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異世界の魔法使い暗殺者  作者: 日神ラーメン
第2章:魔法使い専門の暗殺学校
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第6節:魔法使い専門の暗殺屋

「ここが……魔法使い専門の暗殺屋か?」


俺は目の前の店を見上げ、小さく呟いた。


店先に掲げられた看板には、黒ずんだ木板にどす黒い紫色の文字が刻まれている。その文字はまるで血が乾いてこびりついたような、不気味な色をしていた。さらに看板の上には、烏が何羽も止まっていて、ギャアギャアと耳障りな鳴き声を響かせている。


どう見ても、まともな奴が近づくような場所じゃない。むしろ、「関わるな」と全力で警告してくるような店構えだった。


「……とはいえ」


俺はポケットの中の小銭を指で弄び、ため息をつく。


「金がなきゃ宿も借りられねぇし、飯も食えねぇ。結局、仕事するしかないんだよな」


腹も減っていた。選り好みできる立場じゃない。


俺は覚悟を決め、ギィ……と軋む扉を押し開けた。店内に一歩足を踏み入れた瞬間、外の烏の鳴き声が嘘みたいに消えた。


中は薄暗く、ランプの灯りだけがぼんやりと空間を照らしている。店の造りは意外にもカウンター式で、まるでバーのようだった。


ただし、漂う空気は酒場のそれとはまるで違う。静かすぎる。息をする音すら、やけに大きく聞こえた。


「あんた、ここに何をしに来たの?」


カウンターの奥から現れたのは、二十代後半ほどの女だった。


腰まで流れる艶やかなピンク色の髪。白く透き通る肌に、吸い込まれそうな紅い瞳。整いすぎた顔立ちは、まるで人形のように美しい。


……いや、美しいなんて言葉じゃ足りない。絶世の美女。


だが、その美しさとは裏腹に、どこか危険な香りがした。ほんのり赤く染まった頬と、カウンターに置かれた空の酒瓶。


どうやら、かなり酒が回っているらしい。俺は思わず息を呑み、喉が鳴った。ゴクリ――。


その小さな音すら、静まり返った店内ではやけに大きく響いた。

女の細い目が、すっと鋭くなる。


「……もう一回聞くわよ」


さっきまでの気だるげな声が、一瞬で冷え切った。


「ここに何しに来た!!!」


次の瞬間。


ゴッ――!!


女は手元にあった酒瓶を、躊躇なく俺の顔面めがけて投げつけた。


速い。


普通の人間なら、反応すらできない。だが俺は、反射的に身体をひねる。


ヒュッ――!


酒瓶は俺の頬をかすめ、背後の壁に激突した。


ガシャァァン!!


破片が床に飛び散る。俺は女を睨み返し、叫んだ。


「俺は仕事を探しに来たんだ! これでいいだろう!!」


数秒の沈黙。


すると、女の口元がゆっくりと吊り上がった。不気味で、それでいて妖艶な笑み。


「ふふ……」


さっきまでの殺気が、嘘みたいに消えていく。


「あんた……よく見たら、いい男よね」


「……は?」


意味が分からず固まる俺。すると女は、カウンターを回り込み、こちらへゆっくり歩いてきた。


コツ、コツ、コツ――。


一歩近づくたび、甘い酒の香りが漂ってくる。気づけば、目の前まで来ていた。


近い。


近すぎる。


女は細い指を俺の胸元へ滑らせた。


ス――。服の上から、なぞるように撫でられる。


心臓が跳ねた。女は顔を寄せ、熱い吐息を口元にかけながら囁く。


「ねぇ……」


紅い瞳が、真っ直ぐ俺を射抜いた。


「私と結婚しない?」


「…………は?」


思考が止まる。女は妖しく微笑んだ。


「あんた、タイプなのよ」


俺は、こいつを性的な意味でまったく魅力的だと思えなかった。


確かに顔はいい。スタイルもいい。


だが――中身がヤバすぎる。


さっき酒瓶を投げてきたと思えば、次の瞬間には求婚してくる。


頭のネジが何本か飛んでいるとしか思えない。女は俺から少し離れると、鋭い目つきでこちらを見た。


「あんた、ここで仕事を探す前に、ライセンスは持ってるのよね?」


「……ライセンス?」


突然出てきた単語に、俺は眉をひそめた。何のことを言っているのか、まるで分からない。


「ライセンス???」


俺が聞き返した、その瞬間だった。


ドゴォッ!!


「ぐぇぇぇぇっ!!?」


女の鋭い蹴りが、容赦なく俺の股間に炸裂した。あまりの激痛に、俺の視界が真っ白になる。膝から崩れ落ち、床に手をついた。


痛い。


痛すぎる。


魂まで蹴り飛ばされた気がした。女はそんな俺を見下ろし、怒鳴った。


「あんた!! ここで仕事を探すにはライセンスが必要なんだよ!!!」


店内に声が響き渡る。


「私をおちょくってるのか!?」


「な、なんのことだよ……!」


俺は股間を押さえながら、歯を食いしばって聞き返した。


女は呆れたように額を押さえ、大きくため息をつく。そして、信じられないものを見るような目で俺を見た。


「はぁ……マジで知らないの?」


紅い瞳がじっと俺を射抜く。


「魔法使い専門の暗殺学校――」


女はそこで一拍置き、低い声で告げた。


「その卒業ライセンスのことよ」

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― 新着の感想 ―
このお姉さんはなかなか良いキャラですね。絶世の美女のはずなんですがね。読んでいても、お近づきになりたくない雰囲気がプンプン臭ってきます。近づいてきた時の、何かこれやるな感が半端ではなかったです。今回も…
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