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車輪の軌跡 ―時速0キロからの挑戦―  作者: じょんどぅ


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### 第57話:体幹の重心

### 第57話:体幹の重心


「まずは、その車いすの上での座り方から直すぞ」


一ノ瀬コーチはコートの中央まで歩み寄ると、僕の車いすの横に立ち、ラケットのグリップで軽く僕の背中を叩いた。

「ただ背筋を伸ばせばいいわけじゃない。車いすテニスにおいて、上半身は『第二の下半身』だ。ボールを打つ瞬間、どこに重心を乗せている?」


「……えっと、両手をハンドリムにかけて、腕の力で――」


「そこだ。腕の力だけで打とうとするから、ショットが安定せず、すぐに肩を痛める」


コーチに指摘され、僕はハッとした。確かに、ラリーを続けるうちに右肩の鈍い痛みが強くなっていたのは、腕力だけでボールを押し込もうとしていたからだ。

コーチは自分の身体を軽くひねりながら、フォームの要点を淡々と説明する。


「骨盤を立て、腹筋と背筋のバランスで上半身の軸を作る。そして、車輪を漕ぐ力とスイングの力を、ひとつのエネルギーとしてボールに伝えるんだ」


言葉で聞くのは簡単だが、実際にやろうとすると、これが途方もなく難しい。

これまでの我流のテニスでは、ただがむしゃらに腕を振って走るだけだった。それを一度すべて解体し、一から正しい身体の使い込み方を覚え直す。最初の大会で味わった絶望的な力の差を埋めるには、この地道な基礎固めを避けて通ることはできない。


「もう一度、ゆっくり構えろ。軸がブレたら即座にやり直しだ」


「はいっ!」


僕は深く息を吸い込み、指摘された骨盤の位置と背中の張りを意識しながら、再びハンドリムに手を添えた。

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