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危機感

1977(昭和52)年5月、航空審議会が示した3案は以下の通りである。


1.神戸沖

<メリット>

 ・神戸都心に近接して、大阪都心からもそれほど遠くない。

<デメリット>

海上とは言え市街地に近く、騒音公害が完全に解消されない。

 ・神戸港の船舶航行に支障が出る。

2.大阪南港沖

<メリット>

 ・大阪都心から最も近い。

<デメリット>

 ・海上とは言え市街地に近く、騒音公害が完全に解消されない。

 ・大阪港の船舶航行に支障が出る。


3.泉州沖

<メリット>

 ・船舶航行に支障がない。

 ・人家が少なく、開発の余地が多い。

<デメリット>

 ・大阪都心から遠い。


 この提言に上がった候補地は従前より、運輸省が最も推していた淡路島案に続く有力案として上がっていたものである。その中で特に神戸沖案は淡路島案が廃案になってから最有力候補となったものであった。


 航空会社はこの神戸案と大阪南港沖案に歓迎の姿勢を示していた。比較的に都心部に近いため、利便性が高かったからである。

 それに対して宝急電鉄や空港に関係している企業は強い危機感を持った。2つの案は飛行ルートで伊丹空港のそれと干渉する。そのため、神戸案か大阪南港沖案が採用された場合、周辺住民の廃港運動と相まって伊丹空港が廃港される可能性が高かった。

 彼らが要望した空港の大型化によって、早々に限界にさせてしまい皮肉にも廃港の危機を迎えさせてしまった。

 廃港は宝急電鉄を始めとする空港関連企業にとっては、何としてでも避けたかった。宝急はドル箱路線を失い、航空燃料輸送・土産物店・清掃などの空港に関係する企業にとっては死活問題であった。そこでこれらの企業は、かつて空港用地買収の元締めだった砂岡に伊丹空港の存続を訴える。


 砂岡にしても、自分の利権が失われることについて危機感を抱いていた。砂岡は伊丹空港だけでなく、関東国際空港や地方の空港などに自らの利権を拡大させていた。各空港に入っている企業の下請けという形で、実質砂岡がオーナーの企業が請け負っていた。

 その中でも伊丹空港の利益は大きかった。よって、それを失う訳にはいかないという点では宝急電鉄を始めとする空港関連企業たちと利害が完全に一致していた。(尚、石山はこの時点では京葉電鉄のグループ企業イースタンアイランド社で役員をしており、この時点で彼らとは接点はない)


 伊丹空港存続に向けて空港の利害関係者と砂岡は非公式に協議を重ねた。その協議で決まった方向性は以下の通りである。


1.泉州沖案を推進する。


2.空港の規模は、神戸案の半分程度の滑走路3本(内、横風用が1本)とする。


3.山海電鉄を梅田に乗り入れさせる。


4.伊丹空港の騒音公害を軽減するため、減便と大型機の運用を差し控える。


5.伊丹空港の鉄道アクセスで新たにモノレールを建設する。


 まず協議の前提としてあったのは、近畿圏に新空港が必要であることと、空港の騒音公害の解消であった。よって、この協議は新空港潰しではなく、新空港を自分たちにとって都合のいいものに仕立て上げることが目的であった。

 

1は伊丹空港の飛行ルートと干渉せず、尚且つ大阪都心から遠く離れている。それ故に都心に近く利便性が高い伊丹空港存続の大義名分が成り立つためであった。


2は新空港の規模を小さくすることで、伊丹空港の発着分の全てが移管されないようにする。


3は空港への鉄道アクセスは泉州地域を縄張りとしている山海電鉄が担う。ただ山海電鉄は梅田に乗り入れておらず利便性が悪い。あまり不便だと泉州沖案が採用されないため、ある程度の利便性向上は求められた。


4は周辺住民に対する配慮である。伊丹空港が存続しても、騒音公害が多少なりとも改善しなければ住民が廃港運動を継続させ、自治体で反対派市長や議員を生むことになる。それを抑えるための対策である。これは関係企業にとっては減益になるが致し方ないことであった。


5はビジネスで利用する人たちから支持を得るため、今以上に利便性を上げることで伊丹空港の存続の支持を彼らから得ようした。


 砂岡は、この時点では科学技術庁長官で直接運輸行政に携わることが出来なかった。しかし運輸省に対して、かなりの影響力は有していた。運輸省の退官官僚の再就職いわゆる天下りの斡旋を仕切っていたからである。

 砂岡は天下り官僚たちを実質砂岡がオーナーの企業や宝急電鉄を始めとする空港関連企業の役員として迎えたりした。そして天下りした役員を通して、先輩後輩の関係にある官僚に影響力を発揮する。また後輩に当たる現役官僚も今度は自分の天下りを考えなければならないため、砂岡の影響力を無視することが出来なかった。


こうして新空港は泉州沖に設置する流れで、計画が動くことになった。

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