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獣乱のゲノム  作者: 大野 響
ナモスタン編

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29/43

ナモスタン

前エピソードを少し修正して、アランは英語翻訳機能のついたイヤホンをつけています。

 飛行機の中で、アラン、ミランとマモル、森田は眠っていた。

 アラン達が身に付けていた剣や銃といった装備はいつの間にか外され、手首はそれぞれ拘束されていた。

 

 飛行機の操縦席では、ガスマスクをつけた操縦士二人が話し始めた。

「ねぇ、なんで森田まで連れて行かなきゃならないの?こいつ嫌いなのに」

「次の作戦の邪魔になるからだ。木更津基地だって、森田さえいなけりゃ制圧できたはずだからな」

「あー、明日は霞が関だっけ?さすがに炭疽菌ばら撒いたら、日本も終わりね」

 操縦士の一人が憐れむような口調で言った。

「おい、見えてきたぞ。ナモスタンだ」

 二人の会話はそこで終わり、機体は着陸態勢に入った。


「おい、起きろ」

ガスマスクをつけた操縦士Aは、そう言ってアランの顔を思い切り蹴った。

 蹴られた衝撃で、アランはぼんやりと目が覚めた。そして、自分が拘束されていることに気が付いた。

「痛っ!ん···?」

 アランは操縦士がガスマスクをして銃を持っていることに気付き、目を見開いた。

(ガスマスク!コイツは誰だ!?)

 アランが周囲を見回すと、既に起きていたらしい森田、ミランと目が合った。

 森田とミランはガスマスクの操縦士二人に反抗することもなく、従っている様子だった。

 まだ眠っているマモルは、ミランから引き離され、ガスマスクをつけた操縦士Bが抱えていた。


(まずい、まずいぞ。どうなるんだ!?)

 アランが焦っていると、操縦士Aが飛行機のドアを開けた。

「ほら、歩け」

 操縦士Aがアランの背中を蹴った。

 操縦士Aに背中を蹴られ、アランは仕方なく機内の外に出た。


 飛行機が降り立ったのは、遠くに砂漠が広がる、小さな空港のようだった。

 周囲には、まるでアメリカのようなヤシの木と家屋が並んでいる。その奥には、宗教的な雰囲気を備えた大きな宮殿のような建物があった。 

 飛行機の外には、銃を構えた複数の男がアラン達を出迎えていた。

 アランは逃げ出せないかと両手に力を込めたが、その様子に気付いた森田が、やめておけ、と言うように首を横に振った。


 飛行機の外に出た操縦士Aは、ガスマスクを外した。それは、獣衛隊の後藤隊長だった。

そして、同じくガスマスクを外した操縦士Bは、森田とアランが獣衛隊の訓練場で捕まえたはずの林レイラだった。

 驚くアランとミラン。

「おい!ここはどこだよ!」

 アランが後藤に向かって大声で言った。

 アランの口元に銃を突きつける後藤。

「この状況でよくそんな口が聞けるな。クソガキ」

(クッソ!)

 銃を前に、それ以上のことが言えないアラン。

(こいつら、どこに行くつもりだ?班長はなんで黙って従ってるんだよ)

 アランは悔しさで唇を噛んだ。


 男達に連れられ、アラン達は空港から大きな宮殿へと歩いた。

 宮殿の中に入ると、大広間で白人の男·エリックと黒人の男·デニスが必死に逃げ回る少女を追いかけ回して遊んでいた。 

「おい、戻ったぞ」

 二人の男に、英語で話しかける後藤。

 後藤に気付いた二人の男は、逃げていた少女を衛兵に任せてアラン達の方へとやって来た。


「おお!羽根つきの女の子じゃないか!こりゃ楽しみだなぁ」

 嬉しそうに両手を擦り合わせるエリック。

 青ざめて体を背けるミラン。

(ん?なんでだ?英語と日本語が聞こえる?あ、班長が左耳に入れたイヤホンが英語を日本語に翻訳しているんだ!)

 アランは、森田が装着したイヤホンの意味に気付いた。


「で、人類兵器ってのはコイツか?」

 デニスがアランの頭の上に手を置いた。

「違う、違う。こっちだ」

 後藤がマモルを指差した。

「この赤ん坊が?ずいぶん頼りないなぁ」

 デニスが心配そうな顔つきになった。

「仕方ないだろ。あんまり大きくなっちまうと、言うことを聞かせるのも大変だ」

「それもそうだな。で、いつまで寝かしておくんだ?ドゥニア殲滅戦は3日後だぞ」

 デニスが聞いた。


 デニスが『ドゥニア』と言ったことに気付いて、ミランはドキン、とした。

(今、ドゥニアって···)



「明日には起こすさ。それまでは、追加の麻酔薬で眠らせておくつもりだ」

 後藤が答えると、アランはゴクリと唾を飲み込んだ。

(コイツら、マモルを戦争兵器として利用するつもりなんだ!)


「このデカい男はどうするつもりだ?邪魔なだけじゃないか。なんで殺しておかなかったんだよ」

 エリックが面倒くさそうに森田の髪の毛を掴んで引っ張った。

「そいつは今夜の余興のお供さ」

 後藤が薄笑いを浮かべた。

「ああ、余興のためか。よしよし、まあせいぜい頑張れよ」

 エリックは、納得した様子でへらへらと笑いながら森田の背中を蹴った。



 監獄に入れられ、鉄格子の前で悩むアラン。すぐ近くには、看守が銃を持って立っている。

(このイヤホンを俺に付けたってことは、班長は外国に連れて行かれることを想定していたってことなのか?それなら、飛行機に乗り込む前に手を打つべきだったのに。この状況、どうやって抜け出せばいいんだ)

 アランは考えに行き詰まって大きなため息をついた。


「無駄だよ。ここからは出られない」

 アランの背後から、男の声がした。


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