苦渋
CHAPTER7 苦渋
「そういえば、お嬢さんはどうしてここに来たの?」
(正直に都市伝説で気になったんですーなんて言えない!)
「へぇー、お嬢さんは好奇心旺盛なんだね」
!?いや待って、あたし...!?
「あたしまだ何もっ...」
「顔に書いてたよ。わかりやすいんだね、お嬢さんは。そんなんじゃ、ボクに食べられちゃうよ?」
ふわりと桜の匂いが漂ってきたかと思うと、顔のすぐ前に霧人の顔があった。
反射的に尻もちをついてしまう忍をさもおかしそうに笑うと、霧人は忍の横に座った。
「お嬢さん、『好奇心は身を滅ぼす』、だよ?」
「......でも、死んだって別にい―」
「いいわけないだろ、お嬢さんはお友達、家族、みんなみんないる。それとも」
霧人は素早く忍を押し倒す。
忍に馬乗りになり、首に手をかける。
「お嬢さんみたいな死生観を持ってる人は、1回死なないと命の尊さがわかんない?」
霧人の顔は嫌なことをする時のように苦しそうで、それでも強がって口元は笑みを張り付けている。
白く滑らかな肌には汗が玉のようにうかんでいる。その力は忍が抵抗してもビクとも動かない。
忍の顔に恐怖の色が見えた。
眼を瞑り、歯を食いしばる。これから来る死に耐えるように。抵抗する手もカタカタと震え出す。
―――霧人は、本気だっ...!
それから何秒たっただろうか。
忍の意識が闇に沈んだ瞬間、霧人は手を離した。
その呼吸は苦しそうで、ゼェゼェと喘いでいる。
額に浮かんだ汗を長袖の袖で拭い、ふぅ、と溜息をついた。
霧人はしばらく考えたあと、そのまま眠るように意識を失っている忍の額に手をかざした。すると、忍の姿が消える。
「ここはお嬢さんの来る場所じゃない。現世におかえり、...忍。」




