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獣乱のゲノム  作者: 大野 響
ドゥニア編

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追憶

「それと、俺はコイツの父親を知っている」

 ウガの言葉に、アランと森田が息を飲んだ。

「だが、まずはコイツらの治療が先だな。ナスリン、捕らえた奴らも連れて来い」

「オッケー!」

 ナスリンはそう言って、ミラン達を連れてきた。

 ウガが主導となってアランと真歩の治療が始まり、車椅子に乗ったカルムも合流した。


「ウガ、実はもう一つ頼みがある。恐竜に殺された仲間の亡骸を、ここで弔ってもらえないか?」

 森田がウガに依頼した。

「EU軍の駐留地で襲われた奴だな?いいだろう、偉大なる大地は全てを受容するものだ」

 了承したウガ達により、玄真の墓が作られ、皆が手を合わせた。


 

 狭い室内で眠っていたアランは、ハッと目を覚まして起き上がった。

「もう動けるのか?」

 木製の簡易ベッドから降りて歩こうとするアランに、椅子に腰掛けていた森田が声をかけた。

「はい。俺の体、毒には耐性があるみたいです。前にヘビに噛まれた時も、次の日には治ってたし」

「そうか、それは良かった。小幡は···しばらく休む必要がありそうだ」

 森田は、隣のベッドで深い眠りにつく真歩をちらりと見て言った。真歩の横には、椅子に座ったミランもいた。


 そこへ、ウガが部屋に入って来た。

「起きたようだな」

「はい」

 アランは返事をした。

「ウガ、彼女の名前は篠原ミラン。アランの双子の妹だ。二人に、父親の話を聞かせてやってくれないか」

 森田がミランを紹介し、ウガに話を振った。

「ああ、そうだったな」

 ウガは空いた席に腰掛け、まぶたを閉じて過去を語り始めた。


――ウガの回想――


 Dr.シノハラの話をする前に、まずは俺とドゥニアの話をする必要があるだろう。ドゥニアは元々、地球の未来を嘆いた者達による、環境保護のための集会が発端だったと聞いている。

 彼らは環境破壊を食い止めるために、更なる科学の発展と教えが必要と考え、ドゥニアを創設した。

 ドゥニアでは、各国の倫理規定に触れるような実験も容認していた。おかげで世界中から研究者が集まり、科学技術も最先端のものとなった。

 だが、倫理を無視した科学はやがて暴走を始め、未知のウイルスを作成する者、人体実験を繰り返す者などが現れた。そのためEU内で問題視され始めたドゥニアは、その拠点をアフリカへと移して活動を再開した。


 俺が生まれたのは、そんな混沌としたドゥニアのラボの中だった。ドゥニアの研究者達の手によって誕生した俺は、人類以上の跳躍力を想定して誕生した『試験体』だった。

 ラボの中には、俺と同じように作成された試験体が何人もおり、『ゲノマー』と呼ばれていた。


 Dr.シノハラは、ドゥニアにいた研究者の一人で、俺達ゲノマーの教育係を兼任している男だった。

 事件が起こったのは、デクスター·ヘイズが教団のトップとなってすぐの頃だ。奴は環境保護のためには、人類が多過ぎるという主張を強め、近隣の独裁国家に生物兵器の販売を始めた。

 当然、ドゥニアで真面目に環境保護の研究をしていた者達と対立したが、奴はその真面目な科学者達を毒物で粛清したんだ。

 その事件をきっかけに、ドゥニアは一気に凶暴な組織となった。

 俺は仲間のゲノマーと、残っていたまともな研究者、Dr.シノハラ達と一緒に、ドゥニアを逃げ出した。


―――――


 過去を語り終えたウガは、少し疲れたような様子で顔を上げた。

「これが、俺が知っているドゥニアとDr.シノハラに関する全てだ」

「父さん、Dr.シノハラはどんな人だったんですか!?あ、えーと、英語だとなんて言うんだ?what···」

 アランが前のめりになってウガに尋ねてから、日本語が通じないことに気付いてミランに助けを求めた。

「日本語でも構わないぞ。俺は日本語が話せる。Dr.シノハラに教えてもらったからな」

 ウガが答えると、アランはホッと胸を撫で下ろした。

「Dr.シノハラは、研究熱心で穏やかな男だった。ゲノマーである俺達にも分け隔てなく接してくれたおかげで、通常とは異なる環境で育った俺達でも、人間らしい感情を身につけることができた」


(研究熱心で、穏やか···)

 アランは胸の内でウガの言葉を反芻した。

「ドゥニアから逃げ出したあと、ウガさん達はどうしたんですか?」

 ミランが質問した。

「逃げる途中で偶然知り合ったマサイ族が、力を貸してくれたんだ。俺達ゲノマーはまだ子どもで幼かったこともあり、そのマサイ族と一緒に暮らすことになった。Dr.シノハラ達研究者は、みんな自分の国へ帰ったはずだ」

「私の父、Dr.シノハラは、日本に帰国して結婚後に、行方不明になっているんです。ウガさんは、Dr.シノハラが日本に帰国した後のことはご存知ないですか?」

「行方不明?すまんが、帰国後のことはわからない。一緒に帰国したDr.エノモトならわかるんじゃないか?」

 ウガの言葉に、森田が反応した。

「Dr.エノモト!?もしかして、マリ·エノモトか!?」

「そうだ」

 森田の問いかけに、ウガが頷いた。

(防衛隊副隊長だ!!)

 アランとミランは、驚いて互いに目を合わせた。  


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