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 海洋調査により埋め立て工法が検討された。埋め立て予定地の海底は水分を大量に含んだ軟弱地盤で、そのまま埋め立てると早晩地盤沈下してしまうところであった。

 そこでサンドドレーン工法が検討される。これは軟弱地盤に砂を注入して軟弱地盤の水分を抜くというものである。軟弱地盤内に夥しい砂の柱を注入することになるため、大量の砂が要求された。

 直径40cm、長さ20mの砂杭を100万本打ち込まなければならなかった。サンドドレーン工法は1952(昭和27)年より行われていたが、ここまでの規模は前代未聞であった。


 問題は大量の砂であった。日本には建設で使用する砂が枯渇しつつあった。そのため、空港建設に使う砂を海外に求めなければならなかった。そこで日本労農党の関連会社からの砂の購入であった。

 この労農党から砂を購入する話は意外な男による提案であった。それが運輸省元事務次官で大阪湾国際空港株式会社の三枝である。これに石山は大いに驚いた。

「まさか三枝さんがそんな裏工作めいたことを提案したときは驚いた。それまではエリート街道のボンボンと思っていたのでね」


 石山が把握している話では、どうやら日本労農党の最高幹部の一人で砂ビジネスに携わっていた糸井一郎から話を持ち掛けられたようであった。

 日本労農党は表向き共産主義社会実現を目指しており、活動資金は寄付や機関新聞の購読料で賄っていた。しかし、それだけでは資本主義国内で生き残ることが難しいため、労農党は商売に手を染めていた。


 その一つが砂ビジネスであった。労農党と友好関係にある共産主義国である北朝鮮から砂を仕入れて韓国に運搬して売るビジネスをしていた。

 販売が日本でなく韓国だったのは、日本では公安警察や海保の監視警戒が厳しかったからである。それで大規模な物資輸送が出来なかった。それに対して、韓国は北朝鮮からの砂の輸入に対して監視が甘かった。

 当時、韓国は著しい経済成長をしており建築需要が高まっていた。そのため建築に用いる砂の需要が急増していた。そこで韓国政府は北朝鮮に金が渡ることにはなるが、致し方なしとして北朝鮮からの砂の輸入を黙認していた。糸井は、これに便乗したのである。


 このとき日本労農党は日本の廃タイヤチップを北朝鮮に提供することで、砂ビジネスに食い込むことに成功した。もちろん仲介をしている日本労農党は両政府の交換に賄賂は送っていた。

 北朝鮮にしても外貨稼ぎで将来日本への砂の輸出を考えていたこともあった。そのため、敢えて北朝鮮が直接する韓国と取引せず、日本労農党を介して韓国との取引を任せることとなった。尤も南北ともに緊張している者同士が、顔を合わせて裏取引は難しいという事情も手伝ってのことである。


 そんな労農党にすれば、砂ビジネスにおけるアジア最大の市場である日本参入は悲願であり、虎視眈々と狙っていた。そして大阪湾国際空港建設を日本市場参入の突破口とした。空港建設を大義名分に公安警察や海保の監視をなくさせて、空港建設後も自由に大量に砂を輸入するルート確立しようとした。


 そこで糸井は旧制第一高等学校で同級生だった三枝に近づき、砂の話を持ち掛けた。その際に糸井は条件として、日鉄分割民営化や原発推進について表向き反対はするが本格的な反対活動はしないという条件を出した。もちろん大阪湾国際空港建設についても表向きの反対に止めて、裏では砂ビジネスを通して積極的に協力するというものだった。

 

 三枝は旧友のよしみと砂調達の解決・日鉄分割民営化を恙なく成し遂げられると考えた。こうして糸井の提案にのめり込んでいった。

 しかし砂の調達は石山がドリームユートピアとの交渉時に関わりを持った丸井商事から調達する交渉をしているところであった。そこで丸井が西日本中の砂を掻き集めて提供するという話で纏まりつつあった。そこに割って入って来た三枝に石山は不快なものを感じるが、表には出さずに丸井案で通すよう三枝を説得した。

「三枝社長、これはまずい。労農党に金をやることになるし、何より北朝鮮は危険すぎる。関わらない方がいい」

しかし三枝は引き下がらず、

「石山君、丸井から砂を入れるというがそれだと西日本中の砂がなくなる。それでいいのかね。それに北朝鮮からの砂であれば、丸井よりも安い値段で仕入れることができる」

「しかし社長、北朝鮮は毒まんじゅうだ。大体、北朝鮮はテロをしている。関わらない方がいい」

 実際、北朝鮮はこれまでに「韓国大統領官邸襲撃未遂事件」や「ビルマ・ラングーン事件」などのテロ事件を起こしていた。そんな連中と付き合うことは危険に他ならなかった。何より、これまで石山が対峙していて労農党に金が渡ることが許せなかった。

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