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6話 思わぬ再会

『会いにこないで』


快斗からの、はじめての拒絶だった。


頭をガツンと殴られたような衝撃だった。


マンション開発の話を聞いた時とは少し違う。大打撃だ。


これはきっと拒絶ではなく、少しの余裕もないほど忙しいのだろう。


万に一つも快斗に拒絶されることはないと思っていた。


自意識過剰な自分がいることに驚いたが、それでも快斗に会いたいという想いは募る。


でも……しつこく言い寄って嫌われたくない。


僕が今できることは、邪魔にならないようにおとなしくしていることなんだ。


まずは、目の前のことをやる!


しっかり働いて、それで快斗が会いに来たら、大好きなコーヒーを淹れてあげよう。


それから、快斗からの連絡もなくなり、1週間が過ぎた。


その間にオーナーから、マンション開発の計画はなくなったから安心してほしいと知らせがあった。


土地も売らないそうだ。


快斗にマンションの件を伝えたいけど、『会いにこないで』をまだ引きずっているので、連絡できずにいた。


そういえば、なんとかするって言っていたような。


まさか本当に動いてくれた、なんてことないよね。


ソワソワした気持ちを落ち着かせるため、無心になって家の掃除をしていた。


ガタン、ガタンッ。


隣から大きな音が聞こえた。


快斗、いるんだ。


普段は生活音が一切しないので、聞いたことのない大きな音に嫌な予感がする。


ただ事ではないような……


家具を倒したのか、もしかして快斗自身が倒れたのか。


音はその一度だけだった。


気にしてしまったら、何も手につかない。


もし倒れていたら大変だ。


少し確認するくらい、いいよね。


何もないなら、すぐに戻ってくればいいし。


大成は、隣室のインターホンを押した。


返事がない。


さすがに忙しくても、誰が来たかくらい見ると思うんだけどな。


やっぱり倒れてるのかも。


そういえば、お客さんが、ここの近所で空き巣被害に遭った人がいるって話をしていた。


もしかして泥棒!?


警察に電話したほうがいいのかな。


でも、違うかもしれない。


どうしよう。


中の様子を少しでも確認できれば……。


あ、あるじゃん、鍵!


快斗の家で休んだあの日、手紙と一緒に置いてあった。


戸締まりをした後、ポストに入れておこうか悩んだけど、すぐ会えるし、直接渡したほうが安全だと思って持ち歩いていた。


家に戻り、バッグに入っていた鍵を取り、快斗の家の扉を開ける。


もし泥棒だったら、バレないように静かに開けなくちゃ。


玄関には男物の靴が一足だけ、乱雑に置かれている。


靴箱の横にはゴルフセットがあった。


不意打ちで一発くらいは攻撃できる。


先端が重そうなクラブを手にして、ゆっくり中に入っていく。


今のところ、物を漁っているような音は聞こえない。


ひと部屋ずつ確認していこう。


それで犯人を見つけたら、ダッシュでうちに逃げて警察に通報する!


足音を立てずに、そろりと歩く。


手前から順番に確認したが、誰もいなかった。


ここが最後。


大成が休ませてもらっていた部屋。


扉が開いたままだ!


廊下から慎重に覗き込む。


……誰もいないみたい。


良かった。


じゃあ、あれは何の音だったのか。


ベッドの周りだけ荒れている気がする。シーツが半分床に落ちている。


快斗の自室なのかな。


それにしては、私物が一切ないけど。


足元を見ると、スマホが落ちていた。


持っていくのを忘れた?


相当急いでいたのかな。


この散らかりようと、さっきの大きな音。


やっぱり、ここで何かあったのかも。


なんとなく、シーツを持ち上げてみた。


「え」


そこには……鳥がいた。


真っ白な鳥が、床に横たわっていた。


「なんで、ここに鳥が」


それよりも、この子、具合が悪そう。


「鳥さん! 大丈夫?」


「ピィ」


良かった、反応した。


「よし、病院に連れていってあげるからね。ああ! クソ、今日はやってないんだった!」


青い鳥さんのときも休診だった。


「ピピー」


あれ、この鳴き方って……。


白い鳥をよく見てみると、尾羽の先だけ、きれいな青が残っている。


「え、君なの? 青い鳥さん」


「ピッ」


「どうしてここに……」


あり得ないはずの考えが、ふと脳裏をよぎった。


あの色、彼の髪と同じだ。


そして、この状況。


「もしかして、か、快斗なの?」


鳥は泣きそうな目で、


「……ピッ」


と鳴いた。


「ええ! 本当に!?」


「ピッ」


これは肯定だ。


え、どういうこと?


そんなことってあるの?


パンッと自分の両頬を叩く。


「痛い。夢じゃない」


「ピ」


快斗を見ると、目を瞑って動かない。


「うそ! しっかりして!」


落ち着いて、現実を見ろ、自分!


体が白くなるなんて、おかしい。


早く病院に連れていかなきゃ。


でも、普通の動物病院に行っていいのか。


人間だってバレたら、大変なことになるんじゃ……。


「快斗、どこの病院に行けばいいの? 君のかかりつけの病院はある?」


快斗は驚いた顔で僕を見上げた。


「……ピピピ」


「え? なんて?」


「ピピピ」


「鳥語、難しい!」


……もしかしてスマホ?


「ああ、パスコードがかかってる」


スマホのロック画面を快斗の前に持ってくる。


「4桁の番号をくちばしで指し示して。僕が代わりに打つから」


「ピッ」


「よし、解除された!ごめん、アドレス帳見るよ」


病院か担当医の名前とかで登録してるかな。


「鷲崎先生……もしかして、これ?」


「ピッ」


「当たり! よし、良い子。じゃあ、かけるね」


「あ、もしもし。鳥海快斗の主治医さんですか? 私は彼の友人の小鳩と申します。……はい。えっと、実は今……」


どうやら、快斗が僕のことを話していたらしい。


先生は僕の支離滅裂な説明を理解し、すぐに向かうと言ってくれた。


「快斗、先生がすぐ来てくれるって。もう少し頑張ろうね」


「ピィ」


安心したのか、穏やかな顔をしている。


快斗を撫でていたら、僕も少し落ち着いてきた。


「また会えて嬉しいよ、青い鳥さん」

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