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車輪の軌跡 ―時速0キロからの挑戦―  作者: じょんどぅ


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### 第65話:職人の調整

### 第65話:職人の調整


「ほら、こっちへ来い。お前の車いすを見てやる」


野田さんはそう言うと、手慣れた手つきで僕のマットブラックの車いすを専用の作業台へと誘導した。

戸惑う僕をよそに、野田さんはレンチを手に取り、車体の各部を小気味よい音を立てながら点検していく。


「いくらお前が正しい体幹の使いや基礎を意識してもよ、車体自体のバランスやアライメント(タイヤの角度や歪み)が狂ってたら、余計な負荷がどこかに逃げるんだ。お前のその右肩の痛みも、もしかしたら車体がわずかに右へ流れる癖が原因だったかもしれねぇぞ」


「え……車体のせいで、肩に負担が?」


「あたりめえだ。道具と乗り手は二人三脚なのさ」


野田さんは手際よく六角レンチを回し、軸の微調整を行っていく。その職人としての真剣な眼差しからは、ただの修理屋ではない、アスリートを陰から支えるプロのプライドが滲み出ていた。

一ノ瀬コーチが人間の身体の基礎を叩き込んでくれるなら、野田さんはその肉体を乗せる「相棒」を極限まで最適化してくれる。

自分一人で抱え込んで焦っていたけれど、僕の周りにはこんなにも頼れる大人たちがいる。


「よし、これでどうだ。一度、乗ってみろ」


野田さんが満足げに微笑みながら作業台を下げた。

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