、考え過ぎだったかな)
◆
学校からの帰り道、ミランとともに歩くアラン。ミランのバッグから、マモルが顔を出した。
「学校、楽しかった!」
マモルが嬉しそうに目を輝かせて言った。
「ちょっとマモル!家に着くまではちゃんと隠れて」
「はーい!」
返事をするものの、隠れる素振りのないマモル。
「一日中家にいたって、マモルもつまんないもんなー」
理解を示すアラン。
そこへ、いきなり巨大なコウモリ達がやって来てアランの首筋に牙を向けた。
「アラン!」
驚くミラン。
咄嗟にコウモリを避けたアランは、そのままコウモリと格闘を始めた。
瞬く間に増える巨大コウモリ。大勢のコウモリに襲われ、傷だらけになるアランとミラン。
その様子を見たマモルが、手のひらで光の塊を作ってコウモリに向けて放った。驚き逃げるコウモリ達。
「同じ手には引っかからないぞ!」
アランは制服から素早くネクタイを外すと、コウモリの首に巻き付け、そこにスマホを挟んだ。
スマホを付けたまま、飛び立つコウモリ。
「ミラン、GPSで俺のスマホを追って!」
「オッケー!アラン、やるじゃん」
ミランはスマホを取り出し、コウモリの位置を確認しながら飛び上がった。
「この前襲ってきたコウモリ、みんな同じ方向に逃げて行ったからな。誰かが操っているとするなら、また来るだろうと思ってたんだ」
アランは、走りながら得意気に言った。
ミランとマモルは飛び、アランは走ってコウモリを追った。
◆
山の中、大きな木の下に集まる巨大コウモリ。その中には、長い髪の人物の背中が見えた。
アランとミラン、マモルは、コウモリを追いかけて山の中にやって来た。
「ミラン、行くぞ!」
蒼太にもらった剣を使い、アランはネクタイのついたコウモリに切りかかった。スマホを取り返し、そのままコウモリと戦うアラン。
ミランとマモルも、多数のコウモリと戦った。
アランはコウモリの中にいた人物に向けて、腕の針を放った。すると、髪が乱れて顔が見えた。それは、同じ学校のクラスメイト、氷子だった。
驚くアランとミラン。
「赤木さん!?どうして···」
言いかけたミランの前を、アランが走って氷子に近づいた。
氷子は、持っていた細い剣でアランに切りかかった。激しく応戦し合う、アランと氷子。
一瞬の隙に、アランは氷子の背後に回り込み、喉元に剣を突きつけた。
「動くな」
「脅してるつもり?ここには私の味方が100匹以上いるのよ。こいつを倒して!」
氷子が、コウモリに向けて言い放った。
巨大なコウモリ達が一気に襲いかかり、アランと氷子の姿はすぐに見えなくなった。
「アラン!」
ミランは慌ててコウモリ達を倒して進むが、コウモリの数が多過ぎてなかなか前に進めない。更にコウモリに腕を噛まれ、血が辺りに飛び散った。
マモルが助けに向かうが、多数のコウモリがマモルの羽根に噛み付いてきたせいで、マモルの左の翼が折れてしまった。
「いったーい!」
泣き出すマモル。
「マモル!アラン、ごめん···」
体中を噛まれ、ミランは意識が遠のいて行くのを感じた。だんだんと狭まる視界。
その時、アランを覆っていた多数のコウモリが、パッとアランから離れて行った。コウモリには、アランの体から放たれた無数の針が刺さっていた。
「お前、自分がやってることわかってるのか?コウモリの襲撃のせいで、クラスメイトが何人も死にかけたんだぞ!?」
アランは、怒りを含ませた声を氷子にぶつけ、叱った。
「だから何!?他人のことなんかどうでもいい」
バチン!
言い放った氷子の頬を、アランが思わず叩いた。
氷子は一瞬絶句した後、涙を流しながらキッとアランを睨みつけた。
「そんなに私が嫌いなら、殺せば!ママだって、あんた達に殺されたんだから!」
氷子の言葉に、アランは面食らって否定した。
「ママ!?おい待て、お前の母親なんて俺は殺してないぞ!」
「嘘つかないで!私の母親は榎本マリ、名前くらいは覚えてるでしょ?」
氷子の言葉に、アランはハッと息を飲んだ。




