4 : サイーナの村
「ここが私の住んでるサイーナです」
森の中に土の塀に囲まれた村があった。
土の塀に囲まれていない箇所から入ろうとすると、男の人が現れた。
「アリシアか。その人は誰だ?」
「お疲れ様です。この人はユウマさんで、私のお客さんだから大丈夫です」
男の人は俺の事をジロジロと見てきた。何か気になる用だった。
「その格好はなんだ?」
「あ」
そういえばそうだった。
俺の来ているものは全て純白である。とても目立つ。
「これでいいか?」
とりあえず兜の部分を取り外してみる。意外とすんなりと外れた。
外の風が顔に当たり、豊かな自然の香りが届く。
「お、おお…十分だ。通っていいぞ」
男に通されて村の中へと入っていく、家が三十軒程の小さな村だった。
「ユウマさんって結構若いんですね?」
「え?俺、何歳だと思われてたの!?」
「落ち着いてましたし、もっと上だと思っていました……」
ごめんなさいってアリシアは頭を下げる。
確かに全身鎧姿で顔も何も見えず、多分兜で声も籠っていたから分かりにくいとは思う。
「俺は17歳だよ」
「私、15歳です。あまり変わらないですね」
妹と同い歳か。
「妹もいるみたいですし…お兄ちゃんと呼びましょうか?」
「呼ばんで良い」
「あいたあ」
ぺちんと優しくアリシアの頭を叩くと大袈裟に反応した。
「ということで、ここが私の住んでるお家です」
アリシアの家に着いたようだった。
アリシアがドアを開けるとこじんまりとしながらも生活感のある家の中が見えた。
「ただいま」
「おかえりなさい……アリシア。けほ…」
頬の痩けた女性が壁に寄りかかりながらアリシアを迎え入れた。あの人がアリシアのお母さんのようだった。
かなり体調が悪そうに見える。
「お母さん!私がやるから横になって!」
「今日は少し調子がいいから…大丈夫」
「お母さん、私が大丈夫と思えないから横になってて」
アリシアはその姿を見て、優しく両肩に手を回し、奥へと一緒に進み、ベッドへと寝かせた。
「ごめんね………」
「良いよ。お母さん」
アリシアはお母さんを寝かせ、布団をかける。
「そういえばユウマさんはそんな服?着てて重くないです?脱いでも大丈夫ですよ?」
重くは無いが、人の家にいるのにこんな格好は良くないかもしれない。
脱ぎ方ってどうするんだ?
とりあえず手で鎧を掴んで上へと引っ張ってみる。
「意外と軽い…」
スルスルと鎧は上へと引っ張られるようにして上半身の鎧が脱げる。
鎧の下は何も着ていないかと思ったが、薄めの布の服を着ていた。
露出狂にならなくてすんだ。
少し躊躇しながらも下も脱いでみる。下も短めのズボンを履いており、鎧を脱ぎ終えると空気が当たってきた。
鎧の時にはあまり気になっていなかったが、外の空気は少し暑く感じた。
「結構暑いな…」
「いや、あの鎧姿の方が暑そうでしたけど……………って重いですね!?」
アリシアが脱いだ鎧を興味津々に掴もうとすると持ち上がらなかった。
「そうか?」
俺がその鎧を掴んでみると空気のように軽く、重さは微塵も感じなかった。
「軽々と持ち上げてる………?ユウマさんの筋肉どうなってるんですか………」
もしかしなくてもあの神様モドキの鎧だからかもしれない。
俺以外は使えない鎧なのか、それとも本当にアリシアの力は弱いのか…
「アリシア、俺の手を思いっきり握ってみてくれ」
「はい………???」
「やってみて?………ほら」
「えっと…………?ほんとにやりますからね?いきますよ?」
俺が手を出すとアリシアがその手を握る。アリシアの手の温かさを感じながらも、いきなり強烈な痛みを感じた。
「い"った"ぁぁぁ!?ストップストップ!!離して!!」
アリシアは手を離したがジンジンとした痛みが襲ってくる。
「えっと……………ごめんなさい…」
俺が痛みに大きな反応をしてしまったせいでアリシアが謝ってきた。
「いや、俺が悪いんだ。気にしないでくれ」
まだ少し傷みが残っている。
アリシアの力は強かった。
それはそうか、俺みたいな現代日本でスマホやゲームにまみれて生きてきた軟弱な奴よりもこのような世界で生きてきた人の方が力は強いよな。
俺よりも力が強いと思われるアリシアで持ち上げられないのなら俺の鎧は他の人には使えないのだろう。
その可能性が高いと思っておこう。
「アリシア、何か俺に手伝えることはあるか?」
