6 : オルペニア
燦々と輝いている太陽は傾き始め、少しずつ日の力が弱まってきており、空は少しずつ赤く染まり始めている。
森を抜け、草原を抜けると大きな何かが見え始める。そこに向かって歩くと、見えていたものが何なのかがわかった。
それは巨大な壁であり、中の様子は外からは見えなくなっていた。
壁は分厚く、高くそびえ立っており、下から見あげても何メートルあるのか把握できない。
「…………通っていいぞ」
門番は俺の姿を見て何か言いたげだったが、そのまま通された。
「ここがオルペニアだ」
「おお…凄いな」
ガレット達の先導で壁をくり抜いて作られた門をくぐる。
目の前に広がるのは平和そうな街。
灰がかった壁に二階建ての石造りの建物が並んでいる。
目の前の大通りには屋台やお店までもが見え、慌ただしく行き交う多くの馬車が目を引く活気の溢れる街だった。
サイーナのような村とは違う完全な街だった。
「なあ、ユウマ。冒険者ギルドに寄っていいか?報酬も渡さないとだしな」
きょろきょろとオルペニアの街中を見渡していたらガレットから声をかけられた。
ガレットの方を向くと三人が俺を見ていた。
そして、初めて街に来た田舎の人のような反応をしていた事に気が付いた。
「………わかった」
顔が赤くなっているのが分かるが、俺の顔は兜に寄って隠されている。
よって俺が恥ずかしがっていた姿は見られていない。
俺は平然としながらガレット達の先導のもと街を歩く。
歩くとすれ違う人は俺の事を見てくるが、なぜ見られているのか原因は分かる。
「なあ、ユウマ。それ、暑くないのか?」
ガレットは視線に耐えられなくなったのか俺に聞いてくる。
見られている原因は俺の着ているものにあるのは分かる。
「暑くは無いが…とりあえずこうしておくか」
兜の部分を持ち上げる。柔らかな空気が肌に触れる。
「意外と…若いんだな」
「前も同じこと言われたよ」
これで少しは視線が減るだろう。
と思いながらも、目の端の方で周りを見る。まだ視線は俺に向いているようだった。
俺の着ている真っ白な鎧はかなり目立つ。
周りの人は綺麗には見えるが、ヨレた服、そして、ガレット達も使用感のある防具をつけた服である。
現代人の感覚であればかなり古い服だ。
その中でこの鎧を着ていたらこうなることは当たり前か。
「あんちゃん、すごい格好だな。伝説の勇者と同じ格好じゃないか」
と通り際のおじさんにまで言われる始末だ。
「確かにそうかも」
ソニアやユリスもおじさんの声に頷いていた。
俺は目立ちながらも街の中を進んで行った。
✦︎
冒険者ギルドの中は賑やかだった。
巨大なハンマーを担いでいたり、剣や斧、鎌まで担いでいる人も居たし、大きなジョッキでお酒のようなものを飲んだりして騒いでいる人もいた。
俺はそれを横目に見つつ、買取窓口から今日倒したオーガを買い取ってもらった。
受付の人はびっくりしていたが、引き取って貰えた。
「これがお前の取り分だ。助けて貰えた分も上乗せしてるから確認してくれ」
ガレットから袋に入った硬貨を貰う。
中には金貨が五枚と銀貨が何枚か入っていた。
「あとは魔傷の薬だな」
『魔傷』は、体内の魔素が以上に多くなることで身体の不調が出る症状だ。アリシアからお母さんがこの症状と聞いている。
「あの薬はこの冒険者ギルドで売ってるんだけどな…最近、魔傷の人が急激に増えたみたいだ。しかも、魔物が活発になってて、薬の素材の入荷が困難で作れないと言われた」
「な……」
「だから、俺達は素材を取りに行く。命を助けてもらった恩人の為にならそれくらいは安いもんだ」
「……………俺も行く」
ガレットは自分で材料を取りに行くと言っていたが、俺が行ければもっと早く作れるかもしれない。
「そうか。ユウマが居れば心強いな」
ガレットは笑顔を見せ、肩を組んでくる。
ガタイの良いガレットにされると遠目には絡まれているのかと思われた様で周りの人が止めに入ってきた。
「で、お前はどこに泊まるか決めてるのか?」
「いや…」
最悪野宿でも良いが、さっきガレットから受け取ったお金もあるからどこかに泊まることも出来るだろう。
「それなら、俺のオススメの宿があるからそこにしたら良い」
「ありがと」
それから、ガレットのオススメの宿に案内してもらった。そこは綺麗で特に不満もなかったので今日はそこに宿泊することにした。
夜はガレット達に奢ってもらった。
焼かれた肉は美味しかった。
保存食ばかり食べていた胃の中は肉でいっぱいになった。
宿での宿泊も、布団があり、野宿の不自由さはひとつも無い。
俺は服を脱ぎ、リラックスした服装で寝ることができた。
✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎
「え…………知らない人と一緒に行くの…?」
ギルドハウスに戻ると、ガレットさんに呼ばれ今日の出来事を聞いた。
とある人に死にそうな所を助けてもらったみたいだった。
その人は魔傷の薬を探していたようだった。が、今は魔傷を発症している人が一気に増えて薬が無くなっているみたいだった。
わたしは耳が良いから聞こえていたけど確かに最近は冒険者ギルド内でも聞いていた気がする。
薬が無いから、ガレットさん達はその人の為に薬の素材を採りに往復で十日もかかるところまで行こうとしている。
「シャトンはここで待機してても大丈夫だぞ」
わたしの事を考えて言ってくれているのは分かる。
わたしは人見知りで、知らない人と一緒に居たくない。
「仲間はずれは…いや」
だけど、みんなと居たい。
「……………わかった。でも、無理そうなら言っていいからな。その時は俺だけ残るから2人を連れて行って大丈夫だ。だから気にするなよ」
「………うん。ありがと」
ガレットさんはわたしの事をよく考えてくれてる。
あの時出会ったのがガレットさんで本当に良かった。
「そのユーマさんって本当にあの伝説の勇者の服着てるの?」
あの伝承の残る伝説の勇者の服。
伝承にあるキラキラと白く光る聖なる服。
「多分な。あれはこの世のものとは思えなかった。輝きもそうだし、見た感じの素材も見たことが無いものだった。あとは、あの鎧の力だと思うが、ユウマはオーガの力にも勝ってたんだよな」
「………………………………え?」
あのオーガに勝つ?
筋肉の塊のような魔物であるオーガに?
オークの十倍以上の力を持つオーガに?
確かに人間には無理。人よりは力が強いわたし達でも無理。
本当に勇者の服に力があるかもしれない。
本当だとしたら本物の勇者。
あの伝承は正しいかもしれない。
それなら…もしかして………
わたしの願いが叶うのかもしれない。




