【第4話②】いい話は五秒で終わる
「おい、メロン」
「んが? お前も一本食うか?」
「そうじゃなくて。……汚染値が溜まると爆発するっていうなら、なんで俺は、今日まで平気だったんだ? 色っぽい話なんて、ただの一回もなかったんだぞ」
断言できる。悲しいことだが、Mマークが出たのは今日が初めてだ。
計算が、まるで合わない。
メロンは串を咥えたまま、心底あきれたように、ふっと息を吐いた。
「お前さ。ほんっとーに、鈍感だな、ヘタレ」
「……なんだよ」
「お前の顔色が悪くなるたびに、強引に連れ回して、腕組んで歩いて、たっかい飯を奢らせてたのは、どこのどいつだと思ってんだ?」
「……」
俺は、口に運びかけた水を、そっと置いた。
心当たりが、ありすぎた。
絶妙なタイミングでふらりと現れては、するりと腕に絡みついてくる緑髪。
買い食い。食べ歩き。
あれが、全部――俺の汚染値の、管理。
手を繋ぐ。腕を組む。触れ合いが濃いほど、よく下がる。
さっき広場で、メロン自身がそう言っていた。
つまり、こいつは、数ヶ月、飯をたかるふりをしながら――。
「メロン……お前、俺のために、ずっと……」
「そうだぞ。もっと感謝しろ。――で、おかわり、いいか? 大事なモノを守ってもらった恩人サマに、それくらい、安いもんだろ?」
「…………」
いい話が、五秒で終わった。
「……いや。救ってもらったのは、分かった。分かったけどさ。それにしたって食いすぎだし、高すぎるだろ。先週の『超高級焼肉亭・特上コース(1000ゼクク)』なんて、絶対ただ食いたかっただけだよな」
「ひひっ。ソレの恩人サマに、文句つける気か? お前だって、まんざらでもなかったくせによ。……うめぇ。さいこうだ」
「……結局、ただの都合のいいサイフ扱いじゃないか」
このエルフ、やっぱり図太い。骨の髄まで、図太い。
……だが。
なんだかんだ言って、俺の大事なものを守ってくれた恩人なのは、変わらない。
思えば、こいつには最初から世話になりっぱなしだった。
この世界に放り出されたばかりの俺に、冒険者ギルドの場所も、登録のやり方も、Eランクとして目立たず生きるコツも教えたのは、メロンだ。
たかられ続けてはいた。
いたが、その裏で、俺の汚染値までこっそり管理していたとなると、もう文句だけで済ませるのも違う気がする。
……まあ、八割くらいは、普通に本人の欲望だった気もするが。
「……その、なんだ。ありがとうな」
「んが?」
「聞こえてただろ。二回は言わん」
メロンは一瞬きょとんとして、それから「ひひっ」と笑い、五個目のメロンパンをごくんと飲み込んだ。
「……ま、礼ならゼククでも受け取るぜ。なんなら今ここで、串をもう一本――」
「金で受け取ろうとするな。……あと、まだ食べるのかよ」
照れ隠しなのは、バレバレだった。




