### 第81話:確信のラリー
### 第81話:確信のラリー
「ゲーム、瀬戸・翔太ペア!」
そのコールが響いた瞬間、試合の流れは完全に僕たちの方へと傾いていた。
最初のゲームで見せつけられた圧倒的なスピードや、最新のカーボンフレームが放つ威圧感は、もはや恐怖の対象ではない。僕たちの車いすは、野田さんが完璧にアライメントを調整してくれたマットブラックの相棒だ。相手の強烈なドライブに対しても、車体が微塵もブレることなく、最短距離でポジションを確保し続けている。
「おい、どうしたんだよ! さっきまでの威勢はどこに行ったんだ!」
翔太がコートのネット際で鮮やかなボレーを決め、相手ペアに向かって挑発的な笑みを向けた。
かつての僕たちなら、そんな余裕の態度ですら気後れしていたはずだった。しかし、一ノ瀬コーチにしごき抜かれた体幹の軸と、日々の特訓で叩き込んだ確かな技術が、僕たちの背中を力強く支えている。
「ふざけるな……っ!」
相手の後衛が顔を真っ赤にし、渾身の力を込めたストロークを放ってきた。
ボールは凄まじい回転と速度を伴い、僕たちのコートのバック側深くへと突き進んでくる。
(来る――!)
私は焦る心を完璧にコントロールし、骨盤を立てて上半身の軸を固定した。
野田さんに整えてもらった車体が滑らかに減速し、理想的な打点へと僕を運ぶ。身体のバネを極限まで絞り込み、ラケットの芯でその重い打球を完璧に捉えた。
パァンッ!!
コートを切り裂くような重い打球音が響き渡り、ボールは相手の意表を突くクロスへと鋭く突き刺さる。
相手ペアは懸命に車いすを滑らせたが、そのラケットがボールに届くことはなかった。
「30-15!」
サイドラインの外側で、一ノ瀬コーチが腕を組んだまま、わずかに口元を緩めたのが視界の隅に映った。
あの最初の大会で味わった、何もできずにコートから引きずり出された絶望の記憶。あのときの悔し涙が、いまや僕たちを勝利へと導く最強のエネルギーに変わっている。
「行くぞ、翔太! このまま一気に畳み掛ける!」
「ああ、完璧に叩き潰してやるぜ!」
青いハードコートの真ん中で、僕たちの車輪が新たな未来へ向けて力強く回転を始めた。




