### 第40話:試練の始まり
### 第40話:試練の始まり
マットブラックの新しい相棒と共に立ったコートの空気を、一ノ瀬の一打が鋭く切り裂いた。
カキィンッ!
放たれたボールは、僕の予想をはるかに超えるスピードと鋭い軌道を描き、サイドラインの隅へと突き刺さる。
「なにっ……!」
反射的に車体を動かそうとしたが、生まれ変わった車体のレスポンスがあまりにも良すぎて、逆に最初の踏み出しでわずかにバランスを崩してしまった。シートやバックレストの調整によって上半身が固定されている分、自分の重心移動のズレがそのまま車体の挙動に影響するのだ。
「甘いな、瀬戸!」
一ノ瀬の声が容赦なく飛ぶ。
「機材を新しくしたからといって、お前の身体がそれに追いついているわけじゃない。今のままでは、宝の持ち腐れだ」
悔しさが胸の奥で沸き上がる。
だが、その言葉に反論する余裕すらない。野田に直してもらい、完璧にチューニングされたはずの車いすは、今の僕にとってはじゃじゃ馬のように手強い存在だった。
「もう一本いくぞ!」
一ノ瀬が次なるボールをトスする。
事故直後の絶望、車いすでの生活への適応、そして一ノ瀬との出会いと競技用車いすへの初搭乗――これまで積み上げてきたすべての経験を総動員しなければ、この男の放つ球には到底追いつけない。
僕は歯を食いしばり、新しい相棒のハンドリムを強く叩いた。




