孤独の少年
CHAPTER5 孤独の少年
ストンっと地に落ちる。
ハッとして目を開けた。朝と夜の狭間の空。白い月。妖しい風。そして、目を見張るほど美しい桜。
「ほ、ホントに都市伝説どおりだ...!」
忍は慌ててノートにスケッチを始める。
色鉛筆も使い、丁寧に、迅速に。
トントン
「ひゃあああ!!??」
「絵が上手だね、お嬢さん?」
そこには高校生くらいの男の子。綺麗な銀髪はほんのり桜色がかっている。
桜のようなふわりとした匂い。整った綺麗な顔立ち。匂い立つような妖しさはどことなく儚く美しい雰囲気を醸し出している。
顔にベッタリと張り付いたような笑みは妖しさをさらに引き立てている。
「あなたが、桜の精...?」
「桜の精か...。ボクはその呼び方、好きじゃないなぁ。ボクは桜木 霧人。」
「そっかぁ...あたしは百敷 忍。霧人、よろしくね!」
忍が無邪気な笑顔を霧人に見せ言うと、霧人は唖然とした顔でしばらく固まっていたが...
「......ははっw、いきなり呼び捨てかい?ww大胆なお嬢さんだねw」
急に笑い始めた。
「あれ?ダメだったかなぁ?」
「ダメじゃない、ダメじゃないんだけどw そんな風に呼ばれたの久しぶりでさ、ついつい」
くしゃっと笑った顔が少年の妖しさを少し吹き飛ばしてしまったようで、急に親近感が湧く。
霧人の赤い瞳が急に光を帯びたようだ。今までの忍を屠ろうとする捕食者の眼ではなく、子供が面白い玩具をじっと見つめる眼。
霧人の白い手が忍の髪を撫でる。
「ちょ、ちょっと?なになに?どうしたの?」
「お嬢さんには笑わされたよ。とても久しぶりに笑えた。」
そういうと霧人は心の底から楽しそうに微笑んだ。