決戦の行方
ラボの周辺には爆撃の跡があり、草木は焼けていたが、ラボは残っていた。
ゴンタとイリーナは地上に降り立ち、ラボに入ろうとしたところ、菅原が現れて二人を銃で撃った。
俊敏に動いて弾をかわすゴンタとイリーナ。しかし、足元に張られていた糸に足が絡まり、動けなくなる二人。
すると、今度は志穂がやって来て素早く二人を縄で捕らえた。
「何するんだっ!」
怒鳴り声を出すゴンタ。
「痛いわよ!」
怒りの表情を浮かべるイリーナ。
「こんな縄ごときで、俺は捕らえられんぞっ!」
ゴンタは両腕に力を込め、縄を吹き飛ばした。それを見越していた菅原が、素早くゴンタの眼前に銃を向けた。
「お前達、何者だっ!?」
ゴンタが菅原に向かって言った。
「俺達は獣衛隊、人類滅亡を阻止するために来た。今すぐ世界中のネズミを止めてヘイズを引き渡すというなら、お前達にこれ以上の危害を加えるつもりはない!」
菅原が言い終わると同時に、ゴンタが菅原の右手を蹴って銃を落とした。
ニッと不気味に笑ったゴンタが、笑顔のまま菅原の顔を殴り飛ばした。
イリーナをしっかりと木に巻き付けた志穂もゴンタ戦に参戦したが、銃の弾をはじかれ、腹を蹴られて遠くへ飛ばされた。
ゴンタは体勢を立て直した菅原を見ながら、薄笑いを浮かべた。
「そんな約束するわけねーだろっ。人類はなっ、このまま消える運命なんだよっ。地球はもう、ゲノマーのものだっ!」
ゴンタは言い終えぬうちに菅原の腹に蹴りを入れた。だが菅原はギリギリのところで避け、近くに落ちていた銃を取った。そしてゴンタの足を撃って言った。
「人類はまだ滅んじゃいないぞ!」
ゴンタは足にめり込んだ銃弾を、手の指でほじって取り出した。
(嘘だろ!?銃弾を取り出しやがった!班長の言う通り、ゲノマーは簡単には死なないようだな)
菅原は額に汗を浮かべた。
ゴンタは腰に手を当てて、叱るような口調で言った。
「人類が生きていられるのも今のうちだっ。お前達は、この地球を汚すことしかしないっ。だが俺達ゲノマーは違うっ。ドゥニアの科学力とゲノマーの愛があれば、地球は何万年でも輝く星でいられるぞっ!」
「人類を見くびるな!確かに、人類はすぐに失敗する。だが何度でも立ち上がる。その度に、強く、賢くなるのが人類だ。地球だって、いつか再生させてみせる!」
菅原はそう言いながら腰の剣を取り出し、素早くゴンタの首を切った。しかし、ゴンタは両手を使ってすぐに首を繋げた。
両者、互角の戦闘が続いた。
◆
広い草原を、爆速で走り抜けるウガ。その後ろを、大ネズミの大群が追いかけている。
「走れ、走れー!!」
自らを鼓舞するようにそう言いながら、ヘイズ達の側を走り抜けるウガ。
「なんだ···アイツ···」
消火の手を止め、走り抜けて行くウガを呆然と見つめるイザック。
「ネズミよ、こっちに来る!」
ケイラが悲鳴のような声を出した。
「え!···そう言うことかぁ!」
策略だと悟ったイザックは、やって来た大ネズミの大群を次々と倒し始めた。ケイラも一緒に大ネズミに剣を振るった。
大ネズミとともに、ゲノマー達に攻撃を仕掛けるアランとミラン、ユリカと風人。両者、総力戦となった。
ケイラは大ネズミとの戦いの中、『ピュー!』と指笛を吹いた。すると、どこからともなく数羽の翼竜と、ティラノサウルスに似た大型の恐竜が現れた。
「ベルル、ネズミの皮を被った奴らを倒して!」
「オッケー!ケイラ!」
ベルルと呼ばれた翼竜は、ケイラに向かって返事をした。
(あの翼竜、喋るのか!)
