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異世界の魔法使い暗殺者  作者: 日神ラーメン
第1章:プロローグ
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第4節:能力転移

白髪交じりの老人との会話は、なぜか驚くほど弾んだ。冷たく湿った牢屋の中だというのに、不思議と居心地が悪くなかった。


「オホホ、お前さんはこの世界の人間ではないんじゃな」


老人は皺だらけの顔をほころばせながら言った。その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の奥に溜まっていた不安が少しだけ軽くなる。


ようやく信じてくれる人に出会えた。俺は身を乗り出した。


「じいさん、さっき自分は魔法使いだって言ってたよな? 何の魔法を使うんだ?」


老人は一瞬だけ口を閉ざした。何かを迷うような沈黙。


だが、やがて小さく息を吐く。


「……もう長くは生きられんからな」


そう呟くと、老人は諦めたように笑った。


「わしは記憶を司る魔法使いじゃ」


思わず目を見開いた。本物の魔法使い。異世界に来てから散々振り回されてきたが、まさか実際に会えるとは思わなかった。老人はゆっくりと続ける。


「人の記憶を覗き、消し、書き換える。そういった力を持っておる」


「すげぇ……」


思わず声が漏れた。すると気になっていたことを聞いてみる。


「魔法って、やっぱり呪文とか唱えるのか?」


老人は首を横に振った。


「そんなものはない」


「え?」


「ただし、制約はある」


そう言うと老人は口を閉ざした。どうやらそれ以上は話すつもりがないらしい。


「そっか……」


少し残念だったが、それでも異世界の話は面白かった。俺たちは時間を忘れて話し続けた。


気付けば牢屋の小窓から差し込む月明かりが薄くなり、深夜零時が近付いていた。


「もう寝るかのう」


「ああ」


会話を終え、それぞれ横になる。硬い床に背中を預け、俺は目を閉じた。


その時だった。


「ウオオオオオオオオオオオッ!!」


隣の牢屋から凄まじい絶叫が響いた。俺は飛び起きる。


「じいさん!? どうしたんだよ!」


鉄格子に駆け寄る。老人は床の上でのたうち回っていた。全身を痙攣させながら苦しそうに喉を震わせている。その異変に気付いたのか、廊下の奥から近衛兵たちが駆け込んできた。


だが、その時。老人の身体から何かが飛び出した。


――黒い影だった。まるで闇そのものが形を得たような存在。


龍にも蛇にも見える巨大な影が、ゆらゆらと空中を漂っている。その姿を見た瞬間、全身の毛が逆立った。


(な、なんだ……あれ……)


だが、近衛兵たちは誰一人として反応しない。老人だけを見えている。まるでその影が見えていないかのように。


次の瞬間。黒い龍のような影がゆっくりとこちらを向いた。金色にも見える双眸。俺と目が合った。


ゾクリ――


背筋に氷を流し込まれたような悪寒が走る。逃げなければ。そう思った。だが身体が動かない。


影は音もなく近付いてくる。


そして――俺の口の中へ飛び込んだ。


「がっ!?」


喉の奥を何かが通り抜ける感覚。胃の底まで冷たいものが落ちていく。激しい吐き気が込み上げた。


「おぇっ……!」


その場で何度も嗚咽する。しかし何も出ない。


近衛兵たちはそんな俺を気にも留めず、老人の様子を確認していた。


やがて一人が呟く。


「……死亡を確認した」


老人は死んだ。だが、その直後。


ドクン――心臓が大きく脈打った。


全身の血管を何かが駆け巡る。熱いような、冷たいような、不気味な感覚。


(なんだ……これ……)


頭の奥にノイズが走る。


知らない景色。


知らない人々。


知らない記憶。


それらが洪水のように流れ込んできた。


(まさか……じいさんの記憶!?)


次々と映像が脳裏を駆け抜ける。


耐えきれない。


意識が遠のいていく。


そして俺は、そのまま闇の中へ沈んだ。



目を開けると朝だった。薄い朝日が牢屋の中へ差し込んでいる。


「しまった……寝ちまったのか……」


身体を起こそうとした瞬間、頭の奥に微かな違和感が残っていることに気付く。


昨夜の出来事は夢ではない。


そう確信した。


ガシャン。


鉄格子の前に近衛兵が立った。無表情のまま俺を見下ろしている。


「連行の時間だ」


腰の剣を鳴らしながら言う。


「来い」


その一言に、俺の背筋は再び冷たくなった。

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― 新着の感想 ―
老人との邂逅がこのように展開していくとは意外でした。何をしたのかされたのか。それとも発生した出来事なのか。とても想像力をかき立てられる展開で楽しかったです。主人公がどうなるのか、気になる幕引きで、無理…
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