### 第35話:プロの判断
### 第35話:プロの判断
メカニックの野田は、亀裂の入ったフレームの箇所を指先でなぞりながら、厳しいプロの目を向けた。
「こりゃあ、確かに限界ギリギリだな。ガムテープやパテでごまかせるレベルじゃない。完全に溶接をやり直すか、部分的にパーツを交換する必要がある」
その言葉を聞いて、僕は思わず息を呑んだ。
「……そんなに、ひどいんですか」
「当たり前だ」
腕組みをしたままの一ノ瀬が、冷徹なトーンで言い放つ。
「お前が毎日やってきた無茶な段差越えや、体重移動の偏りがすべてこのフレームに蓄積されていたんだ。自分の体の重心がどこにかかっているか分からないうちは、機材ばかりが犠牲になる」
図星だった。自分の足が動かない焦りから、力任せに車体を操っていた自分の未熟さが、そのままこの亀裂に表れていたのだ。
申し訳なさで頭が上がらない僕を見て、野田は苦笑いしながら作業道具を置いた。
「まあ、絶望することはないさ。若い奴ががむしゃらにやって壊したフレームなら、俺がしっかり直してやる。ただ、直すだけじゃなくて、お前の身体のサイズや癖に合わせて微調整を加えてやるよ」
「本当ですか……?」
「ああ。その代わり、週末の練習会では、今度こそこの車体を完全に使いこなしてもらうがな」
一ノ瀬の言葉に、胸の奥で再び熱いものが灯る。
プロの技術によって生まれ変わる相棒と共に、僕は第1巻のクライマックスへ向けて、さらなる高みへと駆け上がろうとしていた。




