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車輪の軌跡 ―時速0キロからの挑戦―  作者: じょんどぅ


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### 第95話:夜明けのイメトレ

### 第95話:夜明けのイメトレ


静まり返った宿舎の部屋。外ではまだ夜が明けきらず、青白い闇がナショナルトレーニングセンターの巨大なドームの輪郭をうっすらと浮かび上がらせていた。

隣のベッドからは翔太の規則正しい寝息が聞こえているが、僕はすでに目を覚まし、車いすの脇の床に腰を下ろしてじっと自らの両手を見つめていた。


(昨日のあの瞬間、真壁の奴はどうやってあの体勢からクロスへ正確に打ち抜いたんだ……?)


脳裏に焼きついているのは、あの完敗の光景だ。

スコアは0-6。しかし、ただ打ちのめされたわけではない。あの圧倒的なスピードと精密機械のようなコントロールの裏側には、無駄な力を一切排除した「重心の移動」と「車輪の舵取りのタイミング」があったはずだ。


僕は目を閉じ、頭の中で何度も昨日のラリーを再生する。

自分がコートのどこに位置し、どの角度で車体を傾け、どのタイミングで骨盤の軸を固定してラケットを振ったのか。理想の軌道と、現実の自分の動きの間にあったわずかなズレを、脳内でミリ単位で修正していく。


すっ、と息を吸い込み、腕の筋肉を緊張させる。実際に動かさずとも、神経の繋がりだけでもイメージを完璧に体に叩き込む。

野田さんがミリ単位で調整してくれたマットブラックのフレームの感触、一ノ瀬コーチに教え込まれた体幹の軸、そして翔太とここまで積み上げてきた泥臭い特訓の日々。すべてのピースが、頭の中でカチリと音を立てて噛み合っていくような感覚があった。


「……準備はできた」


わずかに明るみ始めた窓の外の空を見上げながら、僕は小さく呟いた。

あの高い壁を越えるためのヒントは、もう掴んだ。あとは、昇ってくる太陽の下、あの青いハードコートの上で証明するだけだ。

物語は、さらなる深化と激闘の朝へと突入していく。

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