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大阪湾国際空港株式会社

 1983(昭和58)年2月、大阪湾国際空港を建設するための組織として、大阪湾国際空港株式会社が設立された。株式会社と言っても、政府が管理する特殊会社である。出資は国1,100億円、大阪府を始めとする自治体400億円、民間企業200億円で、残りは政府保証の公社債で賄われることになった。

 石山は、この特殊会社の副社長に就任した。これまで水面下で行われていた地均しの工作活動をより円滑に行うための処置である。以前、石山は京葉電鉄の子会社イースタンアイランドでドリームユートピア建設での埋め立て造成に関わっていたことがあった。当該空港はドリームユートピアと同様に沖合を埋め立てての空港建設である。かつての経験を活用することが求められた。


 社長には運輸省の事務次官経験者で三枝悟朗が就任した。巨大国家プロジェクトであるため、中央の息が掛かり、巨大組織の運営経験がある人物を当てる必要があった。

 建設に当たっては、各種法規に基づいた膨大な事務作業が待ち構えていた。当然その事務を取り扱う組織もそれなりの規模になる。そのため運輸省という巨大組織を運営した経験を持つ、事務次官経験者が必要ということになった。

 ただ三枝は出来合いの巨大組織を運営しただけであって、一から組織を創設した経験は乏しかった。何より三枝は表街道ばかりを歩いたエリートであるため、裏工作は苦手としていた。

それに対して石山は組織を一から創設する経験を何度もしており、裏工作の経験も豊富であった。よって、表のトップは三枝で裏のトップは石山という二頭体制で会社が運営されることとなった。


 世界初の本格的な海上空港ということもあって、数多くの課題が山積していた。それは技術的課題から地元対策そして資金調達などと多岐に渡っていた。

 騒音公害を無くすため、沖合5kmに設置するとした。ただ沖合5kmとなると深度も深く海底の地層も軟弱を極めた。そこに第一期分の650ヘクタールの巨大人工島を建設し、長さ4,000m滑走路1本や空港ターミナルビルなどの関連施設を建設する。当然、難工事が予想された。

 そのため、埋め立て以外に巨大な浮体構造物(通称:メガフロート)による建設も検討された。実際に海に浮かぶ航空母艦から航空機が発艦着艦をしているのだから、出来るのではないかと思われた。しかし、650ヘクタールにも及ぶ浮体構造の運用実績がないため見送られた。


 結局、従来からの工法である埋め立てで建設される。幸い建設に用いる土砂については、目途が立っていた。

このとき団塊世代が丁度住宅を購入する時期に入っていて、大都市部周辺は宅地造成が進んでいた。また、それに伴ってオイルショックによる総需要抑制政策で凍結されていた大都市部での鉄道建設が再開された。

 その結果、大量の残土が発生して保管が問題となっていた。そこで、これらの残土を空港の埋め立てに利用することで埋め立て用の土の調達と残土問題の解決を図った。


 石山は空港近傍の関西地方だけなく、全国各地からの残土を集める手筈を整えた。全国で建設される原発や自衛隊基地で発生する残土は勿論のこと、日鉄が新宿駅地下の新幹線ホーム建設で発生した残土も引き受けることにした。

 当然ではあるが残土だけでは埋め立てには足りないので、付近の淡路島などからも採取することになる。


 問題は漁業補償であった。当時の漁師たちは弱体化させられていた。弱体化した原因はノーパンパチンコ始めとする遊興での借金苦や漁業法改正による地元漁業者の漁業権の制限、謎の摘発されない違法操業船による乱獲で漁獲量が減る、子弟の大学進学などによる後継者難などである。

 しかし、こうして地元の漁協組合が弱体化していたとはいえ、依然強力な力を有しており、労農党による組織的な反対運動が加わると厄介なことになるのは明白であった。


 漁業補償は難航した。弱体化した漁師は会社側から提示した金額で不本意ながらも承諾をした。しかし、弱体化していない漁師は納得できないとして、物別れとなった。そして納得できない漁師たちは、埋め立て前の事前調査をしている調査船に対して妨害行為を激しく行うようになった。

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