混乱
朝日の中家の外へと飛び出した子ども達は、畑に芽を出した沢山の野菜を見て喜んだ。
「やったぁ、今夜はごちそうだぁ!」
飛び跳ねる子ども達。
「まるでネズミが出る前に戻ったみてぇだ。これだけ野菜が育てられれば、食うもんにも困らねぇ。ネズミの皮は高く売れるし、これなら俺達も生きていける。恩に着るぜ、獣衛隊!」
中年男性Aが目を輝かせて森田に言った。
「10万ドルだ」
森田が中年男性Aの胸元に指を当てて言った。
「へ?」
「この村を再興させるためにかかった費用だ。いいか、よく聞け。俺達はこれから西に行くが、いつか必ずここに戻ってくる。必ずだ。その時に、もしまた子ども達が薬漬けになっていた場合、10万ドルの費用を倍にして払ってもらう。いいな!」
「か、金がなかったら?」
「その時はお前達の臓器を売らせてもらうさ」
「ひ、ひぇぇ」
震え上がる中年男性A。
(ドケチどころか、守銭奴だぁ)
ムンクの叫びのような顔をするアラン。
「じゃあな!出発するぞ」
菅原と志穂に向けて言う森田。
「はい!」
「ちょっと待て。お前達、本当に西に行くつもりか?」
中年男性Bが森田に聞いた。
「そうだ」
「この先はもう村も人もほとんどいねぇ荒れ野原だ。それにネズミはいつも西から来る。悪いことは言わない、西に行くのは止めておけ」
「俺達は、そのネズミを倒すために行くんだよ」
森田の隣にいた菅原が言った。
「正気かよ」
中年男性Bは青ざめて顔を引きつらせた。
トラックに乗り込んだ獣衛隊員達とカルム。
「獣衛隊さん、ありがとう!」
トラックに手を振る子ども達。村人達に見送られ、動き出すトラック。
トラックがしばらく走った所で、どんどん増え始める大ネズミ。トラックはネズミを避けながらどうにか進んでいた。
「ネズミが増えてきたな」
運転席の森田が眉をしかめた。
「ですね」
助手席に座る志穂が同意した。
「EU軍がいる基地までもう少しだ。とばすぞ」
森田はトラックを自動運転から手動に切り替え、スピードを出した。
「はい」
◆
アフリカ東部に近付き、急激に増える大ネズミ。車内からショットガンを撃ちまくる獣衛隊隊員達と、撃った弾がネズミに命中し、喜ぶカルム。
「なんなのよ、なんなのよ、このネズミの大群は!」
ガンを撃ちまくりながら、キレるユリカ。
「西から来るネズミの数が半端ないな。これじゃあ、EU軍と合流する前に弾が尽きるんじゃねぇか!?」
玄真が応じるように答えた。
「え、待って、弾が尽きたら俺達どうなんの!?」
焦る風人。
「その時は、剣で戦うことになるだろうな。だが、トラックを走らせながら戦うのは至難の技だぞ」
菅原が顔をしかめて答えた。
ネズミの大群がいきなりいなくなったと同時に、急ブレーキで止まるトラック。
「うわあっ!!」
トラックから投げ出されそうになる隊員達。
トラックの先は、崖のようになっていた。
「この崖を下れば、もうEU軍のはずだ!」
森田はそう言うとトラックを降り、崖の下を覗いて固まった。
「どうしたんですか!?」
志穂もトラックを降り、森田に声をかけて崖の下を見た。
崖の下には、壊れた戦車や兵士の遺体が散らばっており、壊滅状態になっていた。
「これは···ネズミにやられたんでしょうか?」
「EU軍が、ネズミ程度でこれほどの被害を受ける訳がない。とにかく、近くまで行ってみよう。まだ生存者がいるかもしれない」
「はい!」
森田と志穂は再びトラックに乗り込んだ。
◆
まるで敗戦後の戦場のようになったEU軍の拠点で、声もなく立ち尽くすアラン、ミランと獣衛隊員達。
かすかに動いた人影に向かって、走り出した森田。
「生存者発見、救助する」
森田の後に続くアラン達。
「おい、早く行くぞ!」
あまりの惨状に驚いているカルムの腕を引っ張る玄真。すると、突然崖の中から長い首が伸びてきて玄真とカルムに噛みついた。
鋭い牙が玄真の胸を貫く。足に牙が刺さった状態で、もがくカルム。
玄真とカルムを襲ったのは、ブラキオサウルスのように首の長い恐竜だった。
「ざっけんな!!」
玄真とカルムの様子に気付いたアランが、急いで引き返し、持っていた剣で恐竜の首をスッパリと切った。
恐竜の口から落ちる玄真とカルム。玄真は既に絶命し、カルムは重傷を負っていた。
首を切られたブラキオサウルスが倒れ、ドシーン、と大地が揺れた。
アランが玄真の下に走って行くと、一足早く見知らぬ男が現れてカルムだけ連れ去って行ってしまった。
「おい待て、嘘だろ!!」
驚くアラン。見知らぬ男の足は早く、カルムの姿はすぐに見えなくなってしまった。
突然のことに、混乱するアランと獣衛隊員達。
「コラー!ふざけんな!」
「待てー!」
風人とガクの声がする方へアランが振り向くと、盗賊らしき男達が獣衛隊のトラックに乗って逃走するところだった。
(どうなってるんだよ!!)
心の中で叫ぶアラン。




