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2 : 異世界へ

「ここは…?」


 気が付くと自然に囲まれていた。周りは木が生えており、森の中のようだった。

 香りも草と木の匂い、さらには少し濡れた土の匂いまでしている。


「この姿のまま…………か」


 そして俺の姿は白銀の装備のままであった。この森の中で俺の姿は目立ちすぎる。


 右手に持っている剣を地面に刺してみる。地面には剣が突き刺さった事で穴が開く。そして、剣を抜いてみる。


 刺してみた感じは本物のようであった。


 次に、盾を触ってみる。冷たさを感じるが、重量感はない。本当に盾を持っているのか分からないくらいだった。


 盾は検証する事が出来ないため本物と仮定する。


 検証するなら剣を使えばいいかもだけど、もしそれで剣が使えなくなる事になれば大変だ。


 どちらも本物の可能性は高く、異世界と言われた言葉も本当かもしれない。

 本当に異世界であるとしたらもしもの時の為に自分の力を確認しておかないといけない。


「それなら」


 右手に持っている剣を構える。剣を使ったことは無い。剣道もしたことは無い。使ったことの無い剣を使うには少し練習をするしかない。


 俺は目の前にあった一際目立つ大きな木に剣を振り下ろしてみた。

 白銀の剣は白い起動を描きながら木へと吸い込まれ、木の幹は切断された。


「え?」


 技術も何も無い俺の剣が木を斬る?

