### 第94話:夜半の再確認
### 第94話:夜半の再確認
宿舎の部屋に戻っても、頭の中は昼間のコートの光景で埋め尽くされていた。
天井の白いクロスを見つめながら、僕はベッドの上でじっと天井を仰ぐ。隣のベッドでは、翔太がすでに疲労困憊で深い寝息を立てていたが、僕の神経はまだ昼間の激しいラリーの余韻でぴりぴりと張り詰めていた。
(真壁と御堂……あの二人との決定的な違いはなんだ?)
ただ単に筋力が足りないわけじゃない。ショットのフォームだって、一ノ瀬コーチにしごかれて十分な形になっているはずだ。
それでも、あの日中の試合で0-6という残酷なスコアを突きつけられたのは、車いすの「操作の効率」と「予測の反射速度」に決定的な隔たりがあったからだ。
起き上がり、部屋の隅に置かれたマットブラックの車いすにそっと手を触れる。
野田さんがミリ単位でアライメントを調整してくれたこのフレームは、最高の相棒だ。なのに、それを乗りこなす僕自身の身体の軸――骨盤の立て方や、急旋回時の重心移動のタイミングが、あいつらの洗練された動きに比べてまだわずかに遅れている。
「……まだ、やれることがある」
僕は誰に聞かせるわけでもなく呟くと、暗がりの中でそっと姿勢を正した。
明日の朝、コーチがどんな地獄のメニューを用意していようとも、恐れはない。むしろ、あの壁を打ち砕くためのヒントが、少しずつ形になり始めている高揚感が胸を熱くしていた。
全国の頂点へ至る道はまだ遠い。だが、その背中はもう、はっきりと視界に入っている。
静寂の夜の向こう、来るべき朝の到来を待ち焦がれながら、僕は再び深く目を閉じた。




