### 第41話:追いつけない背中
### 第41話:追いつけない背中
一ノ瀬の放つ打球は、コースの厳しさだけでなく、予測不能な変化を伴って僕のコートへと突き刺さる。
「くっ……!」
新しいシートポジションに体を預け、必死にハンドリムを叩いてボールの落下地点へと滑り込む。だが、車体の反応速度が上がった分、わずかなタイミングのズレが命取りになっていた。ほんの一瞬ブレーキが遅れ、ラケットのスイートスポットを外した打球は、無残にもネットの手前へと力なく落ちていく。
「いまのはフォームが流れている。自分の足がない言い訳をするな、上半身の軸でボールを迎えにいけ!」
一ノ瀬の冷徹な指摘が、コートの空気に冷たい楔を打ち込む。
事故の直後、自分の足が二度と動かないという現実を突きつけられ、天井ばかりを見つめていた日々を思い出す。あの頃の絶望に比べれば、今の悔しさなんて比べ物にならないはずだ。なのに、目の前の壁のあまりの高さに、胸の奥で焦りが黒い煙のように広がっていく。
「瀬戸、諦めるな……!」
フェンスの外から、翔太の必死の声援が聞こえた。
そうだ。僕は一人でこのコートに立っているわけじゃない。翔太が支えてくれ、一ノ瀬が道を示し、野田が命を吹き込んでくれたこの相棒がいる。
僕は荒い息を整え、再びマットブラックのフレームに体重を預けた。
次のボールが来る。今度は、焦りを捨てて――完全に車体と一体になるイメージを持て。




