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日本鉄道分割民営化

 1987(昭和62)年4月1日、日本鉄道が分割民営化された。1949(昭和24)年6月1日に発足して以来、38年間の日本鉄道の歴史に幕を閉じた。

 政治介入に労使問題、それによって積み上がった累積債務問題。これらを解決するため、遂に分割民営化となった。


 幾つものテレビ局が民営化する日鉄のイベントを放映した。全国の駅や車両基地で行われるイベントの様子が全国にテレビ中継される。テレビ画面からは民営化への期待と消える日鉄への惜別の念が入り混じったものが滲み出ていた。

 公営企業の民営化で、大々的にイベントが行われ全国にテレビ中継されるのは異例で会った。これまでにも電電公社や専売公社などの民営化が行われた。ここまでの大規模なイベントが行われる訳でもなく、ましてやテレビ中継される訳でもなかった。それは後に完全民営化する大和航空も同様であった。それだけ民衆の生活の中で日鉄の存在感が大きかったことが伺えた。

 

 分割民営化前にストライキやテロが度々発生した。その中でも、最大のものが極左テロ集団「労働革命委員会」による日鉄同時多発ゲリラ事件である。

 1985(昭和60)年11月29日に首都圏と西日本の8都府県下33ヶ所で、日鉄の通信設備や変電所を破壊し、電車運行が麻痺した。更に100人余りの極左テロ集団が総武線浅草橋駅を襲撃し、火炎瓶で駅舎を放火した。そして浅草橋駅の放火で46人が逮捕される。中に国家公務員2名、地方公務員2名、国鉄職員2名が含まれていた。

 この一連のテロ事件により、乗客1,000万人が影響を受けることになった。当然、一般国民は、これらのテロ行為を行う極左に対して反感を持つようになり、日鉄分割民営化を更に支持するようになった。

 また表向き分割民営化に反対していた日本労農党も極左テロ集団「労働革命委員会」を強く非難した。労農党にしてみれば、こんな事件で自分たちも社会の敵と認識されたくはなかった。


 こうして混乱はありながらも、日鉄は分割民営化を迎えた。分割継承された事業法人が以下の通りである。

 ・日本鉄道清算事業団

 ・北海道鉄道輸送株式会社(NR北海道)

 ・東日本鉄道輸送株式会社(NR東日本)

 ・西日本鉄道輸送株式会社(NR西日本)

 ・四国鉄道輸送株式会社(NR四国)

 ・九州鉄道輸送株式会社(NR九州)

 ・日本貨物鉄道輸送株式会社(NR貨物)

 ・財団法人輸送技術総合研究所(NR総研)

 ・輸送情報システム株式会社(NRシステム)

 ・輸送通信株式会社(NR通信)


 日本鉄道は清算業務の会社である日本鉄道清算事業団とそれ以外の実際の事業を行う会社に分けられる。日本鉄道清算事業団(以下、事業団)は長期累積債務償還や余剰人員の再就職斡旋などの清算業務に専念する。

 これは企業再生でよく用いられる手法である。実際に事業を行う会社(以下、グッドカンパニー)と清算のみの会社(以下、バッドカンパニー)に分ける手法は企業再生でよく用いられる。グッドカンパニーの経営体質を改善させるため、バッドカンパニーに債務や余剰人員などの負の要素を押し付ける。事業団は、そのバッドカンパニーであった。


バッドカンパニーである事業団には、様々なものが押し付けられた。以下は、その一例である。

・日鉄累積債務

・三島(北海道・四国・九州)の経営安定基金(赤字が想定される三社の赤字補填する)

・旧国鉄職員等への年金

・NR各社に引き継がれなかった鉄道車両の処分


 総額32兆1,100億円に上る、これらの債務の7割近い22兆1,700億円を事業団が引き受けた。そして余剰人員9万3,000人を引き受けて、再就職の斡旋を行うことになる。


 本州2社のNR東日本とNR西日本は残り日鉄累積債務の9兆9,400億円の債務返還をすることになる。引き受ける内訳は、NR東日本が4兆4,730億円、NR西日本が5兆4,670億円である。NR西日本の負担額が大きいのは、ドル箱路線である東海道・山陽新幹線を有しているためであった。


債務返済以外にも本州2社には、次の使命が与えられた。

・早期に黒字体質して、株式上場を目指す。(上場して事業団が保有する本州2社の株を売却し、債務返済に充てる)

・原発新幹線の建設

 

 この黒字体質と原発新幹線の建設は、矛盾するものであった。そもそも原発新幹線は採算性に問題があることが多いかったからである。

 ただ、その点については、これまで通りに政府と電力会社が出資することで本州2社の負担を下げることで、原発新幹線の採算性が取れるようにした。こうして、秋田新幹線や北陸新幹線の建設は、民営化時点でほぼ確定した。

 しかし、これは民営化の理念に反するものであった。大体、政治介入を阻止することが目的の一つであるにも関わらず、原発新幹線については例外とされたからである。結局、オイルショックの恐怖が例外を正当化させた。

 その代わり、この無理筋な使命を達成するためであれば、本州2社は廃線などの経営判断を自由に行って良いとなった。


 NR北海道・NR四国・NR九州のいわゆる三島会社には経営安定基金が設けられた。内訳は以下の通りである。

 ・NR北海道 6,822億円

 ・NR四国  2,082億円

 ・NR九州  3,877億円

合計1兆2,781億円が事業団から供出され、その運用益を持って赤字分を補填することになった。


 労使問題としては、日鉄労組が強く求めていたストライキ権も日鉄の民営化によって手にすることが出来た。日鉄は公営企業によりストライキ権がなかった。そのため日鉄労組はストライキ権を手にするため、大規模なストライキ権奪還ストライキ(以下、スト権スト)を繰り返し起こした。それが民営化によって、悲願のストライキ権を手にするようになった。


 東郷は従前からの内々定通りにNR西日本の副社長に就任した。将来、社長になることもほぼ確定であった。

 そんな東郷であったが、いくつもの課題が待ち構えていた。原発新幹線と京橋のOMCの便宜である。更に難波旧貨物駅再開発そして、何より大阪駅の新幹線ホームの改善であった。

 東郷は社長になることがほぼ確定はしていた。しかし社長就任前に副社長として、これらの課題解決の方向性をつけることが社長就任の条件、いわば試験であった。

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