球団身売り
東郷が話始めた。
「僭越でありますが、三好社長に提案があります」
「提案ですか」
三好は訝しく東郷を見る。東郷は意に介さず話を続けた。
「日鉄の民営化後にはなりますが山海電鉄様と弊社日鉄で、なにわ筋線を共同で建設します。更に梅田旧貨物駅の北側にビル一棟分の土地が空いております。それを有償譲渡します。そこにビルを建てて頂ければと思います」
三好は驚くこともなく、話を進めた。
「随分と大胆な話をされる。なにわ筋線について大阪市は承諾したのですか」
そこに迫水はすかさず割った
「それは砂岡が電話で説得しました」
三好は迫水を瞥見して
「流石、砂岡先生ですな。しかし、電話一つだけでは大阪市も納得していないでしょう」
と、訝しげに返した。
山海電鉄の梅田進出は悲願ではあったが、大阪市の度重なる妨害に遭っていた。大阪市としてはドル箱路線である御堂筋線の利用者が山海に取られることを懸念した。何より市としては都市開発での私鉄の影響力を排除したいという思惑があったからである。それを幾ら有力政治家である砂岡を以てしても、電話だけで承諾するとは思えなかった。
これに対して東郷が答えた。
「弊社の難波駅と旧貨物ヤードの敷地を使って、大阪市と共同出資による第三セクターで商業ビルを造ります。その三セクの会社の社長や役員を大阪市の天下りをさせます」
「なるほど、抜かりはありませんな」
三好は感心した様子で聞いた。そして三好は話を改めて話を進めた。
「梅田のビルについては、実際見てみないと分からないが、多分難しいですな」
「それは」
東郷が軽く訊ねた。そこで三好はあっけらかんと
「ファルコンズを売って、球場を潰して高層ビルを建てます。そのため、とても梅田の土地は買えそうにないのですわ」
ここ数年最下位続きで、赤字続きでもあった球団山海ファルコンズの身売りが噂されていた。しかし、これまで表向きでは山海電鉄は身売りを否定し続けていたため、この三好の発言は一同を驚かせた。
「ファルコンズを売るのですか」
石山が驚きながら訪ねた。それに三好は答えた。
「ええ、そうです。まだ秘密なので内密でお願いしたいのですが、まあ、そういうことです。球団より高層ビルの方が儲かりますからな。何より今度空港が出来れば、難波が空の玄関になる。それを当て込んで球場の跡地に高層ビルを建てようということです」
「そうなると、ワシのビルと競り合うことになるな」
竹上は余裕の表情を浮かべて言った。
「そうでもないでしょう。京橋には新幹線の駅が出来るようではありませんか。流石に新幹線には勝てません」
三好も余裕の表情を浮かべて言った。
「それで山海さんとしては、納得して貰えましたかな」
と、竹上が念を入れて確認してきた。
「ここまで、お膳立てされたら納得しないわけにいかないでしょう。それで納得します」
三好はなにわ筋線で納得した。そして話を続けた。
「ところで気になることがあるのですが、その新幹線の建設費はどうされるのでしょう。さしずめ原発の見返りですかな」
この三好の問いかけに竹上は、あっさりと答えた。
「まあ、その通りです。政府と電力会社が出資しての話です。何せ和歌山県に3つも原発が建設されるのですから、その見返りは膨大になる。ワシのビルは、それに便乗するという訳ですわ」
「ああ、なるほど」
と、三好は納得したよう返事をした。そして三好は本気のような冗談のような口ぶりで、
「竹上会長、一層のことファルコンズを買いませんか」
と、竹上に球団に売り込みを掛けた。それに対して竹上は、
「ワシは、もう無理やで」
と、球団購入を断わった。




