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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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壊滅する軍隊

今更ですが、アラン以外全員英語が話せる設定です。(ナモスタンも、これから出てくる国も公用語は全て英語、という設定です)

 ドドーン!ドドーン!

 ロケット砲によって爆破されたミサイルが、辺りに複数の爆音と凄まじい爆風を発生させた。 

 辺りに散らばる戦車や装甲車の残骸。複数のナモスタン軍の隊員が死傷しており、その場に倒れていた。


追い打ちをかけるように、大ネズミが負傷して地面に倒れた隊員を食べている。


 空港には、コロシアムから逃げた観客達が殺到して飛行機に乗り込んでいた。しかし、その飛行機も雲間から撃たれたロケット砲によって木っ端微塵に吹き飛ばされた。


「グラム様、戦車100台以上、ミサイルを搭載していた車輌も50台以上が破壊されています。もう、軍隊は壊滅状態です」

 爆風から逃げてきたナモスタン軍の隊員が、グラムのところまで来てそう報告し、その場に倒れた。


「クソー!軍が、俺の金をつぎ込んだナモスタン軍がぁー!」

 両手を握りしめ、わなわなと震えるグラム。

「ペイトンの奴、許せねぇ!」

 後藤はその場で地団駄を踏んだ。


 ナモスタン軍の隊員が大ネズミによって多数食われたところで、大ネズミは西へと戻り始めた。


「もしかしてー」

 とゲルドゥ。

「もう終わりー?」

 とゲルトロー。

「おい、俺を助けろよー」

 とゲルアン。

 ゲルアンはロケット砲によってボロボロになっていたが、まだ死んではいなかった。

 ゲルドゥとゲルトローに助けられ、ゲルアンも起き上がった。



 ミサイルによる爆風が収まったところで、アラン達は再び窓の外へ視線を向けた。

「最初から、軍の壊滅が目的だったか」

 負傷兵を貪る大ネズミ達を遠目に見ながら、森田が言った。

「あ、ゲルアンが起き上がった!」

 ミランが驚きながら言った。

「嘘だろ?砲弾をまともに食らったはずだぞ」

 アランも驚き、開いた口が塞がらない。


「もしかして、あの3人はマモルと同じ、遺伝子操作された子どもなんじゃない?兵器転用を想定して作られたなら、生き返るような再生能力があってもおかしくないよね」

 ミランが言うと、アランは納得したように頷いた。

「そっか、きっとそうだ」

 アランとミランは目を合わせて頷きあった。


 倉庫の外では、さっきまで静まりかえっていた近隣の家屋から、わらわらと住民達が外に出始めた。

「おいおい、今のは何だったんだ?」

 と男の声。

 西へと戻り始めた大ネズミを指差す子ども。

「ママ、ネズミがもう帰って行くよー!」

「宮殿がボロボロだぞ。こりゃ、グラムはもう死んだんじゃないか?」

 グラムの宮殿跡地を眺める初老の男。

 

 住民達の動きに気付いた森田は、低い声で呟いた。

「まずい、まだ出てくるな」



 大ネズミの大群は、波が引くように、西へと戻って行く。

 壊滅状態の軍を前に、頭を抱えて嘆くグラム。後藤とレイラは、呆然としてその場に立ち尽くしていた。

 グラム達の側で、暇そうに鼻をほじり始めたゲルアン。尻をかくゲルドゥ。伸びをするゲルトロー。


 住宅街から出てきた住民達が、興味深げにグラム達を眺めていることに気付いた後藤が、慌てて大きな声を出した。

「おい、見世物じゃねーぞ!」

「ゲルアン、あいつらに攻撃しろ!この国で偉いのは俺だぁ!!」

 軍隊の壊滅で体制の崩壊を恐れたグラムが、ゲルアン達に命令した。


「はーい!」

 と元気に答えた3人は、住民達の下へ走るといきなり一人の男の頭を力ずくで首から切り離し、頭をボールにして蹴り始めた。

「キャーッ!」

 と響く悲鳴。

 ゲルアン達は、頭のボールを女性や子ども、老人などに手当たり次第ぶつけ、その場にいた住民達を楽しそうに殺し始めた。


 倉庫の中で眉をしかめる森田。

 外へ出ようとすると、ダリヤが声をかけた。

「どこに行くの?」

「住民達を助けに行く。一般人には危険だ。ここにいろ」

「わかったわ」

 ダリヤは頷いた。

「班長、僕らも行きます!」

 アランとミランは目配せをして頷いてから森田に言った。

「ちょっと待って、あいつら、絶対まともじゃないよ。みんなここで様子を見よう。助けに行ったりしたら、君達まで殺される」

 カルムが慌ててアラン達を止めた。


「被害者にとっては、傍観者は加害者と同じだ。俺の知るバーン首相は、民衆のために力を尽くしていたはずだが」

 森田はカルムを一瞥してから、倉庫にあった牧草フォークを武器の代わりとしてミランに渡した。

 ハッとした様子で、その場に固まるカルム。

 

「マモルはここにいよう。あいつら、マモルを狙ってたから危ないよ」

 ミランはマモルを倉庫に置いて行こうとしたが、マモルはミランにしがみついて離れなかった。

「やーだ!行ーく!」

 マモルは駄々をこねるように首を横に振った。

「マモルも連れて行こう。マモルには、特別に強化された自己防衛本能があると聞いている。簡単には死なないはずだ」

 森田は倉庫から歩き出しながら言った。

「わかりました。マモル、無茶なことはしちゃダメよ」

「うん!」

 ミランに言われ、マモルは嬉しそうに頷いた。

 ミランは倉庫の中にロープがあるのを見つけると、自身の背中にマモルを結んだ。

「あ、そうだ!班長、このイヤホン、すごい役に立ちました!もしかして、ここに来ることがわかってたんですか!?」

 アランはイヤホンのことを思い出して聞いた。


「···後で話す。生きて戻ってこれたらな」

 森田は一瞬だけ笑みを浮かべると、住民達の下へと走り出した。


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