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車輪の軌跡 ―時速0キロからの挑戦―  作者: じょんどぅ


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### 第87話:出発の朝

### 第87話:出発の朝


合同合宿の初日。

まだ空が白み始めたばかりの早朝、僕と翔太は一ノ瀬コーチの車に乗り込み、県外へと続く高速道路を走っていた。目的地は、全国から選抜されたジュニア選手たちが集う国内有数のナショナルトレーニングセンターだ。


「おい、二人とも寝不足じゃないだろうな。今日からの相手は、そこらの地方大会の連中とは格が違うぞ」


運転席のバックミラー越しに、コーチの鋭い視線が飛ぶ。

「寝不足なんかじゃないですよ。むしろ、早くあの怪物どもとやらをこの目で確かめたくて、昨日はワクワクして眠れなかったくらいです」


翔太が強気な笑みを浮かべながら答える。僕もそれに深く頷いた。

車のトランクには、野田さんに最終点検してもらったマットブラックの車いすが、それぞれの誇りを乗せて眠っている。あの最初の大会で味わった絶望的な敗北、そして隣町のスポーツセンターでの勝利。すべての経験を経て、僕たちはついに「全国」という本舞台の扉を開けようとしていた。


やがて、窓の外の景色が大きく変わり、広大な敷地と近未来的な巨大ドームを備えたトレーニングセンターの全景が姿を現す。

敷地内へと車が滑り込み、エンジンが静かに切られた。


「降りるぞ。お前たちの現在地がどこにあるのか、その身をもって思い知るがいい」


コーチの低い声に促され、僕たちは重い扉を開けて外へと飛び出した。

ひんやりとした朝の空気の中、車いすをトランクから下ろし、それぞれのシートに素早く乗り移る。タイヤがコンクリートのサーフェスを捉える乾いた音が、静まり返った朝の構内に小さく響いた。


自動扉の向こう、全国から集結したトップアスリートたちが待ち受ける未知のコートへ向けて、僕たちは車輪を力強く押し出した。

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