真意
石山が話すには井出の真意はいくつかの目的があってのことで、決して背信行為ではなかったとする。
石山の話より井出の真意を整理すると以下のようになる。
1.埋立地と空港の開発に弾みを付ける。
東京ドリームユートピアを誘致する交渉材料として、新幹線の誘致が必要であった。ダニエルが新幹線に強い興味を持っていたことも理由の一つであるが、何より重要なのは新幹線で集客できることだった。
計画では常磐新幹線は東北及び上越・北陸新幹線と接続することになっていた。この東北及び北陸方面が新幹線を通して集客が出来る。この新幹線による集客力をドリームユートピアに対して、アピールして交渉を進めようとした。
仮にドリームユートピアが誘致できなかったとしても、当埋立地には何らかの商業施設を建設しなければならない。しかし残念であるが京葉電鉄の看板は新幹線駅と比べて力不足である。よって自社線建設を諦めて、新幹線駅を誘致した方が得すると冷徹に考えた。
また関東国際空港には、多くの京葉電鉄の子会社が関わっている。空港の発展は子会社の発展に繋がる。そして関東地方だけでなく東北・北陸地方にも接続する新幹線は空港の発展に大きく寄与することが明らかであった。子会社の利益で新幹線の効果から得ようとした。
何より、オイルショックによって経営体力が落ちている状態での新線建設は難しいものがあり、その建設を日本鉄道に押し付けようとした面は否めない。つまり「他人のふんどしで相撲を取る」である。
2.日本鉄道に借りと足枷を作ることで、後から利益を得る。
当時、日本鉄道は常磐新幹線建設が暗礁に乗り上げており、どうにもならない状態であった。そこに京葉電鉄が手を差し伸べることで、日本鉄道に対して有利な交渉をしようとした。
具体的な一例は新幹線駅の設置であるが、その他には日本鉄道に対して要求をすることになる。
・新幹線用地の大半は京葉電鉄から借地契約で借り、賃料を納め続ける。
・新たに建設される新幹線各駅周辺の開発で優先的な地位を保障する。
・新幹線を東京ドリームユートピア前に停車させる。
・将来、京葉電鉄の高速化に日本鉄道が技術協力する。
・日本鉄道の沿線各駅で東京ドリームユートピアのPRに協力する。
また常磐新幹線を南回りして停車駅数を増やすことで所要時間を延ばさせ、自社のアクセス特急との速度差を縮めようとしていた。
3.商圏を自社沿線だけなく、全国規模に展開することを目指した。
京葉電鉄の沿線では発展は限定的になってしまうため、会社及びグループを発展させようとしたら必然的に自社沿線を超えた活動をしなければならない。その足掛かりとして新幹線を活用することを考えた。
東北・北陸方面にも新幹線を通して、それら沿線地域にグループ企業を進出させようとした。
4.全国に新幹線が張り巡らされることが日本の発展に必要であると考えていた。
京葉電鉄及びグループの発展には日本の発展が不可欠であると認識を持っていた。更に安い電力を確保するために原子力発電所が必要不可欠であると認識していた。
オイルショックによって日本経済がパニックになったことから分かるように、資源を有しない国が反映するためには原子力は避けて通れない。そのために原発立地に対して見返りの新幹線建設に協力しなければならない。
何より、京葉電鉄は電力を大量に消費するため、安い電力を安定的に発電する原子力の普及は自社の利益になると考えていた。
こうした真意で井出は新幹線を誘致することを砂岡に提案する。井出は国家の発展と自社グループ発展の両立を目指したのである。
「井出社長、そのご提案を早速使わせてもらいます。これでやっと計画が動くことになります。日本鉄道との話は私が段取りします」
砂岡としても井出の申し出は願ったり叶ったりで積極的に乗った。これで原発の見返りである新幹線建設が推し進めることができる。
こうして、井出と石山たちは日本鉄道との交渉に挑むことになった。