「………お母さんのお薬作らないとだけど…いいですか…?」
アリシアが少し考える素振りを見せて答えた。
「ああ」
俺が手伝える事があればアリシアのちからになろう。
アリシアにそう答えると、二人で外へと向かった。
「ありがとうございます。では、このサイネの実をすり潰して貰ってもいいですか?」
「了解だ」
アリシアから先程取ったサイネの実を受け取る。押し潰すための棒と器を貰い、アリシアの見本の通りに身を押し潰した。
アリシアは更に様々な実を取り出して器の中に入れる。
「これもお願いします」
俺は言われた通りに実を潰す。赤色青色緑色と、様々な実が潰され、独特の匂いがあった。
「ありがとうございます。やっぱり男の力は凄いですね。私はもっと時間かかりますもん」
潰れた実を見ながら、アリシアは俺が潰した実を器ごと受け取り、家の影になる場所角へと持って行った。
「これを一週間乾燥させればお母さんの薬になるんです。これくらいあれば一ヶ月くらいはもちそうですね」
他に乾燥されている粉を見て、アリシアが言うと、アリシアは俺へと顔を向ける。
「………ということで、色々とありがとうございます。ユウマさんがいなければ私死んでました。
お礼と言っても私にできることは少ないので…私にできることがあれば何でもしますよ?」
アリシアは笑顔を作る。そのアリシアの頭に優しくチョップを与える。
「あいたぁ!?」
「そんなことを言うんじゃない。別に、俺は俺にできることをしただけだから気にしなくていい」
「えへへ…ユウマさんならそう言うと思ってましたよ………。でも、私覚悟していたんですよ。何も無い私がお礼をするならって………」
「アリシア………」
「私は私にできることは何でもするつもりです。後悔はしたくないんです。もう…誰も失いたくないから…」
アリシアは顔を下げ、声が震えていた。
「大丈夫だ。誰も失わせたりしない。君のお母さんも俺がどうにかする。だから、笑っていればいい。アリシアは笑顔が似合うから」
アリシアが顔を上げ、涙を拭う。涙の含んだ瞳が俺を見上げながら笑顔を見せる。
誰も失わせない。俺にできることなら何でもする。
妹に似ているアリシアを見ながら俺はそう思った。
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昨日はあれからアリシアのお家に泊めてもらった。
アリシアのお母さんも夜に少し起き、少しお話しができた。お話の中でアリシアの過去の話が始まるとそれをアリシアが阻止しようとして笑いが起きる。
小さな幸せであったが、久しぶりに幸せを感じた。
妹が病気になる前はいつものようにあった幸せ。俺が魔王を殺せば叶えられる未来。
食事はウルフのお肉と山菜のサラダを頂いた。
倒したウルフやハイウルフ、オークの肉は村の人達にも配り、全て皆の食料として消費されるだろう。
薬のお金、ウルフの干し肉、竹筒に入った水、あと薬草を少々をもらい、それをアイテム袋へと入れる。
「本当に行くんですか…?」
アリシアは村の入口まで着いてきてくれた。
「ああ。それがあればお母さんの体調も今よりも良くなるんだろ?」
「そう…ですけど………」
「それなら任せろ。俺なら大丈夫だから。な?」
俺はアリシアのお母さんの薬を買いに村から離れようとしていた。
ここから歩いて3日程の場所らしい。地図も貰った。
「……………帰ってきますよね?」
「ああ、約束だ」
俺が答えると、アリシアから何かを貰う。
「黒い石?」
「お守りです」
それは手のひらよりも少し小さい淡い黒色の石だった。石には糸が通っており、首にかけられそうであった。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
俺は先へと進む。
村から出て人のあまり通ってないだろう道を進む。
振り返るとアリシアが手を振っていた。
俺は手を振り返して先へと進む。
やがて木で見えなくなり、周りの雑草も更に深くなる。
「冒険だな」
自然に囲まれながら段々と気分は上がってきた。
子供の時にしたかった冒険を今やっている。
気分を上げながら目的地へと向かう。
目的地はオルペニアの街、人の多く集まる貿易都市だ。そこになら色々なものが集まる。薬もあるはずとの事だった。
明日も公開します




