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車輪の軌跡 ―時速0キロからの挑戦―  作者: じょんどぅ


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### 第52話:環境の壁

### 第52話:環境の壁


「よし、まずは基本のストロークから……と言いたいところだけど」


翔太がラケットを抱えたまま、新設されたコートの地面をじっと見つめて眉をひそめた。

僕もそれに続き、マットブラックの車いすをゆっくりと前進させて足元を確認する。アスファルトの表面には細かなひび割れがあり、あちこちに小さな小石や枯れ葉が散らばっていた。


「やっぱり、この路面じゃタイヤを取られるな」


車いすテニスにおいて、コートのサーフェス(地面の状態)はプレーの質を大きく左右する。正規のハードコートやオムニコートとは違い、ただのアスファルトではタイヤの滑り具合が一定せず、強く漕いだときにスリップしたり、バウンドの仕方が不規則になったりしてしまう。

基礎技術を叩き込むためには、まずこの「練習環境」の整備が不可欠だった。


「どうする? ほうきで掃除するだけじゃ、ひび割れまでは直せないし……」

「うーん、野田さんに相談してみるか? 車体のメンテナンスだけじゃなくて、こういう環境づくりのアドバイスももらえるかもしれない」


翔太の提案に、僕はうなずきながらスマホを取り出す。

部活として認められたとはいえ、恵まれた環境が最初から用意されているわけではない。自分たちで動き、整えていくしかないのだ。

最初の大会での苦い敗北――あのとき痛感した技術の差を埋めるためにも、まずはこの足元からしっかりと固めなければならない。

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