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### 第56話:基礎の解体
### 第56話:基礎の解体
「よし、そこまでだ」
コートの隅から飛んできた鋭い声に、僕と翔太は思わず動きを止めた。
改修を終えた特設コートにやってきた一ノ瀬コーチは、腕を組んだまま、僕たちが打っていたラリーの軌道をじっと見据えていた。
「きれいに舗装されたからって、自己流の打ち方では意味がない。瀬戸、お前のそのストローク、最初の大会のときから何一つ根本は変わっていないぞ」
「……っ」
図星を突かれ、僕は言葉に詰まる。
改修したばかりの滑らかな路面の上で、確かに車体はスムーズに動くようになった。しかし、車いすを操る上半身の軸や、ボールを捉えるラケットの面角度は、相変わらず我流の癖が抜けきっていなかったのだ。最初の大会で味わった挫折は、まさにその「基本の欠如」から生じたものだった。
「車いすテニスは、下半身が使えない分、体幹と上半身の連動がすべてだ。今日から、そのバラバラになっているフォームを一度完全に解体する」
コーチの冷徹だが的確な言葉に、僕は強く息を呑んだ。
せっかく整えた環境だ。ここで中途半端な技術のまま満足するわけにはいかない。
僕はマットブラックのハンドリムを握り直し、コーチの目の前へと車体を移動させた。




