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カノウコウチク~吉野翔太の怪事件ファイル~  作者: 広田香保里
怪3 自動人形の願い
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お人形さんからのお願い

 倉田さんと共に、料理教室に通っている5人が入って来た。

翔太は両小指を絡ませ考え込み、目を閉じていた。

目を閉じた先に、何を見ているかは分からない。

「何のつもりですか?」

「何か始まっちゃう系?」

「料理長まで……殺された」

「とりあえず、説明をお願いします」

 不満をそれぞれ口にしていた。

皆の視線が倉田さんに集まっていたが、口を開くのは翔太。

当の本人は、微動だにしていない。

暫くの沈黙。

「蓮見紫音、篠崎夕冶、堀川篤美を殺害した犯人はここにお呼びした5人の中にいる」

 5人の容疑者が目を見開いた。

お互いに疑心暗鬼が垣間見えた。

翔太は、ずっと閉じていた目を見開き、今を見た。

「この中に……犯人が……」

「どうして殺されたの」

 平野さんの言葉に、少なくない感情が滲み出ているのを感じた。

その感情を、あたしは知っている。

そうだ。

殺人を犯せば、そこからまた新たな憎しみが生まれてしまう。

殺人に客観的意味は、無いのだ。


「最初は犯人も、殺すつもりが無かった」


 え?



 何のための人形だったのか。

自動人形は、オートマタ。

こう言う意味だと思わせたかったのかもしれない。

あくまで、客観的に見ての話だが。

だが、紐解かれるべき『願い』があった。

その『願い』を、当人達だけに気付かせる為。

一連の事件を通して人形の持つ意味に気付いて欲しかった。

被害者に。

蓮見さんの自宅には、彼女が死ぬ前に送られていた。

そこで、彼女が気付いてさえいれば、何らかの理由を作って毒を回収したのかもしれなかった。

「あの人形にそんな意味が……」

 だが結局、3人は毒殺された。

自動人形の願いに気付く事無く。

「その意味って何」

 1枚の写真。

人形?

誰かが言った。

違う。

3歳の男の子。

そっくりだった。

送られた人形に。

子を思う、親の願い。

被害者が気付けば犯人の願いが通じ、気付かなければ自動殺人。

それこそが、自動人形の願い。

「2年前に、この写真の男の子が、食中毒によって亡くなっています」

「……マジ?」

 そう。

亡くなった事件自体は不慮の事故。

それがどうしてこのような事件に発展してしまったのかは、犯人しか知らなかった。

「何かトラブルがあったと考えるべきなのでしょう。男の子の名前は」


 扇原陸。


 犯人は扇原翼、あんた。



 自動殺人。

子供を模した人形。

その子を思う親の願い。

動機までは私が調べた。

ここからよ翔太君?

私を震えさせて?

昇天させてくれても構わないから。

「確かに陸は僕の息子だよ。でも今回の事件と何の関係があるんだい? それに、刑事さんにも言ったけど、僕は亡くなった3人の部屋に入った事が無いんだ。勿論部屋に入れた事も。そんな状況でどうやって僕は彼女らを殺せるんだい?」

 翔太君は瓶の容器を扇原さんに見せる。

まだ動じていないみたいだけれど。

「勿論、これで。扇原さんがやった方法と同じ方法で作った瓶。良く見て」

 甜麺醤の容器を全員が見た。

一見すると市販の未開封品と何ら違いは無かったけれど、プラスチックの包装に、切り取り用の小さな穴が開いていた。

……いいえ違った。

ガラスの瓶に小さな穴が開けられ、塞がれたような跡?

それがミシン目の切り取り線と同じ大きさ……。

凄いわねこれ……。

「これ……」

「まさか、ここから毒を入れたんですか?」

「切り取り線の穴の中から大きめの穴が開いているものを選び、そこからガラスに穴を開けて毒を仕込み、ガラスの栓で蓋をした」

 ……本当に騙されるかしら?

これ。

少し無理があるのではないかと思った。

「それ、無理があるんじゃない? だって、毒を新品の瓶に入れたって、それをどうするんだい? 家のポストに入れても、不審に思うよね」

 それもそうだけれど……。

気付かれるのではと思った。

……自信に満ち溢れた表情ではなかったけれど、翔太君は事件解決に意味を見出していないのだから良いわ。

見守りましょう。

「スーパーに置いた」

「はは。そんな誰が買うかも分からない場所に瓶を置いた? 無差別殺人って事?」

「んな方法、マジやれるん?」

「翔太……」

 由佳ちゃんまで心配していた。

疑問に同意だった。

倉田さんは翔太君をただ信じているのかしら?

……それとも、裏付ける何かを見つけたから?

「これが甜麺醤って言うのが鍵」

 ……ただ、聞いてあげる。

翔太君。

あなたの可能構築を。

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