不安の種
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「二人の気持ちが、お互いに向いているなら……私は、単純にその気持ちに従うべきだと思うけど、どうなのかしら?騎士としてとか、あの……うまく言えないけど、ローラが言う様に、タイミングを逃すことになったら、取り返しがつかないと思うんだけど」
「んー私も初めは、レイモンドの気持ちを大切にしたいって、思っていたけど、何の約束もなしに、何年も待てるかは不安だわ…………。」
ソフィアが、悲しそうに俯く。
そうよね…………何の約束も無し…………。
ソフィアの言葉が、私の心に小さな不安の種を捲いた。
私も………アロから何も言われていない…………。
大切にしてくれるし、いつも一緒に居てくれるけど……約束……………。
なんとなく、アロとは、ずっと一緒だと思ってたけど…………もしかしたら、アロが優しくしてくれたり、一緒に居てくれるのは、私が……王女だから?
一緒に居たら得だから?
なんだろ………この感じ。
不安の種は、私の中でどんどん膨らんでいく…………。
「ルシア?どうしたの?なんだか顔色が悪いよ」
ローラが、私を覗き込む。
青い、心配そうな瞳と眼が合うと、はち切れそうな不安が、涙となって溢れだした。
ボロボロと、大粒の涙が頬をつたう。
「ルシア、どうしたの?私のせい?」
ソフィアが、隣に来て私を抱きしめる。
私は、大きく首を横に振った。
「ソフィア。違うの…………うまく言えないんだけど………。」
ローラとソフィアは、私の手を握りうんうんとうなずく。
「あのね。ソフィアとレイモンドの話を聞いていて……………私もアロに、ちゃんとした約束も言葉も、貰ってないかもって思って…………。」
私の手を握る、二人の手に力がこもる。
「そしたらね………どんどん苦しくなって……もしかして。アロが私に優しのも、一緒に居てくれるのも…………私が王女で、一緒に居たら得だからかもしれないなんて思って…………だから……ちゃんと言葉をくれないのかと思って………悪いことばかり頭に浮かんで、どうしたらいいかわからないけど………私は……アロが凄く好きみたい………うぅぅ。」
止められない感情に、嗚咽する。
「「もー」」
叫びと共に、二人に両方から抱きしめられる。
「アロイス兄さまは何なの!あんなに周りを牽制して置いて!一番大事なルシアに何も伝えてないの!」
「これは、アロイス兄さまがいけないわ!もともと、他人と関わらない人だけど、ルシアには違うと思ってたのに!へたくそにもほどがあるわ」
「「アロイス兄さまめ!私達のかわいいルシアを泣かせたんだから、ただではおかないわよ!」」
二人の怒りに、私の涙はぴたりと止まった。
「ローラ。ソフィア。ありがとう」
私も、二人を抱きしめ返す。
「よーし!このままじゃ腹が立って眠れないわ、今すぐ決着をつけるわよ」
ローラは、拳を突き上げて立ちあがると、貴賓室のドアの前に立つ護衛に声を掛ける。
「今すぐ、リファン公爵令息のアロイス様を呼んで頂戴、ルシア殿下の危機よ」
「どうされました?ルシア殿下の危機とは?」
少し離れた場所にいた、ルイス団長が走り寄る。
「ルイス叔父様!とにかく、アロイス兄さまを直ぐに呼んで!大体、団長にも一言いいたいことがあるのよ!後で時間を下さいませ!」
ローラが、ルイス団長に詰め寄る。
「どうしたんだい?こんな廊下で」
ルイ兄さまが、ニコニコしながら現れた。
手には焼き菓子を沢山積み上げた、シルバートレイを持っている。
「ルイ王太子殿下、ちょうどいいところに、ローラ嬢が、今すぐアロイス様を呼ぶようにと…………。」
礼を取る、ルイス団長の後ろには、仁王立ちのローラ。
さらに後ろに、ソフィアと、顔を赤く腫らした私。
ルイお兄さまと眼があった。
お兄様は、大きく眼を見開き、シルバートレイを、護衛に突き渡すと私に駆け寄ってきた。
「ルシアどうしたの?」
ルイお兄様は、両手で私の頬を優しく包む。
「ルイ兄さま…………。」
ルイお兄さまは、自分のマントを外すと、私をくるりと包んでから指示を出す。
「ローラ嬢と、ルイス団長は中へ、他の者は警護に戻れ」
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