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イチャイチャしないと爆発する異世界で、ぼっち最強勇者は今日も詰んでいる   作者: ああああ


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【第2話②】Eランクとワイバーンの鱗

「ああああ。これ、ワイバーンの鱗だよな」


 ギルドマスターの太い指が、鱗をつまみ上げる。


 陽の光を弾いて、にぶく光った。


「Eランクが、なんでこんなもん持ってんだ?」


 汗。


 ワイバーンは、ふつう中堅パーティが総出で挑む相手だ。


 先日、空からいきなり降ってきたので、反射でぶん殴ったら墜ちた。


 素材はうっかり拾ってしまった。


 完全に、俺のミスである。


「ひ、拾った」


「拾った?」


「道に、落ちてて」


「ワイバーンの鱗が、道に」


「ワイバーンだって鱗くらい落とすだろ。猫だって毛が落ちる」


「スケールがでかすぎんだよ」


 ヤバい。


 ツッコミの腕が試されている。


「知り合いの、知り合いの、そのまた知り合いが、たまたま……」


「おい」


「いらないなら捨てる。今すぐ捨てる」


 鱗をひったくろうとしたが、ギルドマスターは渡さなかった。


 じっと、俺の顔を見ている。


 暑苦しい目が、妙に鋭い。


 ……気づかれてる、か?


 このおっさん、豪快そうな顔をして、たまにこういう目をする。


 俺がただのEランクじゃない、と薄々勘づいているのだ。


 とはいえ、勇者だと確信しているわけでもない。


 だから、踏み込んでこない。


 ありがたい。


 だが、油断はできない――。


 と思った瞬間、ギルドマスターの目つきが、ふっとゆるんだ。


「……ああああ。お前、独り身だったな」


「は?」


「うちの娘、知ってるか。受付の、カリンだ」


 話の角度が、九十度変わった。


 カウンターの奥。


 金ピカの鎧をまとった受付嬢が、伝票をきっちり捌いている。


 背筋はまっすぐ。


 手つきは正確。


 真面目で有能、という空気が全身からにじんでいる。


「腕は立つ、家事もできる、性格もいい。どうだ、ああああ。婿に」


「なんでその流れでそうなるんだよ」


「ワイバーンの鱗を道で拾える男だぞ。将来有望だ」


「さっきまで疑ってただろ!?」


「父親として、娘を任せられる男かどうか、見定めてたんだよ」


「疑いの目じゃなくて品定めの目だったのかよ!」


 カリンの手が、ぴたりと止まった。


 耳が、じわじわと赤い。


「お、お父さん。仕事中です」


「おう、すまんすまん」


「ああああさんも、変に話を合わせないでください」


「合わせてないが!?」


 ぱしっ、とカリンの手元で、小さな火花が散った。


 手にしていた受付札が、ぼっ、と燃える。


「あっ」


 灰になった札を、彼女は何事もなかったように片付けた。


「……失礼しました。書き直します」


「燃やすなよ受付札。記録のデータ、それじゃねぇのか」


「データはクラウドにありますので、平気です」


「物理の札は燃えてるけどな」


 聞けば、この受付嬢、感情が昂ぶると魔力が漏れて、近くの紙を燃やす癖があるらしい。


 今日だけで、もう三枚目だそうだ。


 伝票も、札も、羊皮紙も、彼女の機嫌しだいで燃える。


 冒険者ギルドの備品が、いちばんの消耗品だった。


 それでもカリンは、真面目な顔で新しい受付札を書き直している。


 赤くなった耳だけが、何事もなかったことにはできていなかった。


「で、親父。納品は終わったから、俺はもう――」


「待て待て、ちょうどいい。お前に依頼がある」


 逃げ損ねた。


 この流れで依頼を出してくるあたり、やはりこの親父、油断ならない。


挿絵(By みてみん)

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