 そんなことあるわけ………


「って」


 木が何故かこちら側へと倒れ込んでくる。倒れ込んでくる木を避けようと右へと避ける。

 白銀の鎧を着込んでいるはずだが身体は軽く、危なげなく避けることができた。


 ドドーーン


 と大きな音を立て、地面へ木が激突し、小さく地面が揺れ、土煙が薄く舞う。


「危なかったが…………ん?」


 薄い土煙の先に何か動くものが見えた。

 そして、それがいきなり飛びかかってくる。

 土煙の中から飛び出し、姿が見えた。


「狼…?」


 白い狼を俺は盾で防ぐ。噛み付こうとしていた白い狼は盾に当たるが、衝撃は感じなかった。

 噛み付いてきた白い狼そのまま地面へと落ち、動きが止まる。


「………本物なのか?」


 右手に持っている剣先で少し突つくと続いた場所が小さく切れ、そこから赤い血がぷくりと出てくる。


 それは本物の生き物だった。


「………」


 俺は怖くなり、その場から離れる。

 まとわりつく草、それがちぎれ、ほんのりと草の匂いが強くなる。

 全てが俺に現実を見せてくる。


 本物の世界。あの神様モドキの言う事の信憑性が増した。


「いやぁぁぁぁぁ」


 俺が逃げていた先から人間の女性の声が聞こえた。

 足が勝手に声の方へと動いた。


 目の前に茂る薮を剣で斬り落とすと少女が先程見た白い狼に囲まれていた。

 数は丁度十匹。襲われる直前のようだった。


「まずい」


 俺は盾を構えながら飛びかかる。

 白い狼が一匹、少女へと飛びかかったが、俺は盾を投げる。

 飛びかかった白い狼に盾が当たり、その白い狼は飛ばされながら動かなくなる。


 少女と残りの狼の視線が俺に向く。少女はびっくりとした表情をみせ、白い狼達は唸りながら俺を敵と認識したようだった。


 グルルルル


 白い狼達に囲まれ、全方向から俺に飛びついてくる。

 盾は飛ばした為、離れた場所に転がっている。盾は使えないが、剣は使える。


 剣を横に構え素早く一回転させるように剣を振る。白い軌道を描きながら剣は高速で振り抜かれて白い狼達を斬った。

 鋭い斬撃が白い狼達を一匹残らず倒した。


 斬られた断面からは赤い血が吹き出るように流れてくる。

 俺の鎧にも血がかかるが、血は弾かれ、地面に落ちる。


「う…………っ」


 断面からは肉と内蔵が見えている。俺はそれを見ないように目を背けると少女と目が合った。


「……………勇者…様?」


 少女の声も姿も妹の彩香(あやか)に似ていた。





 ✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎✦︎






 ドドーーン


 森の中で薬草を採取していたらものすごい音が聞こえ、地面が揺れた。この村で十五年も生きているけど聞いた事のない大きな音。

 音のした方へと視線を向けるとサイネの木が消えていた。


「嘘……………あの木がないと………」


 木のあった方へと走る。

 いつも通る道、どこに何があるのか分かっている。大きな石を跳ぶように避け、ぬかるみに足が取られないように走る。


「ウルフ!」


 私の道を防ぐようにウルフが現れる。でも、一匹くらいなら大丈夫。


「ウォーターアロー」


 魔力を使い、水の矢を作り出す。作り出した矢は狙い通りウルフの脳天に突き刺さり、そのまま貫き、ウルフは倒れた。

 ウォーターアローは魔力の少ない私にとって、消費魔力は少なく、扱い易い為、私の得意な魔法。

 ウルフは今まで何回も出会っているからいつも通りに攻撃できた。

 先手を取れればウルフは怖い相手でもないし、複数のウルフじゃなければ私でも対処出来る。


「急いでるけど…ウルフの回収しないと」


 早く行きたいけど、ウルフの死体は回収しておかないとさらに魔物が寄ってくる可能性がある。


「ウォーターボール」


 水の玉を作り出して死んだウルフに優しく当てる。ウルフから流れている血を水で洗い流し、地面に垂れていた水で濡らして洗う。

 濡れたウルフを小さな袋の入口に当てる。大きさはウルフよりも小さいけど袋は何も無かったかのようにウルフは中に入った。


「いつの間に………」


 気付いた時にはウルフに囲まれていた。


「あれは…ハイウルフ」


 大きさの違いに大きな差はないけど普通のウルフよりも少し大きい。

 でも、見た目に違いがある。白い毛の中に目立つ首元の黒い毛の筋。あれがハイウルフの証。

 そして、ウルフと違って思考能力がある。

 ウルフはただの獣だけどハイウルフは人の子供程度の思考能力がある。

 だからこそ孤高のはずのウルフの群れを作る。


 弱い餌を安全に狩る為に…



 私の魔力はまだあるけど、このウルフを倒し切るには魔力が足りない。

 あと2回…いや、3回くらいかな。

 ハイウルフを仕留めたらもしかしたら群れは崩れるかもしれない。


「ウォーター…」


 魔法を使おうとした瞬間、後ろにいたウルフが私目掛けて体当たりして来た。濡れた地面にウルフによって倒される。

 魔法は発動せず、魔力を少し消費した。


 顔を見上げるとハイウルフが目の前にいた。

 ハイウルフが私の顔を舐め、歯からヨダレが垂れる。


 喰われて死ぬ…

 いや…だ…

 死にたくない………



「いや……………いやぁぁぁぁぁ」


 開いた口が私を殺そうと迫る。


 いつ私の命を奪う歯が落ちてくるのかと恐怖が迫る。


 歯が迫ると目を瞑ってしまった。

 死ぬのが怖かった。


 だけどその歯が私に触れることは無かった。


 バゴンッ


 と目の前で何かがぶつかった音が聞こえ、目の前にいたはずの獣の気配も無くなった。


「な…に…?」


 うっすらも目を開ける。

 目の前にいたはずのハイウルフはおらず、木の根まで飛ばされたハイウルフが見える。ハイウルフには白い盾の様な物が胴体に刺さっていた。


 盾?


 盾が飛んできたと思われる方向に顔を向ける。


「人………?」


 その先には白い鎧を来た人?が立っていた。

 その人?は剣を構えると一瞬でウルフ達が斬られた。


 ウルフの群れを一撃。

 あんなに重そうな鎧を着ているのに剣は全く見えなかった。


 白い鎧はウルフの血を弾き、剣までも血を弾いて、真っ白の姿のまま光までも弾き、輝いて見える。


 この姿はまるで物語で見た事のある………


「……………勇者…様?」



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