表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔法使い暗殺者  作者: 日神ラーメン
第1章:プロローグ
PR
5/6

第5節:能力解放

 俺は兵士たちに両腕を掴まれながら、処刑台へと連行された。処刑台は広場の中央にそびえ立っていた。地面から三メートルほどの高さがあり、階段を上るたびに足が震える。恐る恐る下を見ると、広場には数え切れないほどの人々が集まっていた。


 露店の店主。


 酒を飲みながら笑う男たち。


 親に肩車された子供。


 全員が処刑台を見上げている。その視線の先にいるのは俺だった。


(嘘だろ……)


(本当に殺されるのかよ……)


 心臓が嫌になるほど暴れている。喉は乾き、膝は震えっぱなしだった。兵士の一人が俺の頭を乱暴に掴んだ。


「おい、ここに頭をつけて仰向けになるんだ」


「ぐっ!」


 後頭部を押され、首枷へ無理やり頭を固定される。木枠には古い血の臭いが染み付いていた。顔を上げると、巨大な処刑刃が見えた。銀色の刃先が太陽の光を反射している。

 

 あと数秒もすれば、あの刃が俺の首を切り落とすのだろう。


(おいおい……)


(マジかよ……)


(俺、ここで死ぬのかよ……)


 その時だった。ズキンッ!!頭の奥に激しい痛みが走った。


「がっ!?」


 脳みそを直接殴られたような痛みだった。視界が揺れる。


 同時に、あの老人の記憶が頭の中へ流れ込んできた。


 薄暗い部屋。


 不気味な祭壇。


 意味の分からない呪文。


 そして老人の笑み。


 ドン。


 ドン。


 ドン。


 頭の中で太鼓を叩くような音が響き始める。それは心臓の鼓動ではない。もっと重く、不吉で、禍々しい音だった。


(なんだ……?)


(俺の中で何かが目覚めてる……?)


 すると老人の声が頭の中に響いた。


『さあ、今だ』


『右手を掲げろ』


『手のひらの目を観衆へ見せるのだ』


 言われるまま右手を持ち上げる。そして思わず顔を引きつらせた。


 手のひらの中央に目玉があった。白目には血管が浮き出ている。黄色い瞳がぎょろりと動き、まるで生き物のように周囲を見回していた。


(うわっ……)


(気持ち悪っ……!)


(なんだよ、この化け物……)


 だが、やるしかなかった。目玉が大きく見開かれる。


 その瞬間、黒い霧のようなオーラが手のひらから溢れ出した。オーラは風に乗るように広場全体へ広がっていく。


 観衆たちの表情が固まった。兵士たちも動きを止める。


 そして全員の目が真っ赤に染まった。


「なっ……」


 ドサッ。


 一人が倒れる。


 続いて二人。


 三人。


 兵士も。


 観衆も。


 処刑人も。


 まるで糸の切れた人形のように、その場へ崩れ落ちていった。広場には風の音だけが残る。


「な、何が起きたんだ……?」


 俺は慌てて身体を起こした。


 だが足首は処刑台の金具で固定されたままだ。


「くそっ!」


 必死に足を動かす。しかし外れない。


「おい!」


「おっちゃん達!!」


「早くここから出せよ!!」


「寝てる場合じゃねえだろう!!」


 半ばやけくそで叫んだ。


 すると――。


「ふわぁぁぁ……」


 一人の兵士が大きな欠伸をした。


「よく寝たなぁ」


「昨日から徹夜続きだったからな」


 別の兵士も目をこすりながら立ち上がる。 次々と兵士たちが起き上がった。


 しかし様子がおかしい。誰一人として処刑を再開しようとしない。


 まるで昼寝から目覚めたような顔をしていた。


「あっ」


 一人の兵士が俺を見た。


「おい、そこで何をしているんだ?」


「危ないぞ」


「ここは遊び場じゃないんだ。ふざけるのも大概にしろよ」


「……は?」


 思わず間抜けな声が出た。


 さっきまで俺を処刑しようとしていた連中だぞ?だが兵士たちの顔には困惑しか浮かんでいない。


 本当に覚えていないようだった。


 俺が魔法使いだということも。


 処刑しようとしていたことも。


 全て忘れている。


 一人の兵士が尋ねてきた。


「お前さん、名前は?」


 一瞬だけ迷う。


 本名は危険な気がした。


「……マクスウェル」


 咄嗟に偽名を名乗る。


「マクスウェルか」


 兵士は気さくに頷いた。


「もうここに来るんじゃないぞ。さっさと家に帰りなさい」


 何が起きているのか、俺自身にも分からなかった。


 すると兵士の一人が懐から紙切れを取り出した。


「まさかのニートか?仕事が無いなら、君もここへ行くといい」


 そう言って一枚のチラシを手渡してくる。俺はそれを受け取った。そこに書かれていた文字を見て、思わず固まる。


 ――魔法使い専門暗殺屋 従業員募集中――


「……いや、なんでだよ」


俺の右手の目玉は閉じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
手のひらに目玉、ビジュアルのインパクト抜群の設定ですね。処刑を見に来るという、現代人としては残酷で低俗な楽しみ方をするような人々には良い報いを与える展開もすっきりと出来て良いですね。今回もとても面白か…
最新話まで一気読みしてしまいました! 処刑台へ連行される緊張感から一転、手のひらの目玉による異様な展開に一気に引き込まれました。 観衆や兵士たちが次々と倒れていく場面は不気味さがありつつも続きが気にな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