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### 第46話:ラリーの果てに
### 第46話:ラリーの果てに
一ノ瀬の言葉に背中を押されるように、僕は荒い息を整えながら再び車体を正した。
右肩に走る痛みはまだ消えていないが、不思議と体が軽い。マットブラックのフレームは、限界を迎えたはずの僕の意思をしっかりと受け止め、次の動きへと備えて静かに構えている。
「いくぞ、瀬戸!」
一ノ瀬のサーブが放たれる。
先ほどまでのラリーですでに互いの手の内は出し尽くしている。ここからは、気力と執念、そして車いすという新たな身体をどれだけ自分の手足のように使いこなせるかの勝負だった。
飛んでくるボールに対し、僕は一切の迷いなく車体を旋回させる。
無駄な力みが抜け、車輪を叩く両手のタイミングが完璧に同調した。かつては「動かない足の代わり」でしかなかった車いすが、今や僕の意志をダイレクトに空間へと伝える翼のように感じられる。
ガツン!
渾身のフォアハンドが、綺麗な放物線を描いて一ノ瀬のコートへと突き進む。
一ノ瀬は素早く反応し、強烈なカウンターで返そうとラケットを合わせたが、その打球はわずかにネットを越えきれず、白帯に弾かれて地面へと落ちた。
――ぽん、とボールが弾む音だけが、静まり返ったコートに響いた。




