48/106
### 第48話:最後の1球
### 第48話:最後の1球
すべての体力を使い果たし、呼吸をするのさえ胸が痛む。それでも、僕の視線は一ノ瀬の構えるラケット一点だけを捉えていた。
「いくぞ、瀬戸!」
一ノ瀬の腕が振り抜かれ、この日一番の重く鋭いサーブが放たれた。
バウンドしたボールが弾み、猛烈なスピードで僕の懐へと飛び込んでくる。もはや身体の痛みを感じる暇すらない。僕は新しいフレームの性能と、これまでのすべての記憶を信じ、最後の力を振り絞ってハンドリムを叩いた。
ガツンッ!
車体が激しく回転し、ボールの落下地点へと完璧に滑り込む。
無駄な迷いは一切ない。上半身の軸をブレさせず、ラケットのスイートスポットでボールを真っ向から捉えた。
カキィンッ!!!
澄んだ打球音がコートの空気を切り裂き、白い弾道が一直線に一ノ瀬のコートの隅へと突き進む。
それは、事故の絶望を乗り越えた僕が放つ、魂のウィニングショットだった。