驚くアラン。
◆
大きな木の枝に隠れていた蒼太とガクは、アラン達に襲いかかる翼竜に向かって小型ミサイルを乱発した。
ベルル以外の翼竜が撃たれ、地面へと落ちて行く。
蒼太とガクのところへやって来た大型恐竜が、大きな口を開けて木の枝ごと蒼太を食べようとする。
サッと避けた蒼太が剣で恐竜の首を切りかかったが、首は硬く切れずにはね返されて飛ばされた。
ガクは地面へ着地すると、落ちて来た蒼太を両手で抱えた。
(ずっと、勝つことばかり考えて生きてきた。誰よりも強くなりたい、一番になりたい。それだけだった。でも今は違う。瞬や玄真の無念を晴らすために、人類の明日を守るために。俺は戦う。この奇跡の地球は、俺達が守ってみせる!)
ガクは蒼太を座らせると、ジャンプして恐竜の背中に飛び乗り、そのまま走ってジャンプし、恐竜の左目に銃弾を撃ち込んだ。
『アアアアァァ···』
恐竜は、叫びながらガクに噛みつこうと大きな口を開いた。
ガクの体に牙が迫ったその時、マモルが空中からミサイルのような衝撃波を放った。
突然の衝撃波に倒れる恐竜。
◆
ゲノマー達の側を走り抜けているウガに気付いたペイトンは、ウガ目掛けて銃を撃った。ウガは腕の筋肉で弾をはね返し、ペイトンに近付いた。そして銃を持つ右手の手首を掴み、ぐしゃりと曲げた。
すると、ペイトンの胸の辺りからヘビが頭を出してウガの右腕に噛み付いた。
「毒ヘビなど、俺には効かーん!」
ウガは左手でヘビの体を掴み、引っ張った。
「やめろ!ヴァァ」
叫ぶヘビ。
体勢を立て直したペイトンが、ウガの腹を思い切り蹴った。
「その声には、聞き覚えがある。お前、ウガだな?」
ウガが腹を押さえた隙に、ヘビはペイトンの胸の中に隠れた。
ウガはペイトンの手から銃を落とし、ペイトンと取っ組み合いの格闘戦となった。
「思い出したか。よぉ、ブラザー。なんでヘイズなんかの言うことを聞いてるんだ?このままだと、地球はネズミと恐竜の楽園になっちまうぞ?」
「人類によって灰の地球になるよりマシだ。人類滅亡後は、俺達ゲノマーが地球を支配する。ヘイズは、それを約束した」
「はっ!?気に食わない奴のことは、卑怯な方法で殺しまくるあのヘイズを、信用するつもりか?」
ウガとペイトンは互いに殴る蹴るを繰り返しながら、会話を続けた。
「ドゥニアは、いつまでたっても二酸化炭素とプラスチックをばら撒き続ける人類とは違う。俺は、地球を愛するドゥニアを信じる」
ペイトンがそう言い切ると、ウガは眉を寄せて渾身の力でペイトンの顔面を殴った。
その場に倒れて頭を打つペイトン。
「地球を愛する気持ちは俺も同じだ。だからこそ、トップには未来を任せられる奴を選ぶべきなんだよ」
ウガはそう言いながら、顔に怒りをにじませた。
◆
突然の戦闘に、踊っていた信者達は散り散りになって逃げ始めた。
「おい待て、待て!今年の獣乱祭は特別なんだ。これから素晴らしいフィナーレが待っているんだぞ!」
頭を抱え、パニックになりながら叫ぶヘイズ。
ゲノマー達がアラン達と戦う間に、森田がヘイズの下へとやって来た。もう少しでヘイズに届く、というタイミングで、一本の矢が森田に向かって放たれた。
剣で矢をはじく森田。そこへ、筋肉質で髪の長い女性ゲノマーのジェリーが現れた。
森田がジェリーと戦う間に、逃げるヘイズ。
森田はジェリーが見せた一瞬の隙をつき、剣でジェリーの右腕を切った。
「ぎゃぁぁ!」
ジェリーは、叫びながら左足で森田を蹴り上げようとした。森田はそれをひょいとジャンプして避け、ジェリーの腰を蹴っ飛ばした。
「悪いが、今はお前にかまってる暇はない!」
森田はジェリーにそう言い放ち、ヘイズを追いかけ走った。
ヘイズはヴィクトリア湖方面にあるドゥニア教のもう一つの施設へと入って行った。少し遅れて施設に入る森田。
すると、ヘイズが森田に向けて銃を撃ってきた。
弾を避けながらヘイズを追う森田。
ヘイズは「danger」と書かれた部屋に入ると、ロック装置を解除して不気味に笑った。そして、大きなスイッチを押した。
天井周辺に設置されていた機器が、ゴゴゴ、と不穏な音を出して動き始めた。




