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獣乱のゲノム  作者: 大野 響
ナモスタン編

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40/43

ヒロイン参上

 村にやって来た大ネズミは、街灯をなぎ倒し、机を壊して村人達の所に向かって来た。

 アランは、逃げ遅れて腰を抜かした子どもの下に来た大ネズミの目に、針を飛ばした。


 しかし、数本の針が飛んだだけだった。アランの体から出ている針の数も、まばらで短くなっている。

(まずい、昼間に力を使い果たしたせいで、もう針も出ない)

 

 森田は剣を持って飛び上がると、大ネズミの頭に剣を刺した。動きを止める大ネズミ。

 すると、近くにいたもう一頭の大ネズミがいきなりジャンプし、森田を食べようと大口を開けた。

(まずい!)


 森田が食べられそうになったその時、バキューン、と音がして、口を開けたまま大ネズミが倒れた。


「ヒロイン、参上!」

 獣衛隊トラックのルーフ部分に乗ったユリカが、決めポーズをして笑った。


 獣衛隊のトラックにはユリカの他に、志穂、菅原、玄真、風人、ガク、真歩、蒼太が乗っていた。


 ユリカ達はショットガンを撃ちまくり、あっという間に大ネズミを倒した。それから簡易な獣害用電気柵で村を囲った。

「これで、ネズミは簡単には入ってこれなくなりますよ」

 志穂の言葉に、喜ぶ村人達。


「アラン、ミラン、どうしたの?」

 仲間が来てもお構いなしに何か探している様子のアランとミランに、志穂が声をかけた。

「実は、マモルが見当たらないんです」

 不安そうに言うアラン。

「ええ!?」

 驚く仲間達。


 みんなで探し始めたところ、ふと空を見上げた風人が驚いたように声を上げた。

「あれ〜?マモル!?」

 なんと、マモルは羽根を広げて飛んでいたのだった。


「マモル、降りてきて!」

 羽根を怪我しているため飛べないミランが声をかけると、マモルは赤い顔でふらふらと降りてきた。

「ん?なんか酒臭いぞ」

 アランがマモルの顔を覗き込むと、なんとマモルは酔っぱらっていた。

「やだ、いつの間に!?」

 驚くミラン達。


「すぐに水を飲ませろ!」

 森田は、急いで村人からもらった水を飲ませた。それから村の医者にマモルを診せた。

「大丈夫、これなら1時間も休めば回復しますよ」

 医者の言葉に、ホッとするアラン達。



 村人に借りた部屋の中で、休息をとるアラン達。

「まったく、なんでこんな大怪我してるんですか!?言いましたよね?みんなが着くまで無茶するな、って」

 志穂が森田の耳のイヤホンを指差しながら怒った。

「あー。水川、言ってなかったことがある」

 森田は面倒くさそうに薄目を開けながら言った。

「何ですか?」

「俺は運がいい」

 森田は自信ありげに頷いた。

「はあ!?」

「まぁまぁ。班長のおかげで、炭疽菌をばら撒かれる前にナモスタンのスパイも確保できたんですから」

 怒る志穂を、ガクがなだめた。


「それにしても、まさかたった4人だけでナモスタンを制圧するとは。ドゥニアの裏切りがあったとはいえ、悪運が強いですね」

 菅原が呟くように言った。


「加治屋隊長から、マモルの自衛本能が発動した場合、ミサイル相当の威力があることは聞いていた。だからまぁ、どうにかなるかと思ってな」

 森田のあっけらかんとした表情に、アランは呆然とした。

(さすが班長、いろんな意味で強ぇ)


「では、加治屋隊長のご依頼通り、ドゥニアを攻めるんですね?」

 菅原が森田を鋭く見つめた。

「そのつもりだ。だが、加治屋隊長からは、俺達が倒すのはあくまで『獣が前提』だと言われている。ドゥニアの体制崩壊は、俺達の仕事じゃない。予定では、EU軍が先にアフリカ東部に展開することになっている。俺達はそこに合流して、獣を倒すだけだ」

「なるほど。獣衛隊は、あくまで獣狩りに徹するということですね。確かにそれであれば、軍を率いた戦争ではなく、法に触れることもない。獣討伐の国際協力ということで、各国の理解も得られますね」

 志穂が感心したように言うと、森田が頷いた。


「加治屋隊長の狙いもそこにある。今回のナモスタン制圧も、ドゥニアの裏切りによるもので、日本は何も関わっちゃいないと公表されるだろう。この国を今後変えていけるのは、この国に住む者達さ」

 森田の言葉に、志穂と菅原が頷いた。


「あの、それじゃあ、これからみんなでドゥニアに行くということでしょうか?」

 話し合う3人に、ミランが声をかけた。

「そうしたいと思っている。だが、これはあくまで俺が引き受けた依頼だ。お前達を強制するつもりはない」

 森田がミラン達に向けて言った。

「それなら、アランにも、みんなにもちょっと聞いて欲しいことがあるんです」

 ミランが、思い切って話を切り出した。


 ミランは、母親から聞いた父の話を仲間に聞かせた。

「ミラン、そういうことは先に教えてくれよ」

 アランは、初めて知った父の話に驚いて動揺した。

「ごめん、まさかお母さんの昔話が、こんな大ごとになるとは思わなくて」

 ミランは素直に謝った。


「じゃあ、ドゥニアに行けば、アランとミランのお父さんに関する手がかりも、掴めるかもしれないってことね」

 志穂が納得するように言った。

「だが、15年以上前の失踪事件だぞ。既に国も文明もないと言われているアフリカ大陸で、まともな情報が得られるとは考えにくい」

 菅原が難しい顔をした。


「わかってます。だから、父を探すためにアフリカに長居するつもりはありません。ただ、父が住んでいたかもしれないアフリカの現在(いま)を知ることができれば、それで充分です」

 ミランは自分に言い聞かせるように言った。


(父さんは、ドゥニアの存在を知っていたのか···)

 初めて聞いた父の情報に、アランは一人考え込んだ。


「俺達はドゥニアに行って獣を倒し、ついでにアランとミランの父親についても探るってことか。よーし、やってやるぞ!お前らも、もちろん行くだろ!」

 玄真が、仲間を鼓舞するように拳を突き上げた。

「もちろん!」

 アラン達の声が揃った。


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