### 第64話:再びの工場へ
### 第64話:再びの工場へ
放課後の部活を早めに切り上げた僕たちは、重い足取りを引きずるように野田の町工場へと向かった。
シャッターをくぐると、奥からオイルの匂いとともに野田さんの威勢の良い声が飛んできた。
「お、今日はやけに静かだな。どうした、またコートの補修でもやり直しか?」
しかし、僕たちの沈んだ表情を見て、野田さんはすぐに工具を置いた。
「……なんだ、ケガか?」
僕が気まずそうに右肩を押さえると、野田さんはやれやれと頭を掻き、使い古されたパイプ椅子を僕たちの前に引き寄せた。
「座れ。……車いすテニスなんてのはよ、上半身が文字通りエンジンのすべてだ。無理をしてエンジンを焼き付かせたら、それこそ二度と走れなくなるぞ」
「でも、最初の大会であんなにボコボコにされて……。早く基礎を固めないと、次の大会に間に合わないんです」
焦燥感を滲ませる僕に、野田さんは静かに首を横に振った。
「焦る気持ちは分からるがな、道具と同じだ。酷使したパーツは一度メンテナンスし、バランスを整えてやらなきゃ、いざってときにポッキリ折れる。体も一緒だろ」
その言葉は、一ノ瀬コーチの指摘とはまた違う角度から、僕の凝り固まった頭を冷やしてくれた。
強くなりたいという一心で、自分の体を壊しては元も子もない。部活を立ち上げ、環境を整え、基礎技術を叩き込んでいるこの道のりは、一朝一夕で終わるものではないのだ。




