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### 第99話:王者の焦燥
### 第99話:王者の焦燥
「ゲーム、真壁・御堂ペア、2-1!」
すかさず取り返された第3ゲーム。だが、かつての圧倒的な絶望感はそこにはなかった。
真壁の鋭いスマッシュがコートに突き刺さるが、その一打には先ほどまでの余裕ではなく、あきらかな「焦り」の色が混じっていた。自分たちが圧倒しているはずの相手が、予想外の粘りと進化を見せつけていることへの戸惑いが、王者の足元をわずかに狂わせている。
「ちっ、しつこい連中だ……!」
真壁が舌打ちを漏らし、軽量カーボンフレームを荒く回しながらベースラインへと戻る。
僕たちは息を整えながら、マットブラックの車いすの感触を確かめた。野田さんの調整による完璧なアライメントと、一ノ瀬コーチに仕込まれた体幹の軸があれば、どんな強烈なショットが来ようとも軸がブレることはない。
「おい、ビビってんのはあっちのほうだぜ」
翔太が汗を拭いながら、不敵な笑みを浮かべて僕を見た。
「ああ。ここからだ、翔太」
スコアは1-2。しかし、試合の主導権はもう、あの王者たちだけのものではない。
全国の頂点へ向けた歯車が、激しい摩擦音を立てながら、確実に次のステージへと噛み合っていく。




