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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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32/42

逃走

スパイの男は、諸事情で女スパイ「林レイラ」に変更しました。

 監獄の中、一人で爪を噛むミラン。

 ふいに、何かがこちらに向かってくる足音が聞こえた。

(あれ、この足音、聞き覚えが···あ、ネズミだ!ネズミが来る!)


「ここを開けて!早くしないとネズミが来る!」

 大ネズミの襲来に気付いたミランは、動画を見ている看守に向かって言った。

「ネズミぃ?ここはグラム様の宮殿だぞ。超音波システムでしっかり守られてるんだから、そんなもん来るわけねーだろ!」

 看守はミランの言葉を信じることなく、動画を見続けた。

 看守の言葉に、ミランはハッとした。

(超音波システム?ネズミを呼び寄せるだけじゃなくて、侵入させないためにも超音波が利用できるんだ!)


 どんどん大きくなる足音。その足音から、ミランはネズミが大群であることに気が付いた。

(ものすごい数の足音だ···きっと大群が来る。この建物自体、壊すつもり!?)


 宮殿が揺れ始め、大ネズミが本当にやって来た。看守がいきなり現れた大ネズミから慌てて逃げようとしたが、ミランの目の前で食い殺された。

 通路を走って行く、たくさんの大ネズミ。

 数頭の大ネズミが、鉄格子の中のマモルとミランを食おうと、鉄格子に向かってそれぞれ突進してきた。

 青ざめるミラン。

(どうしよう、武器がない!このままじゃ殺される!)


 大ネズミが鉄格子に突進する音が、ガーン、ガーンと監獄内に響き渡る。徐々に変形する鉄格子。

 鉄格子の隙間には大ネズミの鼻先が入り、突進する度にどんどん大ネズミの顔まで中に入ってきた。

 ミランは、震えて監獄の奥の壁まで後ずさりし、もう後がない。


 その時、音の大きさにマモルの耳がピクリ、と動いた。と同時に、マモルを食おうと突進していた大ネズミが鉄格子を破ってマモルに食いついた。


 バーン!という爆発音とともに、大ネズミは粉々になって辺りにその断片と血しぶきが飛び散った。


 ミランに向かっていた大ネズミも、とうとう鉄格子を破って監獄内へと入ってきた。

「いやぁ!」

 ミランは思わず叫び声を上げた。

 すると、ミランの目の前で大きな口を開けた大ネズミが、バーン!と爆発した。


 立て続けに、何度か起こる爆発音。それによって、ミラン達のいる監獄の周りにいた大ネズミは皆息絶えた。

 ミランは、恐怖でその場にへなへなと座り込んだ。

「ミラン、ダジョーブ?」

 すっかり目が覚めたマモルが、よちよちと歩きながらミランに近付いてきた。

「う、うん」

 コクン、と頷くミラン。

(危なかった···)

「マモル、ありがとう」

 マモルを抱きしめるミラン。


 大ネズミの大群が押し寄せたことと、マモルが周辺を爆発させたことで、軋み始める宮殿。ガタガタ、という音があちこちから聞こえ始めた。

(まずい、ここから出なきゃ)

「マモル、行くよ」

ミランはマモルをしっかりと抱きしめながら、監獄の通路を走り出した。



 カルムと二人、監獄を出て走るアラン。

 監獄の通路を抜ける途中で、先ほどデニスやエリックに追いかけ回されていた少女が閉じ込められているのが見えた。その監獄の中には、他にも十代前半と見られる少女達が監禁されていた。

 アランは怯えた様子の少女と目が合うと、急に立ち止まって腕から針を出した。

「どうした···あ、彼女達を助けるんだね!」

 カルムはすぐに状況を理解した。


 アランは頷きながら、鉄格子を切り始めた。

 アラン達の目的がわからず、震え上がる少女達に、カルムが話しかけた。

「ネズミが来てる!一緒に逃げよう!」

 何本かの鉄の棒が取れ、人が通れるようになると、アランとカルムは少女達を手助けして全員を監獄の外に出した。


 と同時に、大ネズミがやって来た。

 アランは鉄格子から取れた鉄の棒を右手に持ち、大ネズミに立ち向った。

(鉄の棒じゃネズミの首は切れない。なら心臓を一突きだ!)

 アランは切れ味がよくなった腕の針と鉄の棒で、やって来る複数の大ネズミを一人で倒し続けた。

(ドローンやワニと闘ってきたおかげで、もうネズミは怖くない。これくらいなら、俺一人で全部倒せる!)

 

 アランの奮闘により、周囲の大ネズミを倒しきると、アランは急いでカルム達の下へ向かった。



 観客席の合間を抜け、やって来る大勢の大ネズミを倒す森田。


 一方、観客席から一足早く逃げ出した後藤とレイラは、宮殿の奥で大量のシュークリームを貪っているボハ·グラムに向かって叫んだ。

「グラム様、大変です!ネズミの大群がやって来ました!」

 目が点になるグラム。

「ネズミ?そんな報告来てないよ。監視カメラだって、何も映ってないし」

 グラムが指差した方向には、複数の監視カメラのモニターがあった。

「もしかして、この映像はフェイク画像では?」

 レイラはモニターを凝視して言った。

「フェイク画像!?そんなバカな」

 眉をひそめるグラム。

 よく見ると、モニターの一つに映る映像の一部が歪んでいた。

 その時、大ネズミの大群がやって来る音が宮殿に響いた。

「まずい、とにかく逃げましょう!」

 焦る後藤。

「ちょっと待て!こんな時のためにコイツがいるんだよ!」

 グラムはそう言って、部屋の隣のドアを開けた。


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